番外編・南の果ての島からの電話


南の果ての島・西浜ビーチ

夜は星が瞬く

なっちゃん

三味線を弾いているのがM.Saitohさん右隣が雨男さん

踊ってるのが宿のおかみさん

大晦日のその日、私は、自宅で寝ていた。このままでは、文字通り寝正月を迎えそうなぐらい、悪化した風邪に、もはや、抵抗するすべもなく、あきらめて、寝ていた。大方の原因は、わかっている。27日に店じまいする、あるお世話になった店で、体調が悪いにもかかわらず、ファイナルライヴをやったからだ。

今日で最後と、名残惜しさに、いつまでも歌い続け、このまま歌い続けていれば、この店も永遠に閉店することはないのに、と思いつつ、最後の最後まで唄っていた。しかし、終わりの時はやって来た。とともに、それまで、遠慮していたかのように、ウィルスが一斉に活動を始めたのだ。もしその姿が見えていたら、と思うと恐ろしい。

というわけで、最後の仕事を終えた翌日、大晦日のその日、私は自宅で寝ていた。10:30頃、携帯電話が鳴り始める。私の携帯の着メロは八重山民謡であるから、文字通り鳴り始めたのである。しかし、手が思うように動かない。どこに置いたっけ。手探りで携帯を探す。我慢強い発信者である。

「takarinさん、こんにちは。M.Saitohです。波照間からです。」最後に会った時と同じ優しく楽しそうな声が聞こえてくる。M.Saitohさんは、波照間で知り合った島唄仲間である。「雨男さんを迎えに行ってきたところです。」

そう言えば、同じ波照間仲間の雨男さんが結婚するらしいって、Nightflyさんが言ってたっけ。雨男さんは波照間歴30回以上のヴェテランである。宿のおかみさんが嫁さんの心配をしてくれるほどの常連さんである。事情が許せば、波照間でともに祝いたかったが、それを聞いたのが師走も半ば、すでにスケジュールの変更はかなわなかった。

「Nightflyです。なっちゃんも来てますよ。今からみんなで御祝いの宴会です。」一瞬目を閉じると、前回、みんなで騒いだ記憶が、瞼の裏に蘇ってきた。南の果ての果ての島。陽が落ちれば、月明かりと、星の瞬きと、虫の鳴き声と、風の音しかなくなってしまう島。そんな島で出会った仲間をとてもいとおしく想う。

「なっちゃんです。お元気ですか。」故郷に帰って、三味線を習い始めたという、メイルをくれたたっけ。「雨男です。というわけで、結婚しました。」お相手は、名古屋出身の八重山古典民謡保存会の会員らしい。「おめでとう、おめでとう、おめでとう。本当に、おめでとう。」この時すでに、心は、波照間に飛んでいた。

なんて、素敵な、仲間たちなんだろう。我が身の途方もない幸せを感じた。

M.Saitohさんのサイトはこちら。波照間の祭むしゃーまーの写真が素晴らしい
雨男さんのサイトはこちら。波照間のみならず、島々に関する考察が深い

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