第二章「小浜節大会」その3(小浜の笛)・03.03.22.


上4本が「小浜」の笛、下2本は石垣島の野原三味線店で購入した「普通」の笛

大会の後、大一さんの車で送ってもらう。想像通り、辺り一面真っ暗である。これでは、歩いて帰るのは、いや不慣れなものには、車でも無理だ。ガードレールもセンターラインもないので畑に突っ込みそうである。宿へ帰るのかと思ったら、打ち上げがあるとのことで、公民館で車を降りた。

隅っこの方に座っていると、白いビニール袋を持った男性が入ってきた。と思ったら、すぐ隣に座って袋の中身を見せてくれた。それは約30本もの手作りっぽい笛であった。八重山民謡は笛なしでは語れない。ましてやここは、笛の島、小浜島である。「小浜」の竹で「小浜」の人が「小浜」で作った笛をいきなり目の前にして思わず息をのんだ。

作られた方には少々失礼な話しではあるが、吹かせてもらったそれは、とても扱い辛いものだった。多分使う側が、好みやくせに応じて細かい調整をしていくタイプのものなのであろう。私には、そんな技術はないので、見るだけと思っていたのだが、「欲しいか?」と言われて、思わずうなずいてしまった。

「どれでも好きなのを選べ。」と言われたが、わからないので、ちょっと音が出そうなものを、音階を替えて3本ほど選んだ。そしたら彼は、「小浜節大会に出たのか?」とまたきくのでうなずくと、「2本分でいい。」と言ってさらに「これで自分で作れ。」と言って、まだ穴の開いていない竹をもう1本差し出した。受け取って礼を言うと、ほんの少し笑ったような顔をして、そのまま別のテーブルに移ってしまった。だから、彼の名前もわからない。

実は、小浜島に来るにあたって、つちださんやほかの人に、「小浜の笛を手に入れたい」と打診していた。しかし、誰からも、「難しい」あるいは、「運次第」という返事しかもらえていなかったので、すっかりあきらめていたのだ。「小浜節大会」が、「小浜」の笛を私にもたらしてくれたと言ったら、話しが美しすぎるだろうか。

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