沖縄(石垣島編6・ストリートライヴ)02.05.05


苧麻の草木染め・2500円

梅田さんオリジナル「ハブピック」

5月5日、長かった旅も今日で終わる。空は快晴である。

桟橋で、「いるもて荘」のヘルパーの男の子が声を掛けてくれた。ひとりで、島を離れるのは、何となくもの悲しいものだ。センチメンタルにならずにすんだ。さわやかな朝の風を全身に受けながら、石垣へ向かう。天気がよい日は、デッキに座るのが気持ちいい。

沖縄の場合、朝10時だと時間をつぶすのに苦労することが多い。おまけに全荷物を持っている。どうしたものかと思ったが、野原三味線店に行ってみることにした。坂を登り20分ほど歩くため、閉まっていたらどつぼである。しかし、久しぶりに会うおとうさんは笑って迎えてくれた。

笛を選んでいると、家族連れがやってきた。小浜島の「うふだき荘」できいて、三味線を買いに来たそうだ。去年の私と同じケースである。初めて触るというので、横からちゃちゃをいれる。ほとんど営業妨害である。野原のおとうさんは、初めての人には、丁寧に弾き方を教えてくれる。この家族連れは、結局2時間ほどいて、三味線を購入していった。

私もそろそろ腰を上げる。すぐ近くに神社があるときいたので、木陰を見つけて、三味線をつま弾く。自転車で通りがかったおとうさんが「上等だね。」と、声を掛けてくれる。だんだん帰りたくなくなってくる。1時を回ったので、腹ごしらえをすることにする。

今回はまだ行ってなかったので「真仁屋」のおばあに挨拶しておこう。おばあは、いつも通りだった。そばを食べて、アヤパニモールの物産店を覗く。数ヶ月しか経っていないのに結構商品が入れ替わっている。織物のところで苧麻の草木染めを見つけた。時々は、覗いてみなければならない。

そう言えば、「革道売り」の梅田さんは店を開けているんだろうか。時間が早すぎるのか、モールの中は、何となく静かである。梅田さんは、店は開けていたが「ヒマ」していたので、声を掛ける。彼は覚えていてくれて、昨日出来た、とカードを手渡してくれた。自分で染めた革の染料を採った植物の写真付きのカードである。なかなか芸が細かい。

さらに、ハブの皮をくれたので、「ピックの滑り止めに、張ってくれない?」と図々しくも頼んでみた。彼は笑いながら、手際よく張ってくれた。これがなかなか指にしっくり来る。

お返しに、客寄せのストリートライヴをすることにした。アヤパニモールには屋根がある。今まで気付かなかったが、これが結構ライヴむきなのである。風呂の中で唄っているような、エコーがかかる。しかし、どういうわけか、立ち止まってくれるのは、地元の人だけである。拍手してくれたり、声を掛けてくれるのは嬉しいのだが、これでは客寄せにならない。

何人目かに、立ち止まってくれた人は、わざわざ買ってきて、缶ビールをくれた。やはり、地元の人で、渡口さんという、笛の奏者だった。安里勇さんとも近い関係だということで、盛り上がる。彼は、「サラダ油につけておくと良いよ。」と自分の笛を見せてくれた。みな、それぞれ、色んな工夫をしているものだ。

確かに、乾燥しにくいので、扱いやすそうだ。結局話しすぎて、バスに間に合わなくなった。名残は惜しかったが、重い腰を上げると、「今度来た時は、一緒に遊びましょう。」と言って、梅田さんと一緒に手を振ってくれた。

幸先のよいスタートを切ったとは言えないが、今回も多くの人と知り合いになれた。旅人、県外から移住した人、そして現地の人、みんなそれぞれ個性があって、刺激をもらった。大阪でまた会う約束をした人も何人かいる。たぶんもう会うことはないんだろうなという人もいる。

結局、波照間の天文台と、西表温泉以外の観光地には行っていない。人と出会い、そのため予定がどんどん変わり、そして意外な方へひろがっていく。そんな、出会いの旅となったようだ。そして、この旅はまだ終わらない。皆それぞれ動き、流れ、変化しているのだ。次にまた会った時ににどうなっているのか楽しみである。

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