沖縄(西表島編1・初ソロライヴ)02.05.01


みそ野菜そばというジャンルがあるらしい、レタスにキャベツ、千切りの人参、そしてもやしが入るのが定番とか

いるもて荘

星空ライヴの会場

夕食は沖縄料理1品付きで750円

5月1日、今日も快晴。「けだもと荘」のおかあさんが、「そろそろ雨が降ってくれないと困るなぁ。」と言っていたのを思い出す。

「あのピンクの花が咲いたら雨が降るって昔から言うんだけどよぅ、この分じゃお客さん断らなきゃならなくなるかもね。」。島では、水さえも自然が頼りなのだ。船を使って旅をする者からすれば、雨が降らないほうが都合のよい場合が多い。複雑な心境となる。

「ゆらてぃく」で「みそ野菜そば」というメニューを見つけたので、試してみることにする。しかし私には塩辛すぎた。珍しく汁を残して、桟橋に向かう。西表行きの船は、波照間行きのそれよりは、かなり大きなものだった。「ゆらてぃく」のエアコンで冷えたので、船室には入らずデッキに座る。風が心地よい。空と海の境目が分からない。

今回初めて訪れる西表の、最初の宿は「いるもて荘」である。小高い丘の上にあり、玄関の前に芝生の広場が広がっている。荷物をほどき、三味線を持って芝生の木陰に座る。すると、ちょうど船浦の港を見下ろすことになって、とてもいい感じなのである。あまりに気持ちがいいので、昼寝を中止して弾き続ける。今日帰る人が、入れ替わりにやって来て言葉を交わす。暖かい風の中で時が止まる。

「いるもて荘」は、相部屋である。久しぶりに、見知らぬ人と部屋を共にする。初対面では、お互い緊張するが、1人旅のせいもあって、すぐに言葉を交わすようになる。相部屋の2人は、いずれも私よりは若い人で、ダイヴィングと、フィッシングで来ている人たちであった。話していると結構個性があって面白い。

物の片づけ方もそれぞれである。小さい単位でかためるタイプ、大きなハコに取り敢えず突っ込むタイプ、ドアの開け閉めひとつにしても個性がでる。どちらがどうということではなく、人はそれぞれ違うものなのだということを、実感しているのである。分かりきったようなことでも、目の当たりにすると、改めて気付かされることがある。

夕食は、にぎやかだった。それぞれ普通の声でお喋りしているのだが、人数が多いので、テレビのニュースが聞き取れないほどである。仕方がないので、画面の文字を眺めていると、昼間少し話した女の子が隣に座った。次は、波照間に行く予定だというので島の話をする。しかしせっかく、若い女性と夕食を共にしたのに、連絡先はおろか名前さえ聞いていない。まあ、またいつかどこかの島で会うだろう。

外が暗くなって来たので、散歩に出掛ける。闇のグラデーションが少しずつ濃くなっていくとともに、星がひとつひとつ姿を現しはじめる。「いるもて荘」は、北に面しているので、正面には北斗七星がある。小熊座の北極星以外の星は、まだ見えてこない。あとはなに座があったかなぁと思い出しながら歩いていると「夜はライヴはないんですか。」と声が掛かった。昼間会った人かどうか顔がよく見えないので分からない。

「やってもいいですけど、夜は楽譜が見えないから、昼間と一緒ですよ。」と言ったあとで後悔する。夜は、楽譜だけでなく手元も見えないのだ。しまったと思ったが、「じゃあ後で呼びに行きますね。」と手を振られてしまった。玄関前の広場は、夜も気持ちがいい。

5〜6人のギャラリーが集まって、「星空ライヴ」が始まった。なんせ、レパートリーは少ないのだ。あとはトークでカバーするしかない。「八重山の唄を聞くのは初めて」、という人が多かったので、とりあえず「これを本当の島唄と思ってはいけません。」と前置きしておく。

八重山の唄は歌詞が難しいので、前日の安里さんのトークを思い出しながら、解説をしてから唄に入るというスタイルで何曲か弾く。案の定、手元が見えないので、かなり弾きずらい。結局2時間近く引きずって、最後を「とぅばらーま」で締める。気がつくと小熊座が、今はキラキラと輝いている。また今夜も、いい夜になった。

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