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けだもと荘を見る「食事編」 ということで、和食中心ですが、何か1品は、沖縄料理が出るという雰囲気です。この他に、毎日ではないですが、食後の「泡波」が振る舞われます。
このキビが、「けだもと荘」のごはんに入っています。サトウキビで有名な島ですが、キビもおすすめです。 |
4月27日、午前5時30分、明るくなったばかりの冷んやりとした空気を感じながら駅に向かう。昼間は汗をぬぐうほどの異常気象だが、早朝ともなるとやはり寒い。駅で待つあいだも身体を動かし続ける。前日の帰宅が遅くなったため、荷物の最終チェックを終えて時計を見ると3時を回っていた。それからの2時間を、眠るべきか迷ったが、結局徹夜したのだ。休み前で、ただでさえ仕事が多かったのに加え、今回は、無理を言って連休のあいだを休ませてもらったため、その間の仕事も手配を済ませておかなければならなかった。それが予測を大幅に上回ってしまったのだ。 こんなことになるなら、高くても午後便にしておけば良かった、と悔やんでも後の祭りで、特別割引のため、意地でも乗らなければ、今度はチケットがパーになってしまう。それで、確実な方法を選択したわけだが、どうも最初から調子が悪い。先が思いやられる。こんな時は、石橋をたたくに限る。天下茶屋で、和歌山行きの快速をやり過ごし、特急券を奮発して、「絶対に」関空に着く、ラピートに乗ることにした。これなら関空が終点なので、万が一眠ってしまっても、起こしてもらえるからだ。 慎重を期したためか、大したトラブルもなく、石垣行JTA81便はほぼ定刻通りに離陸した。やれやれ、これでやっと眠れると安心したのも束の間、周りを子供が飛び跳ねはじめた。恐る恐る見渡してみると、向こう3軒両隣に、小学生以下の子供が、何と9人もいるではないか。何だこれは、と思ったが、そんな子供におとなしくしていろというほうが無理な注文である。おまけにそのうちの6人は、兄弟およびその友人関係にあるらしく、頻繁に言葉を発しながら私の横を行ったり来たりする。乗務員が、おもちゃを与えるのだが、かえって逆効果だったらしく、行き来は更に頻繁になる。 私は、やけくそでビールを注文した。このビール、オリオンビールなのはよいが、国内線のため有料で、おまけにしみったれたつまみを付けただけなのに、500円も取る。買いたくないのはやまやまなのだが、後のことを考えると少しでも眠っておきたい。面白くないので、簡易テーブルの上に500円硬貨を放り出しておいたのだが、やってきたつまみは、初めて目にするデザインであった。眠い目をこすりながら読んでみると、沖縄限定仕様であった。ミックスナッツを紅芋とウコン入りの皮でくるんであるらしい。なかなかちょこざいではあるが、量は少なかった。 ビールの助けを借りやっと少し眠ったかと思ったら、ものすごい逆Gが身体にかかって飛び起きた。何のことはない、もう着いてしまったのだ。石垣空港は、滑走路の距離が短いため、着陸時に思いっきり逆噴射をかける。まだ250円分くらいしか眠っていないのに、と訳の分からないことをつぶやきながら、飛行機を降りる。まだ昼前だが、最初の目的地波照間に向かう船は3時30分まで無い。もうちょっと空中で旋回していてくれればもっと眠れたのに、とこれもまた、訳の分からないことをつぶやきながら、荷物を受取りバスへ急ぐ。そういえば、この間旋回していて落ちた飛行機があった。アホなことをつぶやくものではない。 出航まで3時間はある。久しぶりに「丸八そば」でも行ってみようか。しかし、こんな滑り出しだから、やっぱり石橋をたたく。「丸八そば」は結構遠いのだ。フェリーのチケット売り場で聞いてみたら、親切に電話をかけてくれた。しかし誰も出ない。この時間に出ないのならあきらめた方がいい。「まーさん道」で、八重山そばをすすり、本屋を探す。目的は波照間特集の「うるま」である。道行はどつぼの連続でも八重山の人はやさしい。「まーさん道」で教えてもらった本屋には無かったが、そこで教えてもらった別の本屋で買うことが出来た。3軒回ったのだから、ついてなかったのか、買えたのだから、ついていたのか、評価は後に譲ることにした。 時間はまだ有り余っている。思いついて、酒造会社を見学してみることにする。酒造会社は大体暦通りに休むので、これまで行くことが出来なかったのだ。今日は土曜日なので可能性はある。しかし、石橋はたたいておかねばならない。「やいまワールド」で、調べてもらうことにする。ここでも3軒ほど電話をかけてくれたのだが、案の定全部連休休みに入っていた。やれやれ、行くところを思い付けない。そうこうしている内に、雲行きが怪しくなってきたので、フェリー乗り場で時間をつぶすことにした。雨が降れば欠航する可能性がある。何せ、どつぼの真ん中に居るのである。取り敢えずビールと泡盛、さんぴん茶を仕入れて、待合所に向かう。 待合所で、「ちはる」と名乗る女の子に会った。八重山では知らない人と知り合いになる機会が多い。初対面でも何故かリラックスできる。彼女は同じ船で波照間に向かうらしい。三味線を持っていたので、少し話をした。現在宮古に住んでいて、これから2カ月かけて八重山をまわるそうだ。何ともうらやましい。同行者を放ったらかして、しばらく一緒に唄う。私は暇だからいいのだが、大丈夫なのかこのカップル。歌いだすと時間の経つのは速い。程なく私たちの乗る船が到着した。波照間行きの船は、乗り心地が悪いことで定評がある。少しでも天気が悪いと、「飛び跳ねる」と聞いていたので空を見上げて憂鬱になる。おまけに、船は小さい方だ。どこまでもついてないのか。しかし、水面を走りだした船は何事もなく、定刻通り波照間港に滑り込んだ。なんだ、大したことないじゃないか、と思ってはいけない。次に何があるかまだわからないのだ。 4カ月ぶりの波照間は、やさしく迎えてくれた。空気が暖かい。ここは南国だ。「けだもと荘」のおとうさんが迎えにきてくれていた。今回の目的のひとつは、波照間の唄者、後富底周二さんとの約束を果たすことである。正月に初めて訪れたときに、初対面にもかかわらず、真剣に教えてくれて、今度来るときまでに、「波照間ぬ島節」を覚えてくるという宿題をもらっていたのだ。もっとも先方が、覚えていてくれているという保証はない。が、彼と岡さんのおかげで、私は「波照間ぬ島節」を覚えることが出来たのだ(詳細は波照間篇1・2をご覧下さい)。報告はしておかなければならない。相変わらず、テンションの高いおかあさんとも再開して、ホッと一息つく。 ようやくくつろいで三味線を弾き始めると、おかあさあんがやって来て一緒に歌いだす。「それがさぁ」、話好きのおかあさんである。どうも最近近所でお葬式があったらしい。「やっと、初七日があけたから、周二さん呼んで、宴会出来ると思ったのに」、宴会好きのおかあさんでもある。「こんどは、3日前にさぁ」何やら不吉な予感である。「こっちの隣のさぁあ」3日前なら、絶対ダメだ。何せ、島中が親戚と言ってもいい島である。宴会はまずい。ということは、周二さんの唄が聞けないということになるかもしれない。 やはり、どつぼは続いているらしい。しかし、宴会がないおかげで早く眠れるということもある。前回の宴会は、5時頃から夜中まで続いて風呂も満足に入いれなかった。もっとも、風呂といってもシャワーだけなのだが。ここでも、一応評価は後に譲っておくことにする。泡盛を買っておいてよかった。 |
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