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公演直前真剣に調弦する部員 男子部員全員による斉唱 門外不出の「恋の花」 「とぅばらーま」聴かせてくれた ほとんどが「県外」出身者 世迎い(竹富島) 芋掘り狂言(ンブリキョンギン) 黒島口説 まんがにすざ(黒島) 村遊び 部長迫真の演技 アブジャーマから六調子へ 客席を巻き込んで 締めは弥勒節 |
「石垣島編4」で御紹介した琉球大学八重山芸能研究会の大阪公演を観てきた。彼らの実際の演奏を抜きにして、多くを語ることは、意味を持たないのかも知れない。 ここに出演していた人は、皆現役の大学生である。しかし、この公演を始めて見た人なら、特に沖縄出身者の方ならきっとその完成度の高さに驚いたに違いない。実際、当日偶然会った知人の両親が、沖縄出身者だったのだが、「とても良かった」と感動されていた。 とにかく、調弦ひとつにしても、真剣なのである。20丁ほどもある三味線の音を、本番直前にひとつひとつ確認しながら合わせている。それを見ただけで、「この公演はすごい物になる」と確信した。 とにかく見せる。幕が開いてまずは、男子部員全員による定番曲の斉唱である。「鷲ぬ鳥節」「シューラ節」「赤馬節」と定番の八重山民謡に乗せて舞いが入る。とても4年足らずで身につけたとは思えないノドを聴かせる。 八重山の唄は、ゆっくりとしたテンポの曲が多いのだが、太鼓が入る曲は少ないと思っていた。しかし、それはどうやら間違っていたようで、「鷲ぬ鳥節」から、力強い太鼓がかけ声とともに入っている(写真右端)。 そして、新城島(あらぐすく別名パナリ)の「恋ぬ花」、門外不出の伝統舞踊である。島では祭りの時にしか演奏されない曲だ。こうした曲を、地元の人から教えてもらえるのは琉球大学八重山芸能研究会が、教えてもらったことを大切にし、地元の人と、点ではなく線の付き合いを心掛けてきたことによる。 実際、新城島には、今でも公衆便所がない。観光客に島を開くことを良しとせず、先祖から代々受け継がれてきた、島の伝統を大切に守り続けている人々がいるのみである。 華麗な舞いが終わって、舞台には上級生が、三味線片手に、島の衣装を着て登場する。何が始まるのか、期待していると、何と「とぅばらーま」である。八重山諸島の石垣島では毎年休盆に「とぅばらーま大会」が開かれている。 島唄はもともと掛け合い唄で、決まった曲に思い思いの歌詞を即興で創作して、投げ掛けては返していた曲が多い。「とぅばらーま」は八重山でもっとも有名な掛け合いの創作曲でもある。この大会で優勝して唄者への道を歩んでいる人も多い。 それだけに、歌唱にも実力が要求され、聴く人が聴けば上手いか下手かがすぐにわかってしまう、演奏者にとっては怖い曲なのである。しかし、このふたりは、堂々とそれをこなしてしまった。たいした実力である。副部長による笛の音色も秀逸であった(写真左端・彼は大阪出身である)。 適度の緊張の後、和やかな雰囲気で、部員の紹介が始まる。これだけの実力なのだから、沖縄生まれの沖縄育ちが多いのだろうと勝手に思っていたのだが、開けてびっくり、28名の部員の実に21人が県外出身者であった。それで、この実力、もう三味線を止めてしまおうかと思うぐらい落ち込んでしまった。とてもかなわない。 舞台は変わって、竹富島の旧暦8月8日、神を迎え送る儀式が荘厳に再現される。竹富島には、もうひとつ秋に「種取祭」という大きなイヴェントがある。 ほとんど島中と言っていい人々が参加する、数日間も続く大きな祭りで、毎年その最中は、里帰りする家族と、見物に来る観光客で飛行機と船は臨時便が増発、宿は半年以上前でないと確保できない位である。 伝統的な行事を島民全体で守り伝えていくという意志が明確に感じられる島だ。「種取祭」というタイトルのCDも発売されていて、祭りに使用されている全曲が合計2枚に納められている。出演はもちろん島の人々である。 厳かな儀式が終わって、狂言へと転じる。このあたりの、演出も気が利いている。内容は、芋掘りに来た若者を、居合わせた女性ふたりがからかうというものだが、全て、八重山ことばのため、私には何を言っているのかさっぱりわからない。 しかし、ところどころ、知っている単語をつなぎ合わせ、また身振り手振りを見ているだけで、笑えてしまうから不思議なものである。新種の「芋」の説明の段では「ムネオハウス」まで登場し会場の爆笑を買っていた。あなどれないつくりである。 そして、昨年長期合宿を行った黒島の曲を披露してくれた。口説とテンポの速い踊りながらの女性の掛け合いが特徴の「黒島口説」、続いて私たちが現在練習している「まんがにすざ」と、唄三味線と踊りが軽快に展開されていく。 少し前の、八重山はこんな感じだったのかも知れないと思わせる、上手い作りに感心する。 最後は、暗転した舞台から、村遊びの場面へ。八重山には、月を唄った唄が多い。仕事が終わって、一息ついて、みんなで近くの浜に集まって、唄い、踊り、語り明かす。そんな、雰囲気を上手く伝えている。 ゆったりとした曲から、だんだん速くなって、「与那国ぬ猫小」「山崎ぬアブジャーマ」そして「六調節」になる頃には、会場全体が踊りの輪になっていた。 繰り返しになるが、とても現役の大学生がわずか4年足らずで、身につけたとは思えない、というか、本音で言えば同じ芸能を学ぶ者として「とても悔しい」という公演であった。 実際の舞台を御紹介できないのが本当に残念である。 --------------------------------------- この公演の、VTRが発売されています。御興味のある方は、御参考になさって下さい。 申込先:近畿八重山郷友会 会長 宮良栄幸 |
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