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通りに面していないのでわかりにくい 八重山そば・500円 竹富島の唄が入ったCDは2000円 演目の詳しい解説が付く 丸八そばのお嬢さんと 島外不出の「恋ぬ花」 衣装部屋 我らが漆畑さんです |
6日、今日も晴れ。ゆっくりと2便の船で石垣島へ渡る。帰路は午後3時の関空行き直行便なので急ぐ必要はない。しかし、この直行便、なぜか「給油のため」と称して、宮古島を経由する。「そのぐらいの燃料積んどけよ」という気もするが、宮古島で乗り降りする人も結構いるみたいなので、JTAのコスト削減作戦の一貫なのかも知れない。 2便で着いてもまだ朝である。開いている店も少ない。帰る日なので荷物も全部持っている。どこかでゆっくりと、食事をしたい。うろうろした後、アヤパニモールの中に、三味線の絵が付いた看板を見つけた。暇な時は「おばあ」が、三味線を弾いてくれる、というそば屋である。見たところ、まだのれんが掛かっていない。 入り口が開いていたので、ヒョイと覗いてみたら、その「おばあ」であると思われる女性が仕込みをしている最中だった。「やってますか?」と声をかけると「いいですよ」という返事。ヤレヤレ、と荷物を下ろした。しかし一向にのれんを掛ける気配すらない。「そばひとつ、御願いします。」と言っておいて店内を見ていると、壁に三味線が掛かっている。棹は縞黒檀である。年代物らしい。しかしよく見ると、胴の表には合成皮が張ってある。裏は蛇皮である。「そば屋の稼ぎでは、蛇皮は張れないさ。」と、いつの間にか出てきた「おばあ」がそう言った。 「三味線弾いてもらえるんですか?」ときくと、「あんたが自分の三味線弾きなさい。」ときた。それでは、ちょっと話が違う。「おばあは、まだ忙しいからね。そばの出汁が熱くなるまで、時間があるから、弾いてみなさい。」こうなったら断るすべもない。「何でそばを食べに来て、三味線を弾かなければならないんだ。」などと思ってはいけない。 一応TPOを考えて、八重山の唄を選ぶ。正月なので「鷲ぬ鳥節」だ。昼間だし、酒も入っていないので若干緊張する。何とか弾き終えると、「次やりなさい。」ときた。八重山の唄で、暗譜している曲はそんなにない。しょうがないから、TPOは無視することにする。「八重山育ち」「月ぬ美しゃ」「安里屋ゆんた」でおしまいである。 そこまで来てやっとそばの出汁が熱くなったらしい。「後でまた弾いたらいいから、食べなさい。」とそばが出てきた。もう、八重山の唄はおしまいなんだけど、とつぶやきながら、取り敢えず食べることにする。そばは、典型的な八重山そばで、テーブルには竹富島のソバ屋「竹の子」のピヤーシが置かれている。後でわかったのだが、この「おばあ」は竹富島出身だった。 食べ終わると、また、「三味線弾いてもいいよ。」意味的には「弾け。」ということになる。「もう八重山の唄はできません。」と泣きを入れると「何でもできるのをやったらいいさ。」とあくまでもやらせる方針。あきらめて、「十九の春」「国頭ジントヨー」と合計10曲ほど唄って、やっと「おばあ」の唄を聴かせてもらえることができた。 この「おばあ」、宮良さんはかなりのがんばり屋さんである。昭和5年生まれにして平成7年に、本島の高校を卒業。その間に母を看取り、50歳から三味線を習いはじめ、15年かかって、先生の免状を取った。そば屋の仕事の合間にである。 宮良さんは、たくさん弾かせた見返りに、「本当は弟子以外には教えないんだけど」と言って、気になる点を指導してくれた。決まった先生についているわけではないので、こうしたアドヴァイスは嬉しい。御礼に、宮良さんが録音した竹富島のCDを買って店を後にする。 行き先は、石垣市民会館だ。夕方6時から「琉球大学八重山芸能研究会」の公演があって、そのリハーサルを見学するためである。私は、「大阪三線クラブ」の他に、「三線友の会」という集まりにも顔を出している。どちらも同好会的な集まりなのだが、「三線友の会」のほうには「初めての三線」という三味線の入門書の著書が参加している。その漆畑さんが、「琉球大学八重山芸能研究会」のOBで、今回特別に見学出来ることになったのだ。 この漆畑さん、私が密かに師匠と仰いでいる方なのだが、八重山民謡はもちろん、琉球民謡全般に精通しておられる。気さくに対応して下さるので、ついつい疑問点など質問してしまうのだが、こと琉球民謡に関してはおよそ全ての分野にわたって何でも答えが返ってくる。あまり気軽に質問するのも失礼な話なのだが、「ついつい」きいてしまう。 さて私は、三味線以外の「芸能」を見るのは、初めてに近い。民宿などで宴会になると、結構、踊りが入ったりするのだが、衣装を付けたのをちゃんと見るのは初めてである。会場に入ると黒島の唄をやっていた。この研究会、35年の歴史を誇り、毎年テーマを決めて合宿を行い発表会を続けてきたというすごい歴史を持つ。今年の合宿は黒島で行った。曲が「黒島口説」になって、はたと気が付いた。この曲、早弾きが交互に入るのだが、それは、踊りとシンクロしていたのだ。百聞は一見に如かずとはこのことである。 もっと、ずっと見ていたかったのだが、飛行機の時間が迫ってきた。新城島の島外不出の踊りを見て、楽屋裏をひととおり見学させてもらって、飛行場に向かう。その前に、出演予定の女優さんと記念撮影をしてもらう。OB特権である。この女優さん、実は手打ちそばで有名な「丸八そば」のお嬢さんであった。 最後はバタバタと時間に追われてしまったが、この公演、35周年を記念して、この3月に大阪にやってくる。短い時間に垣間見ただけではあるが、リハーサルの舞台には緊張感が漂い、相当レベルが高いのがわかる。さらに、去年の夏には長期に渡って黒島合宿もこなしている。もし日程が合えば、ぜひ、おすすめの舞台である。 琉球大学八重山芸能研究会発表会 --------------------------------------------- 多くの人に出会えた旅であった。三味線をしているということがきっかけで、地元の人と交流できたこと、色んな地域から訪れている人と知り合いになれたこと、その全てが貴重な体験であったとともに、忘れられない思い出となった。また、一部の人とは大阪に帰ってからも、連絡しあっている。自分の中で、どんどん「沖縄」が占める割合が増えていっている。 次はどんな旅になるのだろうか。 |
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