沖縄(黒島編その2・スキューバ)02.01.05


クダゴンベ

シマキンチャクフグ

フウライチョウチョウウオ

ホシゴンベ

ツノダシ

タテジマキンチャクダイ

イシヨウジ

フタスジタマガシラ

カクレクマノミ

シルエットが美しい

ハナヒゲウツボ

ヒメゴンベ

キンセンイシモチ

オジサン

スカシテンジクダイの群れ

1月5日、今日も快晴である。今年の正月は、元旦に少しパラついた外は雨が降っていない。7時30分、肌寒いのでフリースを羽織って食堂に向かう。

ダイヴィングサービスある宿の朝食は早い。テレビで天気予報と気温を確認してから、私以外の宿泊客は準備を始める。9時出発といっても、色々やっていると直ぐに時間が経ってしまう。2本目からにして良かったと思いながら、ぼ〜っと新聞をながめる。

始発の船がまだ着かないので、新聞は4日付である。3日の名古屋の積雪が41年振りの記録的なものだと伝えている。私の生まれる前である。地球はこれからどうなっていくのだろうか、と、ふと思う。こんな気候の時に、海に入ろうとしている自分に違和感を感じる。

宿のお父さんが、「新品」のウエットを出してきてくれた。「10時半にウエットに着替えて待っていて下さいね。」初めて着るバタフライだ。レンタルのウエットは通常ワンピースが多い。上から下までつながっているやつだ。バタフライは、上だけの長袖ジャケットで、下には、半袖のワンピースか、ロングジョンと呼ばれる、オーバーオール状のものを着ける。お腹と背中が2重になるので、温かそうだ。前日に、寒いのを理由に海に入らなかったので、気を遣ってくれたのだろうか、有り難い。

しかし、温かさと引き替えに、やっかいな問題も起こる。浮力が大きくなるということである。オーダーなら、身体にぴったりとするのでさほど気にならないが、レンタルの場合、きつすぎたり、緩すぎたりする部分が発生し、緩すぎる部分には空気がたまるので、水中で浮き袋になってしまい、なかなか沈むことが出来ないのだ。それで、腰のウエイトを増やすことになるのだが、案の定、なかなか沈まなかった。困ったお父さんは、どこからか石ころを探し出してきて、私のポケットに入れ、「これで大丈夫!」と笑った。海人は、ダイナミックである。

しかしウエイトだけで、8kgになる。船だからいいものの、海岸から歩いてエントリーすることを想像するとゾッとする。おまけに、背中には満タンのタンクまで背負っているのだ。ダイヴィングには、体力も必要だ。

その日に帰る客と話していると太陽が照りはじめた。沖縄の太陽は、冬でも照りはじめると直ぐに暑いと感じるほど、日差しが強い。ようやく、海に入ろうという気になってきた。万事スタートが遅い。ひなたぼっこをしていると、もう先発隊が帰ってきた。南さんが若干興奮気味で教えてくれる。「マンタが出ましたよ!」マンタとは、イトマキエイのことで、大概のダイヴァーなら、一度は出逢ってみたいあこがれの水中生物である。50本目の記念ダイヴィングで、マンタに出会えた南さんは、とてもいい顔をしていた。

さて、いよいよ出発である。トラックの荷台に載って、5分ほどで港に着く。装備を船に降ろし、乗り込む。取り敢えず、自分の装備をまとめようと、足を一歩踏み出したとたん、激痛が走った。ちょっと長めの押しピンが、突き刺さったような痛みである。しかし、ブーツを脱いでみても、何が刺さったのかがわからない。しかし、第2指の付け根の裏側あたりに、2カ所の出血が認められる。血を絞り出すようにして、皮膚の中に何か残っていないかどうか、探してみるが何もなさそうだ。

しかし、ズキズキと痛い。痛みと格闘している間に、船が止まった。結構遠くまで来ているではないか。お父さんは、首を傾げながら、船内を捜索してくれたが、押しピンも釘も木っ端も出てこない。そして、ふと、目の前のフィンを持ち上げたとたん「こいつだ!」と叫んだ。

フィンの下には、10cmほどの大ムカデが隠れていた。多分、私が知らずに踏んづけたのでびっくりして噛んで逃げたのだということだった。かわいそうにと言うべきか、ムカデは魚のえさにされてしまった。船の上で待っていようかとも思ったが、暑いし、海に入れば塩水で消毒できて、ついでに冷やすことも出来ると考え直し、予定通り入ることにした。

海の中は、抜群の透明度だった。流れもなく、まわりに他のダイヴァーもいないので、海底の砂が巻き上がることもほとんどない。さらに、全員がカメラを持っているので、気を遣わなくて済む。それぞれ、思い思いに撮影を楽しむ。

2本目も、コンディションは最高だった。ただ、傷の痛みがかなり増してきて、フィンをうまく使えない。水中の移動は、ほとんど左足だけで行う。しかし、それだけ痛かったら、じっとしてればいいのに、魚を追いかけてしまう自分がうらめしい。

今回は、この水深では珍しい「クダゴンベ」や愛嬌のある「ハナヒゲウツボ」をはじめ、約30種以上が、確認できた。もちろん、私は、魚のことも全くわからないので、ログ付けの時に、周りの先輩たちにほとんど全部の魚の名前を教えてもらったのである。

しかし、わからないなりに、図鑑をひろげて探し、同じ模様の魚を見つけた瞬間は結構興奮する。魚種によっては、親と子、雄と雌で見かけが異なるもの、周りの環境で体色を変え擬態するものが結構あって、まだまだ全部がわかっているわけではないらしい。海の中の世界も奥が深いのだ。結局私もいっぱしのダイヴァー並に、10時頃までログ付けをすることになってしまった。

お父さんは、時々出てきては、ニコニコッと話しかけ、また直ぐに部屋に戻ってしまう。しかし、ポイントには結構自信を持っているようで、自分で見つけたポイントにハリウッド女優の名を付けたりする茶目っ気も持ち合わせている。沖縄の海は、台風でポイントが毎年変化するらしいので、こうして長年海と暮らしてきた、地元の海人の存在は心強い。

私は、今回初めて利用したわけだが、一度も緊張することなく、楽しく海で過ごすことが出来た。私が、足のことを心配していると、「そのうち直りますよ。たいしたことはありません。私も2回ほど噛まれましたが、何もしないで、放って置いただけですよ。大丈夫です。」と、またもや笑顔で励まされ、精神上の安定をもたらしてくれた。

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<データ>
共通:5mmウエット、バタフライ+ロングジョン、タンク・アルミ9L
   天候・快晴、水温・22度、カレント・なし、視界・最高

1本目:ウエイト・8kg、気温20度
 ポイント:パナリ(新城)クダゴンベの根(砂場)
 エントリー:11:53(潜水時間62分)
 最大水深:10m

2本目:ウエイト・約8.5kg、気温21度
 ポイント:黒島港前のハナヒゲポイント(砂場)
 エントリー:14:36(潜水時間55分)
 最大水深:8.4m
 

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<後日談>
結局、大きく腫れ上がりこそしなかったものの、痛みはなかなかひかず、翌日もズキズキとしていた。帰阪後、ある程度忘れていたのだが、1月10日過ぎから、今度はジクジクと、カユミが出だした。ムカデが、皮膚の中に、何らかの物質を残していってくれているようだ。カユミのある部分はしこりができていて、少し硬くなっている。いつになったら直ってくれるのか。

この話をしたら、知り合いの女性が「私の父が、スズメバチに刺されて、耳たぶの後ろに同じようなしこりが出来て、何年も腫れたままだった」と同情してくれた。まあ、見えない部分なので、哀れっぽくはないのだが、「何年も」となると、少々気が重い。「どんなムカデに噛まれても、これひと吹きでさっとカユミが取れて腫れがひく、ムカデ一番!」なんて、商品が開発されないかしら。

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