沖縄(石垣島編その3・安里屋)02.01.03


黒島の集落付近

生長していた鷲ぬ鳥節の碑

安里屋のステージ

安里勇さん、海人でもある

夢のような共演ステージ、左は森さん

笑顔が出れば一人前と言うところか

サインもいただきました、ハイ

1月3日、空路なので、いつもは海から平らに見える黒島の集落の様子が良く見える。翌日から宿泊予定なので地図と見比べているうちに通りすぎ石垣空港に舞い降りる。ふわふわして鳥のような飛行機だ。

八重山の離島間の移動は通常いったん石垣島を経由する。不便なようだが、逆に考えれば調整用に使える。天候の加減で移動出来なくなったときに宿の空きを探したり、日帰りで島に渡ったりするときは、石垣島でプランを作るのが便利なのだ。慣れてくると、天気のよい日に、島から石垣島に買い出しに来る旅行者もいる。

今回はオフ日に設定していたので、夜までは何も予定を入れていない。もっとも、まだ正月休みなので、開いているのは土産物屋くらいである。宿泊先の楽天屋に荷物を預けてぶらりと街を一回りする。アヤパニモール(商店街)には、やいまワールドという情報センターが出来ていた。ちょっと覗いてみただけだが、離島へ渡る定期船の運航表や、空港バスの時刻表の他、各島のパンフレット、宿泊情報、観光施設の案内と、もう「沖縄・離島情報」が必要ないのではないかというくらい網羅的に取り揃えている。さらに、スタッフが常駐していて、相談に乗ってくれるので、初めての一人旅でかってがわからない時には心強い。また、インターネットに接続できるパソコンが2台備えてあって、予約すれば利用できる。このパソコンは、地元の子供たちにも人気のようで、私がいる間にも、小学生くらいの女の子が2人、順番が来るのを待っていた。

やいまワールド・09808-4-1525

外に出て、またモールを歩いていると、「鷲ぬ鳥節の碑」のところで目が点になった。何と、コンクリートで作られた「木」が「生長」しているではないか。この碑は、ボタンを押せば、「鷲ぬ鳥節」という曲が流れてくるという仕掛けがあって、結構色々な場面で話題にしてきたのだが、「腰くらいの高さの木」と説明してきた。しかし今目の前にした碑は明らかに私の身長より大きいのだ。大いなる勘違いである。目が点になった後、耳の後ろから冷や汗がにじみ出てきた。ちなみにこの唄の出だしは「あや〜ぱ〜に〜ば・・・」で、モールの名前と同じである。

若干落ち込んでしまったので、宿に帰り、シャワーを浴びて仕切り直しをする。シャワー室を出ると玄関のところで宿のオーナー夫妻が、近所の猫と遊んでいた。ちょっと立ち話をしていたら、結構話題がつながって話し込んでしまっていた。このカップルは、ふたりとも音楽家で様々な実験的な表現をふたりであるいは別々に試みている。バッハの声楽曲(?)をアレンジしたヴォーカルを聴かせてもらったが、透き通ったやさしい声が魅力的で、思わず引き込まれていきそうになるくらいふわっと包み込んでくれた。このふたり、ただ者ではないと思ったら、オリジナルのCDも発売していてこちらも聴いてみたかったのだが、売り切れだった、残念。音楽以外にも色々な表現を試みているようで、そういえば、この宿の居心地の良さは、そのあたりから導き出されたものかも知れないと合点がいった。この宿は、基本的にチェックインの時しか、オーナーにお会いすることはないのだが(先払いで、鍵はドロップアウト方式)、たまたま目が合って(?)、色々な話が聞けてますます宿に愛着がわいてしまった。

民宿楽天屋・09808-3-8713・石垣市大川291

ふたりのおかげで落ち込みから回復し、三味線でも弾いてみるかという気になってきたところで、携帯電話が鳴った。大阪三線クラブの森さんからである。森さんとは1年前の正月に、隣の「民宿石垣島」で同宿して以来のお付き合いで、大体、私と同じようなスケジュールで八重山を旅している。たまたまふたりとも、今日は石垣泊だったので「じゃあ、石垣で会いましょう。」ということになっていたのだ。歩いて2〜3分の居酒屋で食事をしながら情報交換する。

「安里屋は10時まで貸し切りらしいですよ。安里さんと会ったらそう言ってましたから。」この方、偶然安里さんに会うことが多いのだ、うらやましい。安里屋は、八重山の唄者で石垣在住の安里勇さんが経営する島唄ライヴハウスで、島唯一と言っていい繁華街、美崎町にある。この居酒屋からは歩いて5分くらいのところだ。安里屋へは、過去何回か行こうとしたのだが、果たせずにいた。時計を見れば、まだ9時前である。暗雲がたれ込めてきた。2人で暗い雰囲気になりかけていたところに、携帯が鳴った。波照間で一緒だった齋藤さんからである。「安里屋にいるんだけど来ませんか?」貸し切りの予約がキャンセルになったらしい。こういう展開は内地ではあまり考えられないので少し頭が混乱したが、急いで支払いを済ませ安里屋に向かう。

着いてみると、40人収容の店内はほぼ満員になっていた。これみんな、「貸し切りって聞いてたけど取り敢えず来てみた」人たちなのだろうか?混乱がまだおさまらないうちに、安里さんのステージが始まった。吸い寄せられるようにステージに、集中する。安里さんは、ボソボソッと話しながら、ステージを進めていくのだが、この「ボソボソッ」が結構おもしろい。唄に酔い、トークに笑いながら、最初のステージはあっという間に終わった。次のステージは11時からである。パラパラと席を立つ客がいるが、直ぐに次の客が入り常に満員状態だ。これだけ入っていると興奮状態が持続する。みんなだんだん声が大きくなってきて、テーブルで向かい合って話しているのに、齋藤さんの声がよく聞き取れない。私たちも大声で話すことになる。

最初のステージでは、沖縄のポピュラーな島唄が多かったのだが、次のステージは、八重山の唄が中心の選曲になった。安里さんの八重山情唄は心に滲みてくる。発売されている3枚のCDは全て八重山の唄のみで構成されていて、ライヴを経験したことのなかった私は、安里さんが沖縄(八重山以外)の島唄を唄うのをこの日初めて聴いたのだが、やはり、安里さんは八重山の唄の方がいい。ステージはどんどん盛り上がってしまって、日付が変わった頃、とうとう無謀にも飛び入りをしてしまった。飛び入りの場合は暗譜していなければならないので、私の場合演奏できる曲は限られる。さらに、折角なら八重山の唄ということで、「八重山育ち」をやることにした。「与那国ションカネー」「とぅばらーま」「小浜節」の挿入部分を安里さんに唄ってもらうという、厚かましい共演企画である。

何とか間違えずに終了しステージをおりたが、その時安里さんがまたボソッと、「こっちの人じゃないよね」「はい大阪から来ました」で、客がまた盛り上がる。この時間までいるのはたいてい地元の客である。沖縄の人は、県外者が三味線を弾くと喜んでくれて応援してくれる人が多い。安里さんの絶妙なホスピタリティに感心する。また、このままいつまでも続いて欲しい夜になった。

安里屋・09808-8-6008・石垣市美崎町10-2

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