沖縄・今帰仁村編・01.07.20〜21


てんtoてん

下は古代米おにぎり

ギャラリーコア

首里城(部分)

金城次郎窯の看板

伝統の登り窯

右が壊れた方のフタ

ファームハウス


蝶々の朝食

赤い花や

黄色い花

非日常の世界

2ヶ月ぶりの沖縄である。暦どおりの2泊3日なので、無理をせずに伊丹〜那覇で予定を組んだ。往路はJAL911便、午前9時半頃のフライトなので那覇空港に昼前に着く。さらにモノレールが出来たおかげで、自宅を出る時間をほぼ正確に逆算することができる。しかし、前日に仕事上のトラブルがあって帰宅が遅くなり、寝たのは2時頃である。かなり眠い目をこすりながらの出発となった。

大阪から那覇は近い、離陸したと思ったらすぐに着陸する感じである。おまけにキャンペーン期間中とやらで、カードが配られビンゴゲームが始まった。私は通常この手の企画で、賞品を手にすることはほとんどない。くじ運が悪いというのだろうか。しかし、ビンゴゲームが終わったときに私は、ミッキー柄の扇子を手にしていたのである。どうやら私にも運が回ってきたようである。滅多にない賞品を手ににやついているうちに、飛行機は高度を下げ始めた。

那覇は快晴である。実は、この季節に沖縄に来るのは初めてなのだ。日差しが強烈である。宿泊は北部の今帰仁なのでレンタカーを借りなければならない。那覇空港から名護より北に移動する場合、バスはあてにならない。まず空港から那覇バスターミナルまで行き、そこから名護バスターミナル行きに乗る、そして名護でまた乗り換えなければならない。時間帯によっては1時間に1本あるかないかという感じなので、当日中に目的地までたどり着けるかどうかということになるのである。

もっとも、現在空港と那覇市内をつなぐモノレールが建設中なので、これが完成すればずいぶんと便利になるだろう。ところで、レンタカーである。前回、宮古島で沖縄レンタカーを利用したのだが、結構安くて対応が良かった。それまでは、OTSを利用していたのだが、親会社の対応があまり良くないのでこれを機会に切り替えることにしたのだ。フリーダイヤルで電話をかけると、軽自動車が出払っていてひとつ上のクラスの車しかないという。「しまった、先にとりあえずOTSにかけておけば良かった」と思いながら、料金を尋ねると、3日間の利用で19,800円だと言う。予算は15,000円である。迷った末に、「まあいいか」ということにした。

休日は旅行客が多いので、運が良ければ、空港で待機しているレンタカー会社のスタッフをつかまえることが出来る。私は、周りを見回し沖縄レンタカーのプレートを頭の上に掲げたスタッフを捜した。そして約1分後には茶髪の青年を見つけだしていた。

エアコンの全然効かない箱バンに乗って、うだりながら沖縄レンタカーまで移動する。着いてみると、軽自動車が待っていた。「何とか都合をつけました。」と電話で話した社員がニコニコしている。「何とか、ってどういうこと?」と尋いてやりたかったが、暑かったので流しておいた。料金は、17,700円になった。やっぱり、少しは運が上向いてきたのかなどと余計なことを考えながら走っていたら、どうもエンジンの調子がおかしいのに気が付いた。アイドリングの状態で、エアコンをつけていると、時々車全体が振動に包まれるのである。かなりガタがきているなと思って距離計を見ると、すでに4万キロ以上走っていた。試しにエアコンを切ったら、振動はなくなったのでそのまま使うことにした。

さて、第一目的地は「てんtoてん」である。勘の良い方はすでにおわかりかと思うが、私がこの時間にわざわざ車で出かける場所といえば、沖縄そば屋しかない。「てんtoてん」は、木灰そばとぶくぶく茶を出す店である。あちこちのメディアでで紹介されているので、多少心配ではあったがやはり待たされた。この手の店に行くには時間をずらさなければならない。この地域には珍しく、麺はやや太めの平たい縮れ麺で、出汁は淡泊でやや甘め、八重山そばのようだなと思ったら、テーブルの上にピヤーシ(※)が用意されていた。

てんtoてん・那覇市識名4-5-2・098-853-1060

さて次は、名嘉睦稔氏である。地球交響曲第4番にも出演している最近注目の版画家で、鮮やかな色使いで、沖縄の自然や文化を力強く表現している。本人には会えないが、作品を展示販売しているギャラリーが国道58号線沿いにあるので一度行ってみたいと思っていたのだ。ギャラリーは明るくて、自然な雰囲気を生かした作りになっていて、別の作家の木製家具なども販売していた。ウッディーな感じで落ち着けるスペースのようだ。いい感じだなと見回していたら、カウンターの隅にさりげなく置かれていた旧ibookのグラファイトモデルに目が合った。作家はアップルファンだったのだ。macを使う人は少ないので、勝手に親近感を覚える。本物の版画はとても買えないので、ハガキを何枚か買ってギャラリーを後にする。(御興味のある方は→ http://www.bokunen.com

そして最後の中継地へ向かう。読谷のやちむんの里である。金城窯を訪れるのは私の楽しみのひとつになっている。ここの焼き物は登り窯で焼かれるため、窯ごとに微妙に色合いが変化する。器の形も様々なので、行く度に違う出会いがあるのだ。さらに今回は、訪れる理由がもうひとつあった。急須のフタである。

去年訪れた際に求めたものを、使う前に落として割ってしまったのだ。、飛び散った破片を拾い集めて接着剤で張り合わせてみたものの、樹脂が溶け出すのではないかと心配で使う気にもなれないでいた。
というわけで、無理を承知で張り合わせたフタを持って来ていた。読谷の金城窯には3つの店がある。急須を購入したのは金城次郎氏の長女にあたる、宮城須美子さんの工房兼販売所である。

しかし持ってきたものの、なかなか話を切り出すのには勇気がいるものだ。暑さに加えて緊張のため汗がしたたり落ちる。やっとの事で話を切り出し、持参したフタを渡すことが出来た。ところが、フタを持って工房に入っていってしまった女性はなかなか出てこない。しばらくして、ニコニコしながら現れた彼女は、渡したものと同じ形のフタを持っていた。

「急須は、フタを乗せて焼くので、ひとつひとつ微妙に大きさが違うんです。長さを測ってぴったりだったので、これで大丈夫だと思います。大事に使ってくださいね。」私は喜んで礼を言い、代金を支払おうとした。ところが、彼女は受け取ってくれないのだ。「須美子さんが、(私の張り合わせたフタを見て)大事にしてもらえる人のようだから、お代はいただきませんと言ってますから。」と、最後まで受け取ろうとはしなかった。

元はと言えば不注意で割ってしまった私が悪いのだ。それを問わず、わざわざ合うものを探して下さったのは、とてもうれしかったのだが、図々しい自分の姿をさらしたようで恥ずかしかった。急須のフタと一緒にいただいた宮城さんの心を大切にしたい。

金城窯・読谷村字真喜味2678・098-958-5559(陶芸城)

さらに58号線を北上する。このあたりまで来ると、豊かな自然の中に基地が見え隠れするだけで、人影もまばらになる。本部半島に入りいよいよ今帰仁村だ。ファームハウスは、バス通りからさらに600mほど山側に入った場所にある。周りは、見渡す限り畑と山である。寄り道をしてきたので、着いた時には6時を過ぎていた。

この宿は大きめの住宅といった雰囲気で、オーナーが不用住宅を解体し移築したリサイクル建物である。自ら建てたせいか、居心地のよう構造になっている。2階の部屋で荷物を下ろし食堂へ降りていくと、隣のテーブルに、加古川から来たという若い女性4人組が楽しそうに話していた。聴くつもりはなかったのだが聞こえてくる。完全に関西のノリでそのうちに吹き出してしまった。

他に大阪から来た家族と、名護市から来た家族で今日は満室である。にぎやかな夕食が終わっても、オーナー夫妻と、Uターンしてきたヘルパーの青年が加わって、さらに盛り上がる。オーナー夫妻の応対も自然体でかつ優しく、大家族の一員となったような錯覚を起こした。

楽しい夜を過ごすと、翌朝の目覚めもいい。私にしては珍しく、朝食前の散歩としゃれてみた。玄関を出てみると、まだ7時前だというのに日差しが強い。日陰を伝いながら歩き出すと、寒暖差が激しいのか、植物の葉が朝露に濡れている。隣接する畑では、オーナーが朝食用のシソを採取していた。足元を見れば何と長靴姿である。

広くはない畑だが色々な野菜が露地栽培されている。ニガウリ、ナス、ヘチマなどの旬の野菜が実をつけていた。足りないものは、無農薬で栽培しているグループから入手したり、山野草を取り入れる。冬のハウスもののニガウリは使わないというのは、オーナー夫人の弁である。

畑の反対側へ回ると、壁面に様々な色をまとったハイビスカスが、まさに咲き乱れている。ちょうど朝食の時間だったのか、何種類もの蝶々が入れ替わり立ち替わり蜜を吸いに訪れていた。蝶や花にとっては日常の生活なのだろうが、見ている私にとっては、非日常の美しさである。しばらくの間、見とれてしまった。

(※)ピヤーシ=島こしょう、ヒハツモドキという植物の種を干してすりつぶしたもの。八重山そばには無くてはならない存在。煮魚や肉料理の臭み取りにもいい。ピパーツ、ヒハツ、など地域によって読み方が異なる。

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