沖縄石垣島編2・01.05.03

プロローグ

この旅は、2月からすでに始まっていた。以下は3月の終わりに書いたこの旅に関する文章である。自然館のメイルマガジンが配信されている方には、繰り返しになり申し訳ないが、プロローグとして再掲させていただく。

何を今頃ゴールデンウイークなんだと思われるかも知れない。相変わらず重度の沖縄病患者である私の頭は、「まとまった休み=沖縄に行ける」と条件反射する。私にとって、沖縄への一番実際的な移動手段は飛行機である。その飛行機のチケットの発売日が登場予定の2ヶ月前なのだ。

つまり5月3日のチケットは、3月3日から購入可能ということになる。通常であればもっと間際になってもとれるのだが、ゴールデンウイークはハイシーズンとなるため、5 月3日大阪発、5月6日大阪着というチケットは極端に取りにくくなっている。おまけに、那覇便と違って石垣直行便を取ろうと思ったら大阪発の便は1日1便しかない。2月の中旬、まだ5月の運航スケジュールもでていないうちから予約を入れたにもかかわらず、3月の7日を過ぎてもOツーリストから電話がかかってこない。

沖縄に強いと言われているOツーリストなら、その時の一番いい条件のチケットを確保してくれる(と思っていた)。いつもなら結果をすぐに知らせてくのにおかしいな?と思いながら、8日にこちらから電話を入れたら、予約を受けた担当者は出張で留守だった。チケットの状況を訪ねると「調整中です。」とのこと、ツアーの団体客とチケットのみの客との間で調整をおこなっているとのことであった。

翌日に電話があると思っていたのだが、ない。職場からではあまり込み入った話が出来ないので、翌10日の土曜日に電話をすることにした。ところが電話にでてきたのは自称「研修生」で、「調整中になっています。」の一点張り。その調整はいつまでかかるのかときいても要領を得ない。少し頭に来たので(何せ重症の沖縄病なもので)、「責任者を出せ。」と言ったら「今日は休みです。」と気の抜けた返事が返ってきた。

とにかく普通の社員にかわってもらってから、さらに交渉は続いた。ようやく把握できた状況は、つまり予約が多すぎて、キャンセル待ちになっている状態で、私の前にまだ12人も待っている人がいるというものだった。

「もしチケットが取れなかったら一体どうしてくれるつもりなのですか?私は、行かなければならないのです。」「・・・・・。」

私はそれからたっぷりと時間をかけて、沖縄本島滞在の代替プランを作ってもらった。那覇行きの便はキャンセル待ちが一定数を超えると増発便がでる。まさかの時はこちらの方が確率が高いのである。


野原三味線店

買ってしまった

楽天屋さん

風通し・採光抜群

ゆらてぃく

2001年5月3日(木)

粘りが効いたのかどうかは不明であるが、とにかく石垣までの往復チケットを手に入れた私は予定通り関空を発った。かなりの混雑を覚悟していたが、拍子が抜けるほどガラガラ状態で搭乗手続きをすませ、マイル登録(※)をする。

天候が心配された石垣島は晴天、真夏のような日差しが迎えてくれた。大きく息を吸って、空港バスへ向かう。いつものようにバックパックなので、荷物を待つこともない。離島桟橋北側のバスターミナルで降り、「まーさん道」の「八重山そば」で昼食を済ませ、荷物を持ったまま最初の目的地へ向かう。「野原三味線店」である。

御存知の方もおられるが、私はすでに三線を持っている。それなのになぜ三味線屋に行くのか?しかも荷物を持ったまま。第1の理由は、自分用ではない三線を買うためである。第2の理由は、将来手に入れたいと思う三線の音と価格を知るためである。そして真っ先に行ったのは、正月に行ったときに売り切れていて買えなかったからである。その甲斐あって、自分用ではない三線は幾つかある中から選ぶことが出来た。ケース・ツメ・予備の糸・予備のウマに消費税を入れて大体予算通りの48000円である。

目的がひとつ達成できて少し気がゆるんだのか、いつか買いたい三線の話になって、「こんな音がいい」と鳴らしているうちに、私が持っていた三線が手から離れなくなってしまっているのである。おまけに、野原さんは私の話を聞きながら、どんどん音を微調整していくではないか。「澄んでいて、力強くしかもやさしい八重山の歌に似合い、かつ遊び歌や早弾きにも耐える音」、ギターでいえば、「クラシックの繊細さが表現できて、ロックの激しさも伝えきれる、かつ人の心に染み込むブルーズを鳴らすこともできる音」、簡単にいえばかなり欲張りな音を求めていたにもかかわらず。

私はついにその三線から手を離すことが出来なかった。完全に予想外の出費である。野原さんはそんな私を思ってか少しは責任を感じてか、水牛の角のツメをおまけしてくれた。

財布を空にした私は、郵便局のキャッシュコーナーを経て宿へ向かった。沖縄の街の郵便局は、休日でも結構キャッシュコーナーを開けていてくれるので助かる。宿はインターネットで予約した「楽天屋」さんである。前回宿泊した「民宿石垣島」の隣りという立地で、両者の関係は「親子」である。「楽天屋」は素泊まりのみで、通常3000円、今回はハイシーズンで3500円という設定。

古い建物を、改装しているにもかかわらず、室内は清潔で風通しも良く、値段の割にはかなり広く感じる。板張りの床にベッドなので虫の心配も少なくてすみそうだ。私の泊まった部屋は、北側と東側に窓があって、両方開けると心地よい風が部屋を吹き抜けた。部屋の隅に置かれている観葉植物もうれしい。ただ網戸はなかった。

オーナー御夫妻はとても優しい方で、私が自然食品店に勤めていると言うと、さりげなく近所の穴場を教えてくれた。アヤパニモール(商店街の名)の乾物屋でかつお節を削ったあとに残った粉を格安で分けてくれるらしい。早速後で行ってみたが売り切れていた。

部屋で、心地よい風にあたりながら、ひとしきり三線を弾いて、いい気分になったところで、夕食に出かける。夜は民謡酒場「安里屋」に行く予定なので、近くで軽く済ませようと、ぶらぶら歩いていたら、「まーさん道」の少し手前に「ゆらてぃく」という店があった。沖縄料理の定番が数種類ついて1980円の設定である。沖縄料理は一般的に一皿の量が多いので、1〜2人くらいで食べようと思うとあまり種類を多く食べられない。なかなかいいかなと思って試してみることにする。素泊まりの気楽さである。

お腹が一杯になったところで、この旅の主たる目的のひとつ「安里屋」である。実は、私は安里勇さんのライブを聴いたことがない。密かにこの日を心待ちにしていたのだ。しかし、である。電話がかからないのだ。「そんな〜!」店の電話と携帯の両方にかわるがわるかけてみたが、誰も出てこない。宿へ戻ってまたかけてみたが、結局最後までかからなかった。不幸は突然やってくる。

(※)マイル登録:空の旅で事前にチケットを入手しているということは、正規料金かそれに近い価格で購入したことを意味する。そんな時は、マイル登録がおすすめである。あらかじめJALやANAのサイトでカードを作っておくと(無料)、搭乗手続き後に機械で登録できる。マイルが貯まると国内線のチケットなどと交換してくれる。飛行機の中などでカードの申込をすることも可能である。

下手をすれば、格安チケットの数倍の価格で購入するのだから、せめてものお楽しみである。なお、最近「大阪〜石垣間」のチケット交換マイルが15000マイルに引き下げられたことは、私にとってさらに嬉しい知らせとなった。1往復すれば約2000マイルが加算されるので、8回行けば「大阪〜石垣間」のチケットが手に入る。更に、私には関係ない話だが、航空会社提携のホテルやレストランを利用すれば更に加算されるマイルが増えるので上手に利用したい。

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