沖縄小浜島編01.01.03〜04


八重山を結ぶ高速船

うふだき荘

垣根は有ったり無かったり

はいむるぶし

細崎の砂浜

オーナー制のパイン畑

小浜民俗資料館

名物黒糖アイス

これにサヨリが付く

左が吉野さん

平田大一さんの詩集

2001年1月3日の朝、離島桟橋から高速船で小浜島を目指す。竹富島を横目に約30分の距離である。港に着いたら「うふだき荘」の車が来ていたので乗せてもらう。「毎日が宴会さ〜」の宿である。しかし少し様子が変だ。理由は宿に着いて判明した。予約が入っていなかったのだ。「いつ予約されました〜?」「10月の終わりです。」「それから電話もらいましたか?」「いいえ。」「それでね〜。」つまり念押しをしていなかったこちらに問題があったらしい。ただ、問題はおかあさんが黒板の下に私の名前を書きこんだ時に解決した。何事もなかったかのように、砂糖菓子とお茶が振舞われ「今日はどうする?」となった。恐るべきおおらかさである。

貸自転車屋に電話をかけてバイクを予約してくれて迎えの車で送ってもらう。「何時間にしますか?」「島をひとまわりするとどのくらいかかりますか?」「そうね、1時間くらいかな。」横から貸自転車屋のおとうさんが「1日借りてくれたら上等さ〜。」しかし、1時間でまわれるのに1日は長すぎる。「2〜3時間で帰ってきます。」「ならお名前は。」「小野です。」「乗ってみて〜。あ〜乗れるね〜。じゃあ、気をつけて。」免許証の確認もなしである。こんなんでいいのだろうか。

快晴の空にバイクは最高である。風がおいしい。広大な敷地に放し飼いにされている黒牛や馬を背に取り敢えず、はいむるぶしへと向かう。プライベートビーチを持つ巨大なリゾート施設である。ところがこのプライベートビーチには、誰でも入れるのだ。受付のおねえさんに「入ってもいいですか?」と聞くと「どうぞ〜。」と笑顔で答えてくれた。こちらもおおらかである。ビーチでは、日光浴をしている人のほかになんと泳いでる人もいた。

そこから西へ細崎へと向かう。西表島が望める最西端の浜である。着いてため息が出た。ここの景観は最高の部類に属する。ただ美しい砂浜のみがあり、海が透き通って沖のほうまで続いている。人口の施設は何もない。しばし時間を忘れる。我に返って北へと向かう。。

ふと目を止めた道端にうふだき荘のパイナップル畑があった。1株オーナー制のパイナップルが整然と並んでいる。浅田美代子さんの立て札もあった。そう、うふだき荘のおとうさんは、アイデアマンなのである。パイナップルの苗が育って実が熟する頃に、再び収穫に来てもらう。都合で来れない人には、宅急便で送ってくれる。

再び集落に入り、小浜民族資料館を訪ねる。声をかけても誰もいない。しばらくして隣接する民家からおかあさんが出てきてくれた。このおかあさんの私設資料館だったのである。いろいろ説明してくれて最後に資料館の向かいの畑を案内してくれた。手入れされた畑では糸芭蕉や藍、麻が育てられている。出来た芭蕉は沖縄本島に送っているとのことである。「手間がかかるでしょう?」と聞くと「芭蕉は使えるようになるまで2年かかるからね、でも好きだから。」と目を細めた。

あまりに暑いので、宿に帰って名物の手作り黒糖アイスをもらう。素朴な味だがおいしい。しばし涼を取って、大岳(うふだき)に登る。標高わずか99mだが、八重山諸島が一望にできる。やはり高いとことが好きなのか、われながらあきれる。

いい時間になってきたので、バイクを返しに行く。しばらく待って現れた、おとうさんは「3時間で3900円ね。」と言う。さっきは1時間1000円と言ったじゃないか、と思いながら値段表を見ると、「新車1時間1300円」と書いてある。抗議しても「新しいからね〜。」と言われるに決まっている。元々1日借りて欲しかったのだ。あきらめて宿に送ってもらう。

風呂に入って夕食の時間となる。夕食は豪快である。さあ食べましょう、と思ってからまだサヨリの煮物が出てきた。女性の胃袋にはややつらいかもしれない。何とか腹におさめてさあ宴会である。この頃よりおとうさんは全開となる。出てくる話は尽きることを知らない。キビ刈り援農塾の話、さとうきび畑で6600ボルトの電流を受け奇跡的によみがえった話、ハブに噛まれて血清もないのに氷入りバケツに足をつっこんで直した話、とにかくワイルドである。泡盛もどんどん進む。

しばらくして、友人の吉野さんがやってきて、三線を弾き島歌を聴かせてくれた。生で聴く「赤馬節」や「鷲ぬ鳥節」は渋くてすばらしかった。吉野さんが「もう遅いから。」と帰った後、しかし宴はまだまだ続く。私は2時でおいとましたが、4時まで飲んでいたそうである。

予想に反して翌朝は快調であった。大笑いしつづけたせいか、酒が残っていない。冷静に考えてみるとかなり飲んでいる。民宿代は5000円なのだが、3000円飲んで、2000円食べたとしたら、残らないではないか。ちょっと心配になってきたが、そんな心配をよそにおかあさんは自家製の砂糖菓子をお土産にもたせてくれた。

おとうさんがちょっと寂しそうに見える。息子さんの平田大一さんがいないせいだろうか。大一さんは「南島詩人」という詩集を出版していて、島に根付いて活動しているマルチタレントである。私は宿に張られていた「島は海によって道をさえぎられているのではない、海によってどこにでも続く道を与えられているのだ」という言葉に感銘を受けたのだが、最近彼の活動が注目を集めていて正月のイベントに引っ張りだこでなかなか島に戻ってこれないとのことだった。名残を惜しみながら、宿を後にする頃には雨になっていた。

「うふだき荘」
竹富町小浜52
TEL09808-5-3243

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