里山便り「音羽山から」01.11.25


音羽山の山頂を目指す

山頂から山科を臨む

クロモジ

タカノツメ

シロモジ

落ち葉の道を下る

コシアブラ

フユイチゴ

紅葉の林道を行く

ヤブムラサキ

2001年11月25日 晴れ

四囲の山々はすっかり色づき、穏やかに晴れ渡った暖かい晩秋のその日、私と同じマンションにお住まいのSさん父子と、我が家の妻と末子とで音羽山にハイキングに出かけました。Sさんのお子さん(Iちゃん)は幼稚園のお嬢さんで、家から歩くのは大変だろうと、音羽山の登り口まで車で行くことにします。

途中波切不動で水を頂き、音羽山山頂から流れ出る谷の入り口に車を止め出発です。谷川に沿った道を2、3度流れを渡りながら少し進み、尾根に上っていく道に入ることにしました。この登りの最初が急で、大人でも少し苦労する所です。Iちゃんにとってはこんな急な道は初めての経験、さぞかしびっくりされたことでしょう。お父さんにリードしていただき何とか通過。

その後も急なジグザグ道が続きます。辺りはクヌギ、アベマキ、コナラといった典型的な雑木林で、赤褐色の落ち葉を蹴散らすと、カサカサと乾いた心地よい音を立てます。どんぐり殻斗(蓋のこと)はたくさん落ちているのですが、肝心のどんぐりは既に小動物に運び去られたのでしょうほとんど見当たらず、あっても虫食いばかり。どんぐり拾いを楽しみにして来られたIちゃん少々物足りなそう。

やがて最初の鉄塔の下に出てきました。ここは伐採後相当時間が経過しているのか視界はあまり利きませんが、急な登りが続いた後ですから少し休んでいくことにしましょう。これから先は傾斜も緩くなり、まっすぐ登っていけます。2番目の鉄塔の下に出ると突然視界が開け、私たちの住むマンションも見えてきました。ここではたっぷり休憩することにします。本当は、登る途中にはあまり長く休まない方がいいのですが、十分に時間もあり、子供を主体にした遊びなのですから、歩くばかりでは嫌われてしまいます。

ゆっくり休憩したのでさあ出発。今度は頂上まで休まず行きましょう。風のない穏やかな日ですが、時折吹く風に、はらはらと枯葉が雪のように私たちの上に落ちてきます。Iちゃんは松ぼっくりを拾いながら、わが末子は木の棒を拾って、あちこち叩いたり投げたりしながらゆっくりと、それぞれのペースで登って行きました。

ソヨゴ、ヒサカキなどの照葉樹や、タカノツメ、コシアブラ、ネジキなどの落葉樹の混ざる林の中、落ち葉に埋まった道はとても気持ちのいいものです。やがて3本目の鉄塔が見えてくると、まもなく頂上。今日はまだ誰も登って来ていません。霞がかかったような空で眺めは今ひとつですが、山科方面から東山辺りまでは見渡すことができます。

時間は10時30分。お昼にはまだ少し早く、時間稼ぎに適当な木にロープを掛けてブランコを作り、子どもたちに乗ってもらうことにしました。わが末子はブランコに飽きると木登りを始め、私はその付き添いです。

そんなことをしているうちに適当に時間も過ぎ、数組の登山者もたどり着いて、頂上はにぎやかになってきました。そろそろお昼にしましょう。波切不動で頂いた水で湯を沸かし、即席味噌汁も作りました。遠く「ボー」という音が何度か聞こえ、「多分梅小路の蒸気機関車博物館から聞こえる汽笛の音でしょう」というSさんに私も納得。ここでもすっかり長居をしてしまいました。もう出発としましょう。

これからはほとんど登りのないコースです。東海自然歩道をしばらく北へ下り、途中から別の尾根道に入っていきました。ホオノキの大きな葉、シロモジやコシアブラの黄色い葉が地面を覆う緩やかで広々としたこの尾根道は、これからの季節、本当に素晴らしいコースになります。葉を落とした木々の梢越しには、琵琶湖方面が時折望まれるようになってきました。

名残の紅葉はウリカエデやクロモジ、タカノツメなど。サルトリイバラやヤブムラサキなどの木の実も彩を添えています。今日は途中で予定を変え、尾根をそのまま下りず、西側の谷へ下ることにしました。急な下り道で、Iちゃんはお父さんに手をつないでもらって下ります。谷に下りつくとなだらかな道となり、もう心配するところはありません。

やがて林道。日当たりのいい所に、フユイチゴがたくさん実っていたので少し頂いていきましょう。日陰のものと違って、とても甘くておいしく、わが末子は喜んで食べていました。

住宅地に近づくころ、川沿いの、たくさんのイロハカエデが赤く色づいていて、この秋一番の眺めか。しばしみんなで見取れていました。やがて住宅地に出、私の拓いた道をたどって東海自然歩道に合流。国道に架かる逢坂山への歩道橋を渡り、蝉丸神社を下ると京阪大谷駅です。この界隈で有名な料理店(しかしその食堂部のほう)で一休みしていくことにし、私だけビールを少し頂きました。ほろ酔い加減で電車に乗り帰宅。

小さな子供がいると、ゆっくり歩けてまた別の味わいのあるものです。少し休んでから、乗り捨ててきた車を取りにボツボツ歩いて出かけて行きました。音羽川沿いの紅葉(イロハカエデとオオモミジ)も美しく、それらを愛でながら坂道をのんびり歩むと、すっかり酔いも醒め、車にたどり着く頃には辺りはもう暗くなっていました。


里山便りに戻るメールを送る