里山便り「音羽山から」01.07.22


クリの実

コテングタケモドキ

ヘビキノコモドキ

音羽山

シロオニタケモドキ

キクバナイグチ

巨大なイグチ

コシダ

長等公園より

ニワタケ

クロタマゴテングタケ

ノリウツギ

ダム湖で

2001年7月22日 晴

梅雨も明け、名実ともに盛夏到来といった感の、フラフラしそうなほど暑いその日、昼前から音羽山へ出掛けることにしました。前々日は亀岡郊外の半国山へ登り、前日は鈴鹿山脈を流れる愛知川の沢歩き、そして今日は音羽山と三連チャンの山歩きです。今回は今までと方向を変え、まず音羽山の北にある相場山へ向うことにします。

地下足袋を履き、家からアスファルト道をひたひたと東へ10分余り、京阪大津線追分駅前からすぐ北の墓地内を通り抜けるとそこが登山口です。ここから稜線までの道は、2年余り前に私が廃道化していたものを復活させたもので、人通りが少なく草刈りは欠かせません。幸い今のところそれには及ばないようです。

登りついた稜線には送電線の巡視路があり、それを伝ってさらに進むと、やがて見晴らしのよい鉄塔の下へ出て来ます。谷を隔てて南側に目指す音羽山が大きく高くそびえ、なかなかの迫力です。この辺りから長等公園にかけての一帯には、夏から秋にかけたくさんのキノコたちに出会うことができます。今日はまだ少なく、コテングタケモドキ、ヘビキノコモドキ、シロオニタケモドキといったテングタケ科のキノコや、直径20cmもあるイグチ(たぶんホオベニシロアシイグチでは?)やキクバナイグチといったイグチ科のキノコたちが散見される程度です。

やがて相場山。大阪堂島の米相場を旗で大津に伝えたときの中継点だったとかで、それが山名の由来とのこと。この辺りで一番高い山で眺めが良く眼下に大津の街が・・・・・と思いきや、毎年延びる木の茂みで今日は背伸びをしても市街地は僅かしか見えず、あとは琵琶湖の湖面と空だけが。

休むまでもなく来た道を少し戻り、自然林の中を緩やかにたどって長等公園の山頂へ。今度はまともに大津の市街地が望まれ、対岸には近江富士と呼ばれる三上山も見ることができます。ただ、参議院選挙の街頭演説が、はっきり聞き分けられるほどの明瞭さで、響き渡って来るのにはいささか閉口しますが。

さて、ここから音羽山へ続く道が東海自然歩道で、今日はこの道を音羽山の山頂まで忠実にたどる予定です。途中逢坂山まではほとんど平坦な尾根道ですが、残念なことにこの下を名神高速道路が通っていて、両側の谷から耳障りな車の音がかなり大きく聞こえてきます。逢坂山の山頂を越えると今度は国道1号線からの音です。急な坂を下り(この下りでニワタケとクロタマゴテングタケを見つけました)、国道1号線をまたぐ歩道橋を渡ると道は再び山の中へ入り、と、急速に車の音が遠ざかってほっとします。

ところがこれからがまた大変で、急な階段が延々と続くのです。途中中休みや階段のない部分も結構あるのですが、急な階段の連続する部分の印象が強烈で、ほとんど階段であったかのような記憶が残ってしまいます。チーイーというニイニイゼミの鳴き声と、時々漂ってくるリョウブの花の甘い香りの中を黙々と登るのですが、風の途絶えた時は思考が停止しそうなほど暑く、普段めったに汗をかかない私ですら、さすがにこの時は汗が吹き出してきます。途中空腹を覚え、風が吹きあがる場所で昼食を摂りました。

しばし休んだ後再び歩き出し、やがて道が平坦になると電波塔のある所で、ここからは頂上まで緩やかな登りになるのです。それでも暑さはいっこうに和らぐことはなく、今日の目的の一つであるゴミ処分場内のダム湖で泳ぐことだけを楽しみに歩きつづけました。

今日の音羽山山頂からの眺めはまずまずで、比良山方面まで望むことができます。山頂の一角ではノリウツギの白い花が咲き始めていました。しかし木陰のない山頂では暑さをしのぐすべもなく、早々に立ち去り、東海自然歩道をさらに南へ向います。

ピークを二つ越えたところからゴミ処分場側の山林内へ入り、踏み跡をたどります。自然林の深い林の中はこの季節でも下草は少なく、労することなくダム湖にたどり着くことができました。ダム湖の水質は年々悪化していましたが、今春巨大な浄化装置が設置されたため、今では随分きれいになっています。昨年は泳ぐ気にもならなかったものですが、今年は抵抗なく入れそうです。沢が湖に注ぎこむ最上流部から湖畔に下り、着ているものは総て脱ぎ捨て湖水に入りました。水はやや温く心地よいとまではいきませんが、暑さに嫌気のさした体には何よりの癒しです。

湖水に体を浮かべると、何とも頼りなさ居心地の悪さを感じます。それもそのはず、素っ裸なので股間の物が水中をゆらゆらして、それが心もとなくさせているのです。魚に食いつかれやしないかという不安を感じるほどで、「水泳パンツをもって来たらよかった」とさえ思ったものです。それでも湖底に沈んだ葉を拾い上げたり泳いだりと繰り返す間に、次第にこの体感にも慣れ、沖の方にも泳いでゆくことが不安なくできるようになってきました。

そんなことをしている間に時間はまたたくまに過ぎ、気がつけば午後4時近くにもなっています。1時間余りもこうして遊んでいたのす。慌てて服を着て出発、あとはひたすら歩くのみ。京都国際ゴルフクラブを通り抜け舗装された車道を西へ進み、桜の馬場への分岐を北へ少し行ったところから、醍醐寺目指して谷を下ってゆきます。このルートは初めて通るコースで、内容は分かりません。

下り始めてすぐに道は途絶えテープのみがルートを示しています(山のわかりにくいコースでは、木の枝に赤や青のテープまたは紐を結びつけてコースの位置を表わします)。小滝が幾つもあってテープを頼りに巻きながらどんどん下ってゆくとやがて道もはっきりしてきて、水の量も増えてきました。ちょうど頃合いの滝壷(といっても深さは1mもないでしょう)を見つけて再び水浴び。今度は水も適度に冷たく爽快そのもので、ずっと浸かっていたいほどです。しかし先を急がねばなりません。

さらに下ると車道となり、ほどなく醍醐寺の裏門に出てきました。境内は通らずまっすぐ地下鉄醍醐駅へ向います。次第に暑さの加わる市街地を歩きつづけ、やがて「地下鉄」の標識を見つけました。もうすぐ午後6時。体はすっかり熱くなり、さっきの水の冷たさがもう恋しくなってきました。


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