白馬大雪渓・その1・02.08.22


ミヤマシシウド

チョウジギク

ソバナ

ミヤマアキノキリンソウ

白馬大雪渓

ハクサンフウロ

カンチコウゾリナ

トウヤクリンドウ

タカネシオガマ

白馬山荘と白馬岳

世間では夏休みがまもなく終わりを迎えようとしている8月22日(木)。またしても関西ツーリストの「さわやか信州号」という夜行バスに乗り、今回は白馬の大雪渓にチャレンジである。もちろんアイゼンは持っていない。23日(金)早朝、白馬駅前集合。今回は白馬のリトルアドベンチャーのツアーにお世話になる。このツアー会社は去年の鹿島槍ケ岳・爺が岳登山でお世話になっており、なんとなく安心感がある。受付カウンターへ行ってみると、なにやら長くしゃべり込んでいる人が1人。何事かと思っていたら、どうもバスで体調を崩したらしく、ツアーのキャンセルをしておられた。非常に残念だったことと思うが、体調不良の際の登山は危険なので已む無しということか。

受付の際に、いきなり荷物チェックが行われ、「不要な物は置いて行くように」とえらく厳しく言い渡された。特別余分なものを持ってきているわけではなかったのに、「減らせ減らせ」と言われかなり困った。すったもんだしているうちにようやくOKが出て、アイゼンをレンタルし出発となる。今回は、関西勢2名、関東勢6名。男性3名、女性5名。全て一人参加の方ばかりの計8名。それにガイドが2名と贅沢なパーティとなった。

猿倉の登山口まではタクシーに乗り、登山口午前8時の出発となる。前回の山歩き以来全くトレーニングせずであったので若干不安を抱きつつも、雪渓までの道のりは一般のハイカーがたくさんいるハイキング道であり、のんびり花々を愛でながらのウォーキングとなる。今回は丁度お花も美しい季節であることから、出発前に手作りの高山植物マップなるものをもらっていた。それを片手にのんびりハイキングである。

お天気はあまり芳しくないものの、早速にミヤマシシウド、チョウジギク、ソバナ、ミヤマアキノキリンソウなどが私達の目を充分に楽しませてくれる。途中見晴らしのよい所で美しい姿の山が見えた。一瞬白馬岳かと心踊ったが、それは小蓮華山であった。とてもよい展望で、ハイカー達はそれぞれに写真に収めていたようだ。猿倉から約1時間半、白馬尻小屋到着。そこから約20分、雪渓下に到着。そこでアイゼンの装備を整え、いざ大雪渓にチャレンジである。

雪渓は「落石注意」と言われていたが、どうして雪の上に岩が転がっているのか?そもそも不可思議であった。辺り一面雪ならばそんなもんあるはずないやんか!(って私の頭の中にはスキー場のイメージしかなかったのだ)。そういうんではなかったんですね、実際は。当然冬場は一面が雪に覆われているのだろうが、雪渓として残っているところ以外には、大きな岩がゴロゴロと転がっていて、それらが転がり落ちてきて雪の上にもドーンと居座っている。雪は当然溶けるし、その上は滑りやすいわけで、上に乗っているものの重力なんてなんとたわいもないことか。しかも、転がる際に全く音がしないから始末が悪い。気づいた時には石が当たったてた!ってことになるわけです。実際今年も落石による死亡事故が発生しており、注意してもしてもし足りないくらいなのだと思う。常に上は注意しておかねばならないし、なにより大事なのは自分が石を落さないこと。これは雪の上だけではない。たとえどんなに小さな石一つでも、勢いづいた力は恐ろしい。他の石を巻き込んでとんでもない大惨事を起こしかねない。自分の一歩一歩が自分にとっても他の人にとっても安全確保に繋がることになる。

初めてのアイゼン歩行にも緊張しつつ、前述のようなこともあり非常に慎重になりつつ、それでも雪上ハイクはなかなか爽快であった。あいにく歩行中はほとんどガスに覆われていてあたりの景色を楽しむことは出来なかったが、それでも時折見せる杓子岳の姿と、雪渓の外側一面に咲いているシナノキンバイやミヤマキンポウゲの黄色い花々が美しい。

およそ1時間半程の歩行の後、雪渓を外れ葱平へと出る。「葱平」は最初「ネギダイラ」かと思っていたのだが、地図をみると「ネブカ」と仮名がふってある。で「ネブカダイラ」だと思い込んでいたら、ガイドが「ネブカッピラ」と呼んでいた。地名はホント難しい。この「葱平」がまたいや〜な所で、結構な斜度がありながら、大きな岩場を登って行くような所なのだ。これもかなりの注意をしていないと足元が危うく、また石を落としかねない怖さもあり、雪渓よりもはるかにきつくゼイゼイしながら登る。

その頃にはすっかり雲の上に出てきていて、下に雲海を眺めながらも上は青空で眺めの良いことこの上なし。上の方から雪渓を眺めると、その端の部分に大きくクレバスが口を開けており、「あの中へ落ちたら一たまりもないなー!」ととても恐ろしく思う。そこへ追い討ちをかけるようにガイドが゛「あそこへ落ちたら遺体はみつかりません」などと言う。尤もだと思うものの、「こんな時にそんな事言って欲しくないなー!」と呟く。

もう疲れた!嫌だ!と思う頃、気がつくと辺り一面お花畑になっていた。正面上方には村営頂上宿舎、右手にはそこから白馬山荘への稜線、左手には杓子への稜線が広がり、涸沢カールの縮小版のような広々とした景色、しかもそれがすべてお花畑で覆われている。今までの疲れもどこかへ吹き飛んでしまったように、それらは花々を次から次へと見て歩く。今回の参加者の1人でとても高山植物が好きな人がいて、熱心に写真に収めている。その人が「これはねー」「あれはねー」と色々と教えてくれる。タカネシオガマ・ヨツバシオガマ・ハクサンフウロ・イワオウギ・イブキジャコウソウ・カンチコウゾリナ・タカネスイバ・イワギキョウにチシマギキョウ。里山遊々クラブのいつもの山歩きのように、なかなか前に進まない。ガイドさんが途中巻に入るくらい、私達の歩行速度が遅くなってしまった。

ようやく村営頂上宿舎へ14:20到着。10分ほど休憩して白馬山荘を目指す。ここでおじ様が1人ダウン気味となり、その方の荷物をガイドさんが持つ。そうでなくてもガイドさんの荷物は多い。私達の緊急用のグッズおよび予備の水なんかも持っているらしい。その上人の荷物まで・・・!ご苦労様です。そこから約30分、その道の廻り一帯はトウヤクリンドウの畑になっていた。その白とも黄色ともいえぬ、クリームイエローが周囲の緑に映え、それは美しい。「美しい!美しい!」とあまり何度も言ってたらガイドさんに笑われた。可笑しかったかなー???全員そろって無事本日の宿泊地白馬山荘到着。15:00丁度。

翌日の天候が怪しいことから、今日の内に白馬岳へ登っておこうということになり、山荘に荷物を置いて、そのまま空身で山頂を目指す。およそ15分、あっというまに頂上到着。標高2932.2m、しかし残念なことに一面ガスの中。な〜んにも見えない。記念撮影だけして、ずぐに山荘へ戻る。16:00山荘着。山荘の標高2832m、本日行動時間8時間。

白馬山荘は定員1500人もの大山荘でびっくり。また泊まった棟が合宿所のような作り。畳2畳の二人部屋がずーっと廊下を挟んで続いている。こんな部屋は初めて見たので驚いた。お水事情はよく、ちっとも不自由しない。それどころか、今回の驚きは、山頂近くに水洗トイレがあったこと。勿論下界のものとは違うのだが、くさくなくてとても良かった。

8月といえども、夜の冷え込みは侮れない。長袖のフリースを着てもなお寒い。ガスの合間にも星が眺められるか?と外に出てみても、じっとしてはいられない。明日のお天気はあてになりそうもないが、とりあえず今日一日の無事を喜び、雪渓とお花畑を思い出しながら就寝。


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