「初夏の芦生」03.06.15.


カキノハグサ

ササユリ

オオバアサガラ

中ノツボの滝の下で

トチノキの大木

食事の後で

午前7時30分にJR京都駅前に集合し、2台の車に分乗して一路美山町芦生を目指す。

里山クラブのハイキングも、当初から比べると随分の奥地まで進出することになったものだ。身近な山もいいが、非日常的な自然景観に惹かれるのは当然のことで、そういう意味でも原生林の芦生は魅力ある所だ。その芦生に出掛けて原生林の中を歩くということで、梅雨の最中に関わらず、早朝から8名の参加があった。

大阪方面では雨が残っていたらしいが、京都は昨夜遅くから雨は止んでいる。「梅雨前線が南にあるから北へ行くほど天気がいい」という予想を裏付けるかのように、芦生へ近づくほどに空が明るくなってきた。

須後の芦生入口にある駐車場に車を止め、長靴持参の方はここから長靴にはいていただき午前9時35分出発。長靴で山歩きするのは初めてという方ばかりで、長靴を持参されなかった方には『渓流足袋』をザックに入れていただき、櫃倉谷沿いの林道を溯って行く。

ところが道の両側には花や果実など次々に現れてくるので、この会の毎度の事ながら、これを説明し五感で味わっていただいていると、今回もなかなか前へ進まない。ただ今日は行けるところまで行って、同じコースを引き返すだけの気楽なハイキングであるから、時間がかかりすぎてもあまり気にする必要のないのはありがたい。

初夏には白い花がよく目に付く。ヤマボウシ、オオバアサガラ、エゴノキ、ウツギ、ツルアジサイ、サルナシなどは豪快に花を付けているので、遠くからでもよく分かる。また花ではないがマタタビの白くなった葉も負けずに目立つ。低木や草本の花としては、ヤマツツジ、コアジサイ、ササユリ、ミヤマヨメナ、カキノハグサ(これは初めて見る花で、参加者が見つけられた)、ギンリョウソウなど。果実ではクマシデ、アカシデ、キブシ、サワグルミ、ニワトコ、ヤマグワ(これは少し食べられるものもあった)などなど、あまりに多すぎて忘れてしまったものもたくさんある。参加者曰く「これだけ教えてもらっても、覚えているのは一つか二つなんでしょうね。」

野鳥の囀や、カジカガエルの鳴き声が途絶えることなく流れてくる。
 
やがて林道の終点11時15分着。対岸の歩道へ移る渡渉点を探してしばしもたつくが、流れを渡って歩道に取り付き峠に登りつくと、いよいよ向こう側は原生林の中である。少し下ったところが中ノツボ谷で、本流との出合は広い平坦地となっており、とても谷底とは思えない。今日はこの谷を少し奥に入り、谷の狭まったところにある滝まで見物に立ち寄る事にした。滝つぼの下で休憩、ついでに長靴ではない方に渓流足袋に履き替えていただく。

本流沿いの歩道に戻り、これより原生林内を緩やかに流れる櫃倉谷を、右へ左へ幾度も渡りながら溯って行く。トチノキやサワグルミそして様々なカエデ類が生い立つ穏やかな流れ沿いの道は、さながら散歩しているかのよう。

坂谷出合を過ぎ、この谷唯一の滝場を巻き登ったところで引き返す事にして昼食にする。食後は皆さん思い思いに過ごされ、さらに奥まで歩いていかれる方、渓流足袋で谷の中を上り下りされる方など様々。

1時間ほどゆっくりとしていただき、13時30分帰路に就くことにした。

復路も特別急ぐ必要もないので、周囲の樹木や岩や流れなどをゆっくりと味わいながら歩く。ただ渓流足袋の方が、水の中をジャブジャブ楽しそうに歩いておられたのは印象的であった。

中ノツボ出合まで戻り、渓流足袋組の方にはそのまま流れの中を歩いてはいかがかと勧め、長靴組と別れて谷伝いに歩いていただいた。峠を越えて林道に戻り待つこと数分、渓流足袋組と合流。(ここで私だけ水浴びをした。また一段と水が緩んできた事を体感する。)

帰りの林道歩きも苦痛になるまでもなく、往路と変わらず路傍の草木や頭上の木々など遠く近くの自然を楽しみながら歩き続け、やがて駐車場に帰り着く。15時50分。

終日青空が広がることはなかったが、それ故暑くもならずしかし寒くもなく、また雨に遭うこともなく、この季節としてはとても恵まれた山旅であり、「花の芦生」とさえ言えるほど豊かな花に出会えた内容の濃い一日であったと思う。

芦生の帰路、道路沿いでクワの実採りをした。ついでに傍にあったビックリグミ(ダイオウグミともいうらしい)も頂く。エビガライチゴの実もあったがこれはあまり美味しいというほどのものではない。「五感を通して自然を感じる」のがこの会のモットーであれば、最後までこの目標追及を実践したような一日であった。

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