「愛知川沢遊び」02.08.04


F家沢遊び組

岩場を行くよりは泳ぐ方が楽

それ泳げ、やれ泳げ

あーぁ、濡れちゃったよ

お父さんは滝に挑戦

そして、沈没

しかし子供は元気な笑顔

(注)上記の説明は必ずしも右の文章と一致しているわけではありません。

2002年8月4日 曇り時々晴れ

今回の里山クラブは、当日都合の悪い方や、体調の良くない方など不参加の方が多く、結局初参加のF家一家だけとなった。明け方雨が降り、水温や水量などが気がかりであったが、とりあえず目的地目指して出発とする。鈴鹿の愛知川は永源寺ダムの上で茶屋川と神崎川の二つに分かれる。

茶屋川は北の御池岳・藤原岳といった石灰岩の山から流れ下り、一方南の神崎川は御在所岳・雨乞岳といった花崗岩の山から流れ下る。川歩きと川下りが楽しめるのは神崎川で、今日はこの神崎川を天狗滝まで往復する予定である。林道途中の神崎川下り口で車を止めF家一家を待つ。

9時半過ぎに合流、川歩き用の身支度をして、一旦河原に下りた後、流れを渡って発電用取水ダムを巻き上がり、再び河原に下りる。ここでF 家は二手に別れ、お母さんと小さいお子さんはこの辺りの川で水遊び、お父さんと中学2年生の娘さん、小学5年生の息子さん、それと私(福本)は上流へ向かう。皆さん水泳が達者とのこと、安心。

この川歩きは泳ぐ箇所が多く、水泳ができることが必須条件であり、殊に上りは流れに逆らって泳ぐわけであるからパワーも必要になる。分かれてすぐに滝と淵の連続。滝といっても小さなものばかりで越えるのは容易だが、水量が多くまた淵も深くて大きいのでは迫力がある。

青く(少し緑っぽく見える)澄み切った水を湛える淵と白い花崗岩とのコントラスト、流れに刻まれた岩の造詣はまことにすばらしく感嘆に値する。関西の沢をたくさん登ったが、これほど美しいところは他に知らない。ここへは毎年2〜3度やってくるが、何度訪れても「すばらしい」と感じ、その思いは減ずることがない。

さてこの連続する淵で早くも泳ぎが待っている。泳がず越える方法もあるが、高巻きを余儀なくされかえって危険であり、また時間もかかってしまう。水は思ったより温かく、冷たさがかえって気持ちいい。暑い街で仕事をしている時、この冷たさを思い出しては「また行くからそれまでは耐えよう」と言い聞かせている。先週よりは水量が少なくなり淵を泳ぎ渡るのはそれほど苦労ではなかった。

いくつかの淵を越えると、岩の累々とする河原がかなり長く続く。これがこのコースの難点ではあるが、他にも目を向けると多少は気が紛れる。両岸の樹木に注目すると、この辺りに生える松がアカマツだけではなく、五葉のゴヨウマツもたくさん生えていることに気づく。またアスナロの別名があるヒノキに似たヒバも多い。これらは京都周辺ではなかなか見られない樹だ。

たくさんの小鳥が止まっているところに出会い、眺めるとヒガラのようである。そこへコゲラ(日本で一番小さなキツツキ)が飛んできて、すぐ近くの枝でコツコツ啄ばみ始めた。これほど近くで見かけたことはなく、肉眼でバードウオッチングが楽しめた。

河原歩きを30分もしただろうか、再び谷が狭まり、淵が連続してくる。ここまで上ってくるとさっきより水は冷たい。3つばかり泳がねば通過が困難な淵が出、これを越えると目の前に、20mほどの高さの岩壁に取り囲まれ、満々と水を湛えた巨大な滝壷が出現する。目的の天狗滝だ。

黒々とした恐ろしいほど深い淵、その奥に落下する天狗滝。高さ7mとのことだが、周囲の造作や滝壷が余りに大きいので、小さく感じられる。果敢にもお父さんはこの滝壷を泳ぎ渡り滝登りに挑まれる。水流に逆らって何とか滝の下までたどり着かれたはいいが、落下する滝に阻まれなかなか滝の裏にある岩場までたどり着けないでおられる。しかし幾度かの挑戦でこれを突破、見事滝の裏に出られて後は簡単に滝の落口へ登られた。私達はこれを眺めていたが、とても挑戦する勇気はなく、右岸の岩壁につけられた高巻きルートをロープにつかまって越えて落口へ。

12時少し前、ここで昼食。天狗滝と格闘されたお父さんはいかにも寒そう。こんなときはコンロを持ってきて熱いラーメンを作れば最高なのだが、残念ながら冷たいお握りだけ。そそくさと昼食を済ませ、休む間もなく川下りの始まり(今日は曇っているので長く休むと冷え切ってしまう)。まずは天狗滝の下降。滝のすぐ右側の段々になった岩を下っていったん滝の裏側に入る。

それから落下する滝を潜り抜けるように滝壷に飛び込む。滝の裏側というのはなかなか幻想的だが、寒くてゆっくりはできない。この滝を上から飛び込む猛者もいるが、わたしにはとてもその真似はできない。さて滝壷を泳ぎ渡ってさらに続く淵を次々泳ぎ下る。お父さんは寒さに震えておられ、できるだけ水に入らないようにされていたが、お子さん方は元気が違う。一つ一つ丹念に泳いで楽しんでおられた。

河原の続くところまで下ってきたが、流れを忠実にたどれば結構淀みがある。また岩の間を流れる流れに身を任せると、体が流されて面白い。娘さんは一つ一つ味わうようにゆっくり下りてこられる。息子さんはさすが男の子、チャレンジ精神が旺盛で積極的だ。

こういうワイルドな自然の中で遊んでいる子ども達の顔は、いつも素晴らしく輝いて見える。自然の中では素直になれ(大人も)、本当に子供らしくふるまえるのだろう。

岩棚に花束が置かれビールが添えられていた。おそらく7月に遭難死された方のものだろう。増水した川に流されたとのこと、本当に増水した川は恐ろしい。

再び淵が連続するところへ戻ってきた。ここではちょっとしたスリルを味わうことがでる。また滑り台になったようなところもあって一番楽しい場所だ。もう冷たさは余り感じない。やがてお母さんの待つ出発地へ。午後2時半ごろ。「お母さん、1日小さなお子様のお守りご苦労様でした。」

今日は道中50人ほどの人に出会った。そのほとんどが泳いで川を上り下りしている。数年前に初めてここを訪れたときは、泳いでいたのは私のほかは稀であったのだが。ここ数年の間にこの楽しみが知れ渡ったのか、たいそうな人気である。その初めてここを泳ぎながら下ったときは、泳ぐ方が安全かつ時間が短縮できたからであって、泳ぐこと自体が目的ではなかった。

しかしそのときの感激、余りの面白さにすっかり病み付きになってしまったものだ。川下りの面白さ、楽しさは筆舌では尽くしがたい。ましてやわたしの稚拙な文章では。しかし、底まで見える淵に身を浮かせる快感、水圧の感触、流れに運ばれる感覚など、何をとってもすばらしく、一度体験すればきっと虜になってしまうに違いない。

翌日偶然にもお父さんに出会った。いつもながら参加者の感想が気になり、お子さん方の感想を尋ねてみた。「とても楽しかった」とのことでほっとした。

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