あっという間に頂上に着いた 反対方向には大文字山が見える 左下がフキノトウ フキノトウの天ぷら ニワトコの天ぷら 椿の花の天ぷら 福本さんお気に入りの道 眺めの良い場所でくつろぐ 鉄塔から琵琶湖を望む |
2002年3月9日・晴れ JR山科駅前より小山までバスに乗る。今回の里山クラブ冬枯れハイキングは、昨年1年連載した音羽山まで皆さんに足を運んでいただいた。参加者は連続参加記録更新中の吉岡さん、自然館の三田村さん、それから初参加のIさんの3名で、山を、自然をゆっくり楽しむにはちょうどいい人数。 Iさんはいつも古道を歩いておられるらしく、歴史についての質問が飛ぶが、その方は知識不足であまり答えられない。辛うじて百人一首の話になると、今覚えている最中なので、上の句が出れば下の句が出、話が繋がっていく。 バスを降り、音羽山の麓、小山を出発したのが9時40分。新旧の住宅地が入り交ざった中に、少し農地も残っていて、そのあぜ道で摘み菜をすることにした。ヨメナ、ナズナ、カラスノエンドウ、ヨモギ、それからフキのとうも皆に当たるだけの量は採れた。 今日は今年初めて山菜の天ぷらをする予定。ノビルもあったがその料理は予定にないので採らない。またオオイヌノフグリ、ホトケノザも咲き始めている。まずまずの収量で摘み菜はこれで打ち切り、先へ進むことにする。 住宅地を抜け山に入ると、ウグイスの声が出迎えてくれる。今年初めて聞く声だ。メジロも遠くの枝を渡っていく。今日のハイキングでは(運がよければ)バードウオッチングもできるかもと、メニューに入れていたので幸先がいい。 山の中は涼しく、歩くにはちょうどいい気温だ。道路は舗装されているが車はほとんど通らず、眼下に渓流を見下ろし道端のヤマネコノメソウの花を眺め、果てはマメヅタ、シシガシラ、リョウメンシダ、ジュウモンジシダといったシダ類を見出しながら歩くと、苦にならない。 ヤブツバキも今年はたくさん花をつけている。花を数個天ぷら用に頂く。やがて波切不動、ここで水を汲む。傍のニワトコの新芽がいかにもおいしそうな大きさに伸びている。これも目的のひとつなので当然頂く。 ここからほどなく、音羽川を渡るミニ吊橋があり、音羽山東尾根に上る送電線の鉄塔巡視路が付けられている。今日はこの道をたどって山頂へ登ることにする。吊橋を渡るとすぐ急斜面の急登が始まり、初参加のIさんは「崖だ」とおっしゃって恐々登って行かれる。 この急登も最初の鉄塔まで、そこからは円やかな尾根を緩やかに登ってゆく。最初の鉄塔で少し休み、それからはIさんにトップを歩いていただく。Iさんの意外と足の早いこと、着いて行くのが精一杯なほどの健脚である。 それにしても冬枯れの雑木林の道は気持ちがいい。足早のIさんに引っ張られ、山頂には予定より早めの12時少し前に到着となった。今日の音羽山からの眺望は霞がかかり、あまり良いとはいえない。愛宕山や比良の蓬莱山が辛うじて見える程度、しかし空がきれいに晴れ琵琶湖が青くとても美しい。 山頂隅の平坦地に荷を下ろし、昼食の支度に取り掛かる。コンロに火を点け、まずは味噌汁から。三田村さん持参の野菜で実だくさんの味噌汁が出来上がると、続いて天ぷら。 フキのとうは二つに裂き、よく揚げても苦みは残るが春一番のほろ苦さ。ニワトコは生だと特有の変な臭いがするものの、揚げるとまったく消え、噛むとまろやかな旨みが滲み出す。天ぷらによく合う山菜だが、食べ過ぎると下痢をするらしい。ツバキの花弁は色合いが美しいが風味に乏しく、目で楽しむだけだ。 吉岡さん差し入れの、沖縄土産の泡盛もこういう処で呑むと最高に美味しい。食事をしながら、今までに行ったハイキングの話や百人一首の歌のことなど、話は絶えることなく続き、小鳥たちは恐れをなしてか近寄ってこないので、バードウオッチングどころではない。 遠くで聞こえるのはヤマガラかシジュウガラの鳴声、姿を見かけるのはあのけたたましい声で鳴くヒヨドリだけ。2時間ほど休んで出発することにする。いつもながらの里山クラブらしい昼食で(ゆっくり過ぎるほどゆっくりという意味で)、絶え間なく見えていた人影もいつしか消え、今は私達だけとなっていた。 山頂からしばらくの東海自然歩道は、広々とした正にハイキングコースという道だが、途中から右へ別れて入った道は細々と、しかし柔らかに落ち葉で覆われた心に適う道。いつも里山便りで書いていたように音羽山で一番気に入っている道である。参加者も足に伝わる柔らかな感触に満足されているようだ。 どんどん下り送電線の鉄塔下で休憩とする。眼下に琵琶湖と大津の街が見下ろせ、暖かい日差しの下その展望に浸っていると、ついつい休みが長くなる。重い腰を上げてさらに下り、ヒノキの植林された谷に入ると間もなく逢坂1丁目、片原町へ出る。谷底に張り付いたようにひっそりとした住宅地だ。 ここで地元の人に「首塚」なるものの説明を受ける。その昔逢坂の関の、関所破りの人がここで処刑さ(首をはねら)れたらしいとか。首を洗った井戸もある。「夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ」、まったく歌のとおりだと感じ入った。少し山を越えて東海自然歩道に合流、国道1号線に架かる歩道橋を渡ると、間もなく蝉丸神社に着く。 神社の鳥居の横に句碑を見出す。「これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも あふ坂の関」最後も百人一首であった。最終地、京阪大谷駅はすぐそこである。 |