紅葉と木の実草の実を求めて01.12.01.


トキリマメ

ゲンノウショウコ

シジミチョウの種類

ハダカホウズキ

スギエダタケ

ムラサキシキブ

サルトリイバラ

すじを上に向け金槌で割る

うまくいけばこの通り

爪楊枝などでほじくり出す

2001年12月1日  晴れ時々曇り

JR高槻駅9時11分発の川久保行きバスに乗る。今日も天候に恵まれ晴れて暖かい。里山遊々クラブ今年最後のハイキングは、「紅葉と木の実草の実を求めて」の里山歩きです。バスは、成合を過ぎると坂道を登り始め、両側に採石場が現れてきます。長年同じところへ通っていると、山がどんどん削られていくのがわかります。この道路の横に川があって、尾根の上のようところを流れているのですが、よく見ると、かつて谷底であったところが、両側の山が削られ、掘り取られたことにより、今はではこのようになってしまったということが解るのです。恐るべき破壊です。道路やダムを新しく作ることによる自然破壊は、よく知られるところですが、それらの工事用資材を作るために、新たな自然破壊がなされていることについては、あまり問題にはされていないようです。

バスが峠を越えると山間の小集落川久保に到着です。これから、道路を少し歩いて山田へ続く歩道へ入り、採石場を横切り、さらに山田を縫うように付けられた農道を、自然を観察しながら通っていくことにしましょう。採石場を通過するときには、身も心も拒否反応を示しましたが、それ以外は林縁をたどる楽しいコースです。

ハイキングコースとは全く縁のないところで、地元の人以外に逢う人はありません。林縁は、林の中と異なり植物相が豊富です。草刈により常に攪乱され、そういう環境に適した植物が生えています。つる植物も多く、「そで植物」と呼ばれ、木に絡み付いて林内の乾燥を防ぐという役割を果たしています。クズ、アケビ、フジ、などはその典型です。さて、今日はいつもよりもゆっくりとすることができます。夕方6時から里山遊々クラブの忘年会を予定していて、早く下りすぎても時間を持て余してしまうからです。ですからここはじっくりと自然を観察しながら行きましょう。

衣服につく草の種は、センダングサ、イノコヅチ、キンミズヒキ、チヂミザサなど。これらはどのような構造をしていて衣服に着くのか?虫眼鏡やルーペで観察します。花が盛りなのはビワとチャ(茶)。共に栽培種ですが、チャは野生化しています。名残の花をつけているのはノコンギク、キツネノマゴ、ダイコンソウなど。果実や種子は多彩です。

赤く目立っているのは、カマツカ、コバノガマズミ(以上2種は少し味見もしました)、クサギ、ゴンズイ、コマユミ(ニシキギのように翼を少し付けている枝もあります)、サルトリイバラ、トキリマメ、ヒヨドリジョウゴ、ハダカホウズキなど。黒いものではヒサカキ、イヌツゲ、ナツハゼ(これも名残の実を味見しました) スイカズラ、アオツヅラフジなど。ムラサキシキブ、ヤブムラサキは紫色をした気品のある美しい実をつけていますが、紫色の実は、自然の中にはあまりないようです。

また、羽毛のような毛を付けたセンニンソウの種、裂開したゲンノショウコの果実もとても面白い形をしています。その他あまりに多くて忘れてしまうほどです。果実ではありませんが、ヤマノイモのムカゴは、ここでも私達の獲物になってしまいました。

こういう林縁を通る歩道や農道は、これからの季節楽しいハイキングの場を提供してくれます。しかし、身近ゆえに開発されてしまったり、耕作が放棄されて荒れてしまったり、残っていても舗装されたりして、この辺りにはもうわずかしか残されていません。残念な事です。農道が終わる辺りから、歩道を雑木林の中に入っていくことにしました。

コナラ、クヌギ、アベマキといった落葉樹の生い茂る雑木林は、里山の原点で、下草のまばらな林の中の道は、歩いて実に心地よいものです。落葉をガサガサ踏みながら歩いて行くと、周囲からおびただしい数の小さな黄褐色をした「ガ」が舞い上がりました。名や理由はわかりませんが、さながら童話の世界へ彷徨入ったみたいで、なんとも幻想的な光景です。

昼食予定地まではまだしばらく、ここらで小休止をすることにしましょう。ここまでわずか2kmほどの距離を、2時間半ほどかかって来たということは、なんとゆっくりしたペースではないでしょうか。自然館さんからの差し入れのクッキーはとろけるほど美味しく、空腹を感じ始めた私には正に救いの糧。これでしばらくはもちそうです。

足元に溜まった落葉を取り除くと、半ば腐り始めた葉の下からキノコの本体である菌糸が現れ、落葉を分解していることが解ります。キノコがなければ、森中植物の遺体で歩くこともできなくなるでしょう。小休止の予定がすっかり長くなってしまいました。さあ先へ進みましょう。

壊れた炭焼き窯を覗き、小さな峠を越えると一旦舗装された林道へ出てきます。これを少し上ると谷沿いに歩道が分かれ、今日はこちらへ入っていくことにしましょう。谷の中は、手入れのされていない人工林(杉林)で、暗褐色一色の殺風景な林床が続きます。たまに緑色のものがあるとアオキかフユイチゴ。フユイチゴにはわずかに実もついていますが、日当たりが悪くて美味しくはありません。地上に落ちた杉の枝には、その名のとおりのスギエダタケが少し生えていました。これはお昼の味噌汁用に頂くことにしましょう。

やがて谷も終わりに近づくと、今日唯一の登りらしい登りが始まります。尾根に上がり、きれいに下刈りされた松林を通り抜け、登りついた稜線には林道が通っていました。登ってきた反対側の視界が開け、淀川をはさんで八幡市から枚方市方面が見渡せます。林道を終点まで歩くと、送電線の鉄塔があり、その下に眺めの良い草原が広がっています。昼食はここで摂ることにしましょう。

湯を沸かして味噌汁を作っている間、前回のキノコ採りハイクで拾ったオニグルミを割って食べることにしました。西洋グルミと違ってオニグルミは中身の入り方が違っているので、普通に割ったのでは中身が出てきません。ここは少し技術の要るところです。20個ほど割っても食べられる部分はわずか。みんなで少しずつ分け合い、その淡白ながらコクのある旨みを味わいました(このクルミは、吉岡さんが拾って洗い、乾かして持ってきてくださったものです)。

そうこうしている間に味噌汁もできあがり、やっと遅めの昼食、ここでもゆっくり休みました。時刻も3時半となったのでボツボツ出発することにしましょう。この道は太閤道と呼ばれ、その昔、羽柴秀吉が明智光秀を討つため天王山に向かって通ったとか。普通はハイカーも多いのですが、この時間になるともう出会う人もめったにありません。途中展望のよいところがあって少し寄り道をしただけで、あとはまっすぐ歩き、やがて金竜寺跡に出てきました。

境内跡には数本のイロハカエデがあって、傾いた陽が真っ赤に色づいたその葉に当り、下から見上げると透けるように美しい、そんな光景の中に予期せず飛び込んだ私達は、そのあまりの美しさに揃って感嘆の声を上げてしまったものでした。時間はまだある。そこでこの紅葉を観賞するため、お茶を沸かして休むことにしました。それにしてもここのイロハカエデの葉の、何と小さく可愛いことか。陽がさらに傾くとあの透明感もわずかとなり、そろそろ薄暗くなってきました。さあ出発としましょうか。

参道を下るといつしか里に出、バス停まではもうわずか。足元にムクノキの実が落ちていて、その半ば乾いた実を噛むと、ねっとりとした甘い果肉が出てきます。「干しブドウのよう」という感想。バス停に着くとすぐにバスが到着、私達は里山から忘年会場へと、その遊びの場を移すことにしました。

●引率の福本さんから文章をいただきました。

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