初級沢と川泳ぎ01.08.04.


四国の河童いざ参上!

沢登りにシュノーケリング?

あっという間に下半身が水の中

恐怖の二の滝

再び河童見参!

魚!魚!あれっ?みんなどこ行った?

左手に見えますのは一の滝です

シモツケ

チチタケ

御無事で何よりでした

その週は、連日体温を超える最高気温が続き、この日、8月4日の川泳ぎを待ち遠しいほどの思いで過ごしたものです。その当日は、川泳ぎにふさわしく、朝からうんざりするような暑さで、午前8時にJR山科駅前に集合、予定どおりに出発となりました。今回の参加者は、昨年参加の隅田さんと、今年の里山遊々クラブハイキング完全参加更新中の吉岡さん、それと私(福本)の3名です。

車に乗り予定の9時30分には朽木村生杉のブナ原生林入口に到着です。今年からここにゲートが設けられ、芦生入口の地蔵峠まで約30分歩かなければならなくなりましたが、この30分のお陰で芦生への入山者は随分減ったように思えます。本当に入山したい人だけの芦生となれば、こんな喜ばしいことはありません。

さて、このゲート前で車を降り、身支度を終えた私達は、すぐに地蔵峠目指して歩き始めました。殺風景な林道歩きですが、車に遇う事がないのが救いで、程よい足慣らしにはなります。林道脇にミズメの樹がたくさんあり、小枝の皮を爪で剥いで皆さんに匂っていただきました。サロメチールそっくりの香りがプンプンします。いつもながら不思議でしかたがありません。

一緒に山へ出掛ける機会を重ねると、共通の話題が飛躍的に増え、この単調な林道歩きも「あの時のあの山ではこんな事があったね」という話などをして、いつの間にか地蔵峠についてしまいました。峠にあるゲートを越え、一歩芦生側へ足を踏み入れるとそこは原生林。神秘の香りがします。ミズナラ、ブナ、トチと数百年の時を染み込ませた木々の合間を下ると、道は平坦となり、辺りは人工林に変ってきました。それでもヤマアジサイなどの潅木や、イノデの仲間のシダが生茂る明るい林床は嫌味が全くなく、歩いていて気持ちが安らぐのを感じます。

途中小さな社の中山神社で、道中の無事を祈り、上谷に架かる丸木橋を渡ると再び林道へ出てきます。しかし、車の通らない林道は広いハイキングコースのようなもので、長治谷の作業所前を過ぎ深い原生林の中に入ると、道路を歩いているという気さえ全くしなくなってくるものです。下谷出合までやって来て林道と分かれ、由良川本流を下る歩道へと入ってゆくことにします。最初は人工林ですが間もなく原生林となり、ミズナラ、トチ、カツラ、ブナの巨樹が空いっぱいに枝を展げたその下を、眼下に優しい流れを眺め、足元に時折現われるウバユリ、クサアジサイ、シモツケなどの花を愛で、やがて谷が深まる辺りから流れへ降りて行くことにしました。

これからが目的の川下りです。さあ渓流足袋に履き替えてと・・・・、しかし足袋が無いっ!車に忘れてきてしまったのです。一瞬夢ではと思ったほどですが、全くの現実であることを納得し、2人の顔を交互に見やりながら呆然としてしまいました。様々のことが頭の中を瞬時に駆け巡ります。「取りに帰れば往復3時間」「渓流足袋なしにあの滝は下れるだろうか」「川下りをしなくても今日の目的を達する方法はあるだろうか」等など。

幸い自分用の足袋は持っていたので、これをキャラバンシューズの隅田さんに、スニーカーの吉岡さんには靴の上から靴下を(隅田さんの履き替え用でした)履いていただき滑り止めとし、私も地下足袋の上から靴下を履くことにし、それぞれ身支度にかかりました。

靴の上から白い靴下を履き、ザックの荷はすべて二重のゴミ袋の中に入れ、各々準備完了。この間私は謝ることしきり。見れば吉岡さんはシュノーケルとゴーグル姿、浮かぶことは出来ても顔を上げて泳げないからだとか。何はともあれとにかく尋常ではない格好で出発です。

渓流足袋までとはいかないまでも、靴下でもある程度滑り止めになります。これなら何とか大丈夫かと思いながら、原生林の中を緩やかに流れる由良川の、心地よい冷たさの流れに足を浸し、石を跳び、岩を伝い、流れを渉り、川下りは始まりました。

すぐに淵が現われ、早速水に入って泳ぐことにします。この冷たさ、この爽快感。暑さは一瞬にして吹っ飛んでしまいます。これからは淵が出てくる度に、これを泳いで下るのです。30分ほどで岩谷の出合。この辺りからの由良川は、深い渓谷となって淵を連ね、岩壁がそそり立ってきます。そして流れの創り出す岩の造形は、由良川源流の中で最も美しい所です。

しばらく下ると、今日一番の難所である3mばかりの滝の上へ出てきました。高さこそありませんが、両側には岩壁がそそり立ち、下にはおどろおどろした深い淵があって気味が悪いほどです。ここは後ろ向きに岩を伝って下り、途中で足場がなくなるとそこから淵に飛び込み、泳いで通過します。少しスリルを味わえるところです。水は清く澄み切り、魚もたくさん泳いでいて、シュノーケルにゴーグルの吉岡さんは満足のようでした。

その後も岩壁の下に時々現われる淵を次々に泳ぎ渡り、やがて二の滝へ。これは2段になった滝の中ほどを、流れを横切って下るのですが、水流に押されるため、その水圧に耐えなければなりません。この滝の下にも大きな淵があるので、滝を下りるとまた泳ぎが待っています。この辺りから、谷は流れに深く刻まれた変化のある川床となり、淵も頻繁に出てくるようになりました。水の中に入ることがが多くなると、体も冷えきり(お2人はそうでもないようでした)、歯がガチガチいうほどです。

そしてやっと目的地の一の滝。ここは細引き(細いザイル)を使って滝の横を下り、最後はまたもや淵にドボン。滝の下では20mほどのすだれを懸けたような滝を落とすツボ谷が右から出合い、なかなかの景観なのですが、残念な事に陽が当らず寒くてたまらないので、滝を登り直して陽の当る岩の上で昼食としました。街では日陰を探すはずが、ここでは陽の当る所を捜して休む、まさに別世界です。時刻は午後1時過ぎ、まあ予定の範囲内でしょう。味噌汁を作っての昼食です。キノコが採れればキノコ汁といきたいところですが、少雨のせいでキノコは皆無に近く、中身は持参のワカメだけ。それにしても雨が降らずともこの水量、岸を見ても最高水線の位置はそれほど高くありません。深い原生林が雨をいっぱいに蓄え、ゆっくりと解き放っているからでしょう。森の力をしみじみ感じます。のんびりと食事を摂り再び出発です。昨年はここから歩道をたどって戻ったのですが、危険な個所が幾つもあるため、今回は下ってきた川を溯ることにしました。

しばらく休んでいる間に体は冷え、さすがの吉岡さんからも「寒い」という言葉が聞かれたほどで、できれば泳がずに済ませたいものです(そもそも流れに逆らって泳ぐのは大変ですから、自ずから流れには入らず川を溯るようにはなりますが)。それでも流れの穏やかな淵や、通過が困難なところは泳いで越えて行きます。そうこうするうち、やがて難所の滝まで戻ってきました。

今度は登りなので岩に飛びつく訳にはいかず、足場、手がかりを捜さねばなりません。まず私がチャレンジ。淵を泳ぎきり滝のところにたどりつくと、水中にちょうど良い足場があって、そこに立つと後は簡単、滝の横をスイスイ登れました。続いて吉岡さん、少し顔が引きつっています。それから隅田さん、さすがに若い頃山によく登られたとのことだけはあって、さっさと登ってこらました。

ここまで来ればもう大丈夫、後は緩やかになった流れをただひたすら溯るだけです。靴に履いた靴下も、何度か位置をずらしましたがとうとう破れ果て、吉岡さんは2足目(私は1足目でまだゆとりが)。こんな靴下でよくぞ往復できたものです。岩谷出合で少し休んだ後も、更に川を溯り続けます。足に感じる水圧の心地よさを楽しみながら、行きに川へ下り立った地点も過ぎ、大きなトチの樹があるところでまで来て、やっと歩道へ上がりました。

それからは次第に薄暗くなる山道を、しかし焦る事もなくのんびり歩いて、やがて地蔵峠へ。峠からの下りは今日一日を懐かしみながらの、一番ゆとりある時間です。そして車のあるゲートに到着。ごみ袋の中から厳重にしまっていた時計を取り出しびっくり、もう午後7時になろうとしています。さすがに薄暗いはずです。それにしても、事故もなく無事予定を完全消化でき何よりでした。渓流足袋を忘れご迷惑をおかけし、本当に済みませんでした(これからは、ずっと言われそうです)。

余談:この翌日も同じ場所にやってきました。今度は子供の野外活動のリーダーとして。子供11人、大人6人の大所帯を引きつれての川歩きで、さすがの清流も濁ってしまうほどでした。コースは随分短縮していますが、小学1年生から中学生まで、この年齢差の子供達を等しく楽しませる事ができるか不安でした。しかし自然は、無限の遊びの場を子供達(大人にさえも)に提供してくれました。泳ぐだけのプールでは得られない、豊かで変化のある遊び場を。

普段は禁止される服を着ての水遊びは、本当の自然の中で、遊び名人の子供達を更に様々な遊びの世界へと導いてくれました。水と戯れる子供達の、本当に嬉々とした顔を見つめていると、至福の時を過ごす事ができます。

それにしても連日の川歩き、本当に気疲れしました。

●参加者の方から感想の文章をいただきました。

川を泳ぐ!!そんな事が出きるだろうか?私はちゃんと泳げないのだ。そもそも「泳ぎ」から離れて何年の月日が経っているのだろう?学校の授業で水泳をやったのは中学の頃までか??そんな事を思いながら今回の「川泳ぎハイク」への参加をするかどうか葛藤していた。気持ちは良さそう。でも泳げるのか??そんな不安をよそに先生は「浮き輪でも持ってきたらどうですか?」などと軽くあしらう・・。一体その言葉はどこまで本気なのだろうか?本当に浮き輪を持って行ったらいいのか?しかし、浮き輪なんて持っていない・・。しかも、服を着たままリュックを背負って泳ぐ??無理やろー・・!。そこで、シュノーケルセットを付ければ息が出きることを思い付く。私は浮くことは出来るのだ。〜というわけで、シュノーケルセットをリュックに詰め、緊張の面持ちで家を出た。

車を降りて駐車場から約1時間半ほどの道のりを歩く。京大演習林となっているブナの原生林。山に入ると太くて立派な木々が迎えてくれる。木々の下には悠悠とシダが覆っていて、なんとも静かで穏やかな様子。林を抜けて川にでる。いざ装備を整え川歩きの始まりである。リュックも当然水に浸かるわけで、リュックの中の荷物を全部ごみ袋に2重にして詰め、そのままリュックへもどす。袋の中には結構な空気が溜まることになりこれが浮き輪の役目にもなるそうだ。そして袋を2重にすることにより、中の荷物に水が入ることはまずないらしい。「ほんとかな?結び目から入らないかな?」とちょっと疑問に思いつつ指示に従い、例のシュノーケルセットを取り出す。先生ともう1人の参加者はちょっと意外そうな顔。「ほんとに持ってきた!」って顔で見ているような・・?(本意は不明です)

沢は二度目になるので、川の中を歩くことにはさほど抵抗はない。水の冷たさも感じない。とても気持ちがいい。1時間半歩いて体が火照っていたのが、すーっと引いていくようである。そうこうしている内に、とうとう淵がやってきた。「さあ、泳ぐぞ!」と気合が入るが、シュノーケリングも久々でちょっと不安。距離はたいしたことないが、水に顔を付ける事自体がドキドキする。先頭はどんどん行ってしまうので、もたもたしている余裕はない。やっとの思いで気持ちを奮い立たせ、まず顔だけつけて見る。「あっ!」当たり前なのだけど川底がよく見える。とても水は澄んでいて、結構な深さがあるだろうにずーっと底まではっきりと見える。とたんに恐怖はどこかへいってしまい、嬉しくなって体を浮かす。「泳げるやン!」リュックはちゃんと浮いている。重いどころか背中よりも浮き上がっているのを感じる。ほんとに浮き輪代わりになっているようだ。何度目かの淵、たくさんの魚がいる。ちょっと半透明っぽい小さな魚、黒っぽい少し大きめの魚、いろんな淵にたくさんいる。足の立つところへ泳ぎ渡るより、魚を追いかけて行きそうになる。もっとゆっくり魚と遊んでいたい・・。でも、まだまだ先は続く。

1度目の難関、3mくらいの滝の横の岩壁を下る。ザイルでサポートしてもらい顔を引きつらせながら下る。下っても下に足場はない。そのまま川へドボンと落ちそのまま泳ぐ。滝の下は深くなっているし水が渦巻いていて、瞬間辺りの様子がわからなく不安。でもちょっと泳ぐとまた魚が迎えてくれてほっとする。

2度目の難関。今度は滝の横壁をへつらって下る。足を置こうとする岩は水に浸かっていて、ちょっと力をぬくと水勢で押し流されそうになる。手で掴む岩壁は手前に傾いているように感じるほど絶壁で、指の力が抜けたら滝に落ちそうな気がする。なんとかクリア。

小さな滝は楽しい。ちょっとした急流下りの気分である。上流側の岩場にお尻を乗せてスタンバイ。あとはちょっと体を浮かせれば、水が流してくれる。一瞬の急流すべり。なんとなく得した気分である。

3度目の難関。3mくらいの高さかな?もっと高いかな?また滝下り。上から眺めてまず足がすくむ。高所はきらいではないけど得意でもない。が、なんとか座り込まずに眺めている。下から「そこで待ってますか?」と言われ、急に疎外感と闘争心があおられ、「降りてやる」とムキになる。先生が一度上に上がってきてザイルを出してくれる。それにぶら下がるように最初の足場に到達。体の横から滝の水があたる。ここでもまたしっかり掴まっていないと水に落とされそうな気がする。ようやく滝下に到着。また淵を渡ってとりあえず下りは終了となった。

帰りは上流へ遡ることになる。あの滝はどうやって登るのか?降りるのも大変だったけど登れるかな?と不安ひとしお。お昼を迎えた。普段ならお昼の時間までに既にお腹の虫が騒ぐのだけど、緊張の連続でそれすら忘れていいる。体を水に浸しているせいか、途中水分の補給すら1度も行わなかった。こんな事はかつてなかった。一口お握りをほおばると一気に体の中の血液が循環し始めたような気がする。暖かいお味噌汁とお茶がなにより美味しい。思っている以上に体は冷え切っていたようだ。

午後からの出発。すっかり体が暖まっていて、足を水につけた瞬間にすーっと冷たさが体を走る。寒い!!「なるべく帰りは泳がずに歩きましょう」という先生の言葉に少し安心しながらも、時々は沢に足を浸して進む。そうこうしているうちにまた体が水温に慣れてきて、泳がないのが惜しい気がしてくる。第二の難所へ戻ってきた。やはり水勢が激しい。頭につけたシュノーケルが岩壁にひっかかって邪魔をする。水のしぶきがコンタクトを飛ばしそうなきがする。夢中で岩壁にしがみついてなんとか上る。第一の難所・・「どうやって上んねん!」迂回する道はない。3mの滝が落ちてくるすぐ横の岩壁を先頭は上っていく。淵の手前から見ているだけでゾッとする。止まっていても誰かが空から引き上げてくれる訳もなし、大きく深呼吸して滝目指して泳ぎだす。滝の上からは目印にザイルを下ろしてくれていて、それを目指して泳ぐけれども水勢におされなかなかたどり付かない。やっとの思いでザイルを掴んで顔を上げる。しかし、まず足を乗せる岩場さえ見当たらない。当然水の中でも足はつかない。流されないようにザイルにしがみつくことしか出来ない。上の方から何か声がするが水の音に消されて全く聞こえない。何度目かに「ザイルだけに頼るな!」と叫ぶ声がようやく聞き取れる。(そんなこと言ったってー)と心で叫びながら、なんとかザイルを片手に体を安定させ、もう一方の手で岩肌を掴むことが出来た。下りの時は足元が見えないが、上りはなんとなく見えるので手がかり足がかりを自分で見つけることができ、一歩上ればあとはなんとかなった。上り切ったときは頭の中は真っ白で、しばらくたってから「よく上れたなー」と自分に感心する。先生曰く「あんなの大したことありませんよー。落ちても水ですし・・」。〜感覚違いすぎ・・。

こうして難所を無事通過し、あとは緩やかな流れを遡りながら、沢との別れを名残惜しむことしきり。終わりと思うと、今まで怖い思いをした事もちょっと寒かったことも忘れ、まだまだ川で遊んでいたい気がする。往路沢に入ったところで陸地に上がるのが物足りなく、わがままを言ってもう少し長く沢を歩かせてもらう。靴の上に履いた靴下がすっかりボロボロになって、足元が滑って危なっかしくなってきた頃、ようやく沢と別れて帰路をたどることになった。駐車場までの1時間半ほどは、今日一日を振り返り振り返り、なんだかあっという間に歩き終え、気がつくと7時前という恐ろしい時間になっていた。(5時頃には戻っているはずだったらしい・・)

怖かった、確かに怖かった。でも、もう今はそれを忘れて楽しかったことだけ思い出される。心地よい涼感と共にあの芦生のアドベンチャーワールドを・・・。tomo

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