初級のさらに初級の沢登りと初夏の花01.06.09.


いざ出陣!

岩を伝って流れを渡る

こんな滝が続くと楽しい、見た目より簡単に登れる

ハクウンボクの落花

タイミンガサ?の群落

リョウメンシダの群落

渓流足袋のワザ

淵のへつり

もうすぐ終点です

笹の新芽が美味しかった!

峰床山頂上より

タニウツギ

ウリハダカエデの実

タニウツギ

ヤブデマリ

サワフタギ

ヤマボウシ

梅雨入り後としてはまずまずの空模様の6月9日。午前8時20分頃、JR山科駅前に集合。「初級のさらに初歩の沢登りと初夏の花」をテーマに、里山遊々クラブ今年3回目のハイキングに出掛けることにしました。

沢登りということで、参加者も私(福本)のほか「自然館」の三田村さんと、2月の冬山ハイクに参加された吉岡さんの3名だけの選りすぐり?のパーティとなりました。2人とも沢登りは初めてとのことで、それぞれ頭の中でイメージを膨らませておられたようでしたが、さて現実はいかに。

山科駅前からマイカー(軽自動車ですが)に乗って、西大津バイパス経由で花折トンネルを越え、安曇川上流の葛川中村から伊賀谷林道を終点まで入ります。林道横には熊の生捕り用檻が置いてあって、幾分不安そうではありましたが、35年以上も山歩きをしている私でさえ月の輪熊には出会った事がないのでありますから、「出会えば幸運ですよ」と説明すると納得されたようです。途中登山者を10人あまり追い越し、歩く邪魔をしてしまいました。スミマセン。

林道終点で伊賀谷は左右に別れ、普通は右の谷沿いに付けられた登山道を行くのですが、私たちは左の谷へ入る事にします。このルートはすぐに沢歩きとなるので、最初から渓流足袋に足元を整えて出発です。時刻は午前9時30分を少し過ぎたところでした。

歩き始めは細々とした道もあって、沢の中と道とを交互に進んで行きますが、次第に道は消え沢の中ばかりを歩く事になります。歩き始めてまもなく辺りに漂う異様な匂い(腐臭)。流れに横たわる鹿の死体。これも自然の姿です。

沢登りは、滝を登ったり、淵をへつったり(淵に落ちないようにして側壁を伝って通過する事)するばかりではありません。岩を伝い、岩を乗り越え、そして岩から岩へと跳び移りながら歩く事が一番量的に多いのです。しかし整備されているわけがありませんから、岩は自然に転がったままに存在していて、歩行にあった形状や位置関係にあろうはずがありません。ましてや流れの中にある岩は水面が光って見難く、水際のものは水垢がついて滑りやすくなっています。ですからこういうワイルドな歩きに不慣れな2人は、足を滑らせたり、思ったように足が動いてくれないためか、時々「ワアー」とか「キャー」とかいう声と共に、流れの中に落ちておられました。それでも徐々に慣れてこられ、やがて声は聞かれなくなってきます(密やかに落ちておられたのかも知れませんが)。そうはいってもゆっくりと花や景色を眺めたり、小鳥の声に耳を傾けたりといった余裕まではない様子で、全神経を足元に集中して歩いておられました。

やがて小さな滝が幾つも続くようになります。5mほどの高さのまっすぐな滝を除いては全て簡単に登れ、滝壷や淵も膝上ぐらいまで水に浸かればへつって通過できます。「腰までぐらいは浸かるかも知れませんよ」とずっと脅かしていましたが、実際にはそれほどの事もありません。ただどういうわけか、腰まで濡れておられた方はありましたが。

まっすぐに落ちる5mの滝は高巻くことになります。しかし親切にもロープが張ってあるので難なく越えられます。ただ少し高度感があり、途中でロープが途絶えてしまうので少し緊張はされたようです。

この辺りは白いヤブデマリが満開で、ハクウンボクの白い花も終わりに近いのでしょうたくさん地上に落ちていて、白い世界が所々に出現しています。歩き始めの頃から聞こえていたミソサザイの鳴き声は、途絶える事がないほど続き、時々カワガラスの声も聞こえてきます。

やがて谷も広く流れも穏やかとなり、リョウメンシダのびっしりと生えた素敵な所へ出てきたので、そこで少し休憩する事にしました。三田村さんの持参されたクッキー(お店で販売されているもので、一口二口は物足りないのですが、次第においしさがをじんわり口の中に広がってきます)を戴き、ふと見ると、吉岡さんの腕に「ヤマヒル」が。この辺りには随分いるようで、私も先日やられました。

30分近くも休んだでしょうか、再び水の中に足を浸します。休憩後は2人とも軽やかに、草木や景色を眺めながら歩けるほど余裕が出てきたようです(こういう気が緩んだ頃が一番危ないのです。幸いこれから先は危険な所はありません)。

滝も絶え、穏やかな流れの源流そのものといった景観の中を、流れに足を浸してひたひたと進むほどに、やがて視界が開けると、なんと林道が目の前に現われ、少々興ざめしてしました。それでも一般車は通行止めなのでしょう、タイヤの跡もない林道で、道の両側には今を盛りにタニウツギがピンク色の花をたくさんつけています。私達はその林道の真中に座り込み昼食を摂る事にしました。

時刻は12時30分。ちょうど頃合です。味噌汁とお茶(これらも三田村さん持参のものです)をコンロで沸かし、あれこれ四方山話をしながら、休みとしては長すぎるほど休んで、ようやく2時過ぎに出発となりました。

濡れた服もほとんど乾き、足元を渓流足袋から靴に履き替え、最初からこのスタイルですといった感じで八丁平のハイキングコースへと足を進めます。

林道はすぐに終わり、ほとんど平坦な道を行くと、ほどなく八丁平に出てきました。八丁平は、この辺りでは珍しい高層湿原で、周囲が八丁あるとか。しかし湿原の周遊歩道を歩くだけでは湿原そのものも見えません。

湿原を半周ほどして周遊歩道を離れ、急な坂を寡黙に喘ぎながら登ると、峰床山の山頂に到着しました。標高970m。京都府では第二の高さがあり、西側は開けていて遠く愛宕山らしきものまで見渡せます。耳を澄ませばホトトギスの鳴き声は絶え間なく聞こえ、遠くカッコーの声も聞こえてきます。一応今日の目的地ではありますが、時刻も午後3時を過ぎていますので、少し休んだだけで(今までの休憩時間に比べてという意味で)すぐ出発する事にしました。

山頂を東に下って峠へ出、それを南へ少し下ると再び八丁平へと戻ってきます。伊賀谷へ下る道との分岐点にベンチがあって、少し休憩することにしました。見上げるとそこには大きなクリの木が。自然に「大きなクリの木の下で」の歌が浮かんできて、そこで皆で振り付けまでして歌いました(アルコールもないのにすぐに乗れるところが素晴らしい。三田村さんはあきれていたそうですが)。

伊賀谷への下りは殺風景な人工林の中となり、道端に咲く満開のコアジサイだけが救いです。伊賀谷の右俣へ下りつくと道は沢沿いとなり、渓流の音に流れの中を歩いていたさっきまでの情景を思い出し、水に浸した足に伝わる冷たい快感を反芻しつつ歩くほどに、やがて出発地の林道終点まで戻ってきました。

午後5時ちょうど。雨に遭うこともなく、怪我もなく(青あざをこしらえた方はあったかもしれません)無事に帰れてなによりの沢登りでした。

※引率して下さった福本さんから原稿をいただきました。有り難うございました。

●参加者の方から感想の文章をいただきました。

「沢ってなぁに?」そう思われる方はこのページを読まれる方の中にいったい何人おられるのだろうか?山初心者の私としては、まず「沢登り」と聞いた時にそう思ったのだ。私の手元にある小っちゃな小っちゃな国語・小事典によると「1.水が溜まって草の生茂っている所。2.山間の広く浅い谷」とある。そして「渓流足袋ってどんなもの?」またしても「?」マークの登場である。今まで見聞きしたことのないものである。「足袋」は勿論知っている。広辞苑なら絵入りで載っているかもしれないが、私の小事典には載っていない。想像を膨らませながらブツと初対面した。

それは緑色でゴム長の下(足の甲くらいまで)にハイソックスを付け足したようなもので、底には台所の食器洗い用のようなスポンジが貼り付けてある。決して防水でも防寒でもなく、水につかると容赦なく濡れるし冷たい。それに、底のスポンジは確かに滑りにくいようにはなっているが、足の下の感触(砂や石のゴツゴツとした)は適切に伝わってくるものなのである。つまり、裸足で歩くよりはましではあるが、岩の角に乗った時は確実に痛みを伴うのである。そういう装備と共に、私達は山間の小川へと突入した。

リーダー以外は沢初体験、ちょっと大きめサイズの渓流足袋も最初は足に馴染まず、歩く事そのものにさえ不安。水は冷たいし足を乗せた石が急に動いて、いきなり川にはまる。気が引き締まるのと共に益々不安が募る「ついていけるだろうか??」。まずは周りの景色を楽しむ余裕など全くなく、ひたすら足元に注意をしながら黙々と歩き続ける。

そうしてどのくらい歩いたのか、ようやく少し渓流というものに慣れて来て、あたりを見渡してみた。一面がたくさんの種類のシダに覆われている。まさにシダの海。上を見上げると木々の葉のすきまから陽の光がさし込み、その向こうには青空が覗いている。物音といえば小川のせせらぎと鳥のさえずり、そして私達の歩く足音と呼吸。自然の息吹のなかにいる自分を感じることが出来る瞬間である。

先生は時折恐ろしい無理難題を降りかける。ご本人にとってはなんてことない崖(約2mの高さの)をさっさとスルスルと下りて行く。勿論私達は後に続かなければいけない。一応下から「このあたりにまず足を置いて」と指示が飛ぶのであるが、足の長さは人それぞれに違うものだ。全く同じようにはいかない。それに何よりも恐怖心というものがある。これでも一応私は女の子(?)なのだ。川を渡っているときも、先生は岩から岩を軽々とひとっ飛びする。その身軽さはまさにおサルそのものである。足の長さもさながら身の重さも実感せずにはいられない。「よいしょっ!」「えいやっ!」この繰り返しをひたずら続けることになる。そして足をのせる石を見誤れば水の中へドボンと行くことになるのだ。

難題も時には快感に変わるものである。最初は無理と思った岩も、一度登れたら次はもう自信と共にラクラク(これはちょっといい過ぎであるが)登れるようになる。そうなればその岩は難題ではなくチャレンジャーの気分を満喫させてくれることになる。結構な高さの滝の真横をするすると登り、上から滝を見下ろすのはなかなか爽快である。ようやく沢を楽しみ、周りの景色を楽しめるようになった頃、もう沢は終わり。世の中いつもそんなもんだ。

その後は、ハイキング道を通り八丁平を抜けて峰床山の山頂まで一目散に歩く。八丁平は湿原なのだそうだ。でもそれらしい光景は見ることが出来なかった。しかし、その八丁平は一面が笹林。めずらしい竹の花も見ることが出来た。笹の芽も食べた。ちょっと駆け出したくなるような気分で笹林を通りぬけた。無事標高970mの峰床山の山頂へたどり着き、帰路に向かう。あとは帰るだけ。しかし、下りの山道は馬鹿に出来ない。途中から結構急な下りが続き、下りるころには膝が砕けそうな気がした。山はやっぱり下りが勝負です。。。。。

最初の沢登りで結構濡れはしたものの、好天のおかげですぐに乾き、寒い思いもせずに楽しいハイキングとなった。下りてきた川で先生は水浴び、追々したかったけど、さすがに川の水は冷たいので止めました。

帰り道、先生のお庭の音羽山へ天然の涌き水を汲みに立ち寄った。その道端にビロードいちごが生っていて、ちょっとお裾分けを頂きました。ごちそうさま。自然の恵みに感謝!

   山歩き 大きな栗の〜 と歌い出す 梅雨の合間の 憩いの日
                                     tomo

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