初級冬山体験01.02.17


この写真のみ1週間前の物です



里山遊々倶楽部のハイキングとしては少しレベルを高くし、今回初級の冬山に出かけることにしました。最後まで参加するかどうか迷っていた方もありましたが、結局1名(吉岡さん、女性)のみの参加となりました。彼女は、今回の山行のためにわざわざ登山靴を新調されたということで、私(福本)は、余程のことでもない限り中止にはできないとの思いで、毎日週間天気予報を睨んでおりました。その甲斐あってか、当日の朝、窓外に青空のひろがっているのを見出しほっとしたものです。

さて当日、吉岡さんはJR大阪駅7時45分発近江今津行新快速に乗車、私は山科駅から乗車して合流しました。湖西線比良駅で下車すると、同じ電車からホームに溢れんばかりの登山者が次から次へと降り立ち、その数に圧倒されてしまいました。改札を出ると、案の定比良リフト行きのバスは臨時便も含めすでに満員に近い状態で、乗り切れない人が溢れているほどです。少し隙間のある先頭のバスにとにかく乗り込み、15分ほど揺られて比良リフトに到着しました。幸い待ち時間もなく、リフト、ロープウエーとスムーズに乗継いで山上駅までたどり着くことができました。

駅舎で身づくろいをし、9時50分出発です。曇り空で少しガスのかかっている山もありますが、風もなくこの季節の比良としては申し分ない天候です。まず雪の上につけられたトレース(踏跡)を伝って比良山スキー場へと下ります。それから今日の目的地、比良山系最高峰武奈ケ岳への登山コースに入ります。トレースはありますが、この雪の深さはどうしたことでしょう。

ここ2〜3日の間に相当の積雪があったようで、トレースを外れると腰まで沈んでしまい、抜け出すのに一苦労するほどです。「先頭はラッセル(深雪の際、身体で道をひらきながら進むこと)が大変だろう」と思いながらも、しっかりとしたトレースに助けられ樹林の中を苦労せずどんどん進んでゆきますと、とうとう先頭に追いついてしまいました。私も先頭に立ちしばらくラッセルしましたが、股までの雪を一旦膝で押し付けその上に足を置くという繰り返しで、100メートルほど進んで交代です。はかどらぬ行進を続けながらも、やがて眼前に真っ白な山頂が現れると、いやでも登高意欲が高まってきます。しかしその先も相変わらずの深いラッセルが続き、11時50分やっと山頂にたどり着きました(予定内の時刻ではありましたが)。

頂上付近は雪庇(セッピ、山の稜線の風下側にひさしのように突き出した雪の吹き溜まり)さえ出来、まさしく冬山そのものの景観です。これから下る予定の西南稜は白く長く延び、「こっちへおいで」と魅力的に誘います。しかし誰も通っていないのかトレースは全くありません。とりあえず昼食を摂ってからこの先を考える事にし、風下の小さな雪庇の下を踏み固めて座るスペースを作りました。この頃には日も射し始め、ガスに隠れていた蓬莱山も見えています。風は当たらず暖かく最高に気持ちがよいので、すっかりくつろいでしまい、12時40分に出発となりました(これは予定外です)。しかし眺める西南稜は、先程と変わらぬ白い稜線のままでトレースはなく、これを前に私達はあっさり予定を変更し、元来た道を戻る事にしました。100人以上の人が通ったでしょうか、トレースはすっかり溝状に固められ、雪道に慣れない吉岡さんには滑って歩き難いようでした。やがてスキー場へ出、ロープウエー山上駅には13時50分に到着です。しかし帰りは、ロープウエーもリフトも使わず歩いて下ることにしました。北比良峠からはほとんど下りばかりで、トレースも十分過ぎるほどしっかりしています。

これからはゆっくりと焦らず雪山を楽しみながら下りることにしました。下り始めてまもなく、多少展望の利くところでまずティータイムです。雪を融かし湯を沸かし熱いココアを作りました。スキーにはよく出掛けるらしい吉岡さんも、雪を融かして飲むのは初めてらしく、私にはまずい融かしただけの水も、変わった味がするといいながら、おいしそうに飲んでおられました。しばしくつろぎ、寒くなり始めたので再び出発します。道がジグザグになり、下のほうにトレースが見えると、まっすぐ下のトレースを目指して転げるように下ります。これはなかなか楽しいもので、深い雪をもがきながらも吉岡さんは大変気に入った様子でした。

やがて林道へ出、短かった?冬山歩きも終了です。バス停のあるイン谷口にたどり着くと、バスは出発したばかりで次のバスまで50分も待たねばなりません。比良駅までは徒歩40分ほど、相談のうえ歩くことにしました。売店でビールを買って飲みながら、車の来ない荒れた林道を下ります。川岸にネコヤナギの銀毛を見つけ、春近きを感じるとともに、雪の山ともお別れかといささか感傷的にもなります。「来年は西南稜を下りたいですね」などと来年の山の話なども語らいながら、のんびりと晩冬の野辺をたどり、やがてビールのほろ酔いも醒めかけた頃(17時ちょうど)、比良駅に到着しました。


※今回は、引率して下さった福本さんから原稿をいただきました。有り難うございました。そしてお疲れさまでした。

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