馬尾の滝 滝谷中俣 天狗岳西尾根で 蜂の巣の跡 カヅラ谷出合付近の由良川 刑部谷右俣 オオカメノキの果実 エゾハルゼミ?の抜け殻 フカンド山方面 アンズタケ タマゴタケ P927からの尾根道 |
2006年7月22日曇り一時晴れ・久多(岩屋谷出合)〜滝谷中俣〜天狗岳〜カズラ谷出合〜刑部谷右俣〜小野村割岳〜P927m〜久多(岩屋谷出合) 今年の梅雨は前半ほとんど雨が降らなかったが、後半に大量の雨が連続して降った。そのため保水力が落ち少しの雨が降っただけでもすぐに水嵩が上がる。今日も昨日までの雨で川は増水しており、道中見下ろす安曇川も普段の2倍半余りの水量だ。 久多に入ると猿の群れが道路を横断しているのに出会った。今年になって2度目である。聞けば猿による農作物への被害も大きいとのこと、彼らは賢くシカやイノシシのように網や柵を廻らしてもそれを乗り越えることができるので、防除が大変そうだ。これも人間の都合だけで森を侵略して来た結果でありやむをえないことであるが、森との接点に生きる人だけがその害に甘んじなければならないというのはいかにも理不尽である。 かつて山田で作業されていた方にお話を伺ったことがあった。森に接する水田に柵を廻らしても、イノシシがこれを壊して中に入り、柵内の水田全域で「ワルサ」をして困っていたが、ある年試しに一番上の水田だけ開放したところ、開放した水田はメチャメチャにされたが、それ以外の水田には入らず被害がなかったと。実りを独占するということを諦めたとき、自然との調和がもたらされたのであろう、人間社会へ繋がる啓示とも思えるお話であった。 岩屋谷出合に車を止め、午前7時30分出発。水量多く滝谷の林道終点から渓流足袋を履く。馬尾の滝の上で三つに別れる中俣に入るが、いつもの貧弱な流れに水が溢れ「これが沢登りの悦びだ」と実感させてくれる。城丹国境に登りつき天狗岳午前10時30分着、頂上ではほとんど休まず西尾根を下っていく。 途中、地表を背の低い笹が薄っすらと覆っているところがあり、鹿が多少減って笹が少し回復してきたのだろうか。また6月11日にやってきたときに見つけたアカゲラの巣は、無事巣立ったのであろう空っぽになっていた。 カヅラ谷出合に近く、ちょっとした穴が地面に掘られ、蜂の巣の破片のような物が散乱しているところに出会った。よく見るとその破片にクロスズメバチらしい蜂が数匹止っており、その蜂の巣であったようだ。付近の状況から、熊が蜂の巣を襲ったのだろうと思われる。 カヅラ谷出合午前11時40分、軽く食事を摂りトロッコ道を少し下って刑部谷に入る。以前に本谷を詰めたことがあったが、右俣と思われる谷もずっと気懸かりであった。今回その右俣に入ることにしたが、予想以上に素晴らしい谷であり、最後の詰めも予期せぬほど苦労なく済む。 水が涸れた後は急な斜面を上って稜線に出るのであるが普通であり、そんな所には決まって鹿の獣道があってそれを繋いで上ることが多かったが、最近はそんな獣道が少なく這い上がることが多くなってきた。この谷もそうであり、おそらく鹿が絶対的に減って、厳しい環境の稜線まで上がらなくても済むようになったのだろう。 稜線をP901mへ向かう途中、カラ類の群れに出会った。コガラ、ヒガラ、シジュウガラ、ヤマガラ、ゴジュウガラ。この森に住む「カラ」と名の付く野鳥の勢ぞろいだ。彼らの通過を10分ほど楽しませてもらった。 また、P901mから小野村割岳へ向かう途中、地上にナツツバキの花がたくさん落ちているのに出会う。見上げればまだ少し花もつけていた。昨年あれだけたくさんの花をつけたのに、今年は今まで全く見かけず、これが初めて見るナツツバキの花だ。 花を付け実を結ぶということは植物にとっては最も重要な事業でありながら、それは大変な負担になるのだろう、毎年たくさんの花を付ける樹は森には少ない。肥料を施されて毎年花をつけさせられる庭木などは、休むことも許されず無理をさせられているからきっと長生きはできまい。 小野村割岳14時30分着、ここでも少し食事を摂り国境稜線を更に東へ進む。P927mから滝谷の岩屋谷出合へ延びる尾根に入るが、この尾根は登山者がほとんど通らないのか、隣のフカンド谷へ至る尾根のようには踏み跡やテープ類がない。幾つか上り下りがあるが、南側は所々開けて展望の得られるところがあり、まずまずの尾根道だ。 途中長瀬谷(地図には長治谷とある)側から上がってくる作業道があり、やがて鹿除けネットの張られた造林地へ出てくる。最初ネット沿いに進むが、枝尾根に伸びるネットに前方を塞がれ、人一人がやっと通れるだけの穴が開いたネットを潜り抜けて更にネット沿いに下った。やがてネットが長瀬谷側へ下りだすので、ネットを掻い潜って反対側へ出て尚も尾根上も忠実に下れば、やがてナラとシデ類を中心とする雑木林の広がるステキな尾根道が始まる。 昨秋対岸から眺めたとき、見事な黄葉に覆われたこの尾根に強く惹かれるものがあった。冬には一度通ったことがあるが、雪のない時にも一度通ってみたいと思い続けていただけに、期待を裏切らない光景に自然に歌が出るほど嬉しくなる。ステキな時は儚く過ぎ、続いて現れる薮と人工林の中を下れば滝谷に下りつく。16時45分着。 水は冷たいが、いつもの場所で水浴びをして締めくくった。 |