「芦生の森から」06.03.05.



クマの足跡

小野子東谷乗越

ブナノ木峠を見る

傘峠への尾根からブナノ木峠

百里ケ岳と湖北の山々

四ノ谷源頭の伐採地

ウサギの足跡

傘峠

ブナノ木峠

ツルウメモドキ

湖北の山々

ブナノ木峠から傘峠

小野子谷出合へ至る尾根からP901m

2006年3月5日 快晴須後〜研究林事務所裏尾根〜ブナノ木峠分岐〜傘峠〜ブナノ木峠〜P901m〜小野子谷出合〜須後

道中所々凍結しているところもあったが、須後まで夏タイヤで入ることができた。車窓より見る由良川は、雪融け水を集めて増水し、水量は普段の倍近くあるようだ。須後の駐車場には厚く雪が残り、僅かに除雪されたスペースに車を止める。

午前7時15分出発、内杉谷林道は除雪されておらず、昨日のトレースであろうスノーシューの跡が残っているが、今はまだ雪が凍っていて非常に歩きやすい。二つ目のカーブから右手尾根に取り付くが、固く凍った雪は蹴っても靴が食い込まずアイゼンが欲しいほど。念のために持って来たピッケルが、今日もここで役に立つ。しかし、傾斜が多少強くなると、爪先のわずかの引っ掛かりだけで歩かなければならず、不安定な体勢を続けるので意外とくたびれる。

研究林事務所裏から上がってくる尾根を合わせると稜線は平坦となり、やっと一息つくことができた。この辺りは原生林ではないがモミやツガの樹が多く、かなり大きなツガも残されていて嬉しくなる。

P682mへの登りに差し掛かると、昨日のものであろう長さ15cmほどの熊の足跡が点々と続いているのに出会った。人の足を横に大きく引き伸ばしたような形で、爪や指の跡も鮮明に残っている。まだ雪がかなりあるので餌になるようなものはなさそうだから、きっと様子を見に出てきただけだと思うが、それでも熊の活動するような季節になったようだ。

P682m午前8時25分通過、小野子西谷支流の乗越に一旦下り、P765mへ急登する。ここまでほとんど自然林の中であったが、このピークから右側、小野子西谷側は手入れの悪い人工林となり、一気に平凡な山に変わってしまった。ただ、展望が少し開け、これから向かうブナノ木峠方面が望まれてくるのはせめてもの救いか。

やがて林道に飛び出し、50mほどケヤキ坂峠方面に寄った雪の続いている斜面から再び尾根を登った。この辺りからやっと原生林らしい様相となり、また新雪も20cmあまり積もり、冬の芦生にいるのだという実感が伴ってくる。

P845m午前9時45分着、予想以上に早く着いてしまったので、せっかくだから少し遠いが傘峠まで往復する事にして少し朝食を摂った。食事を済ませ、所々新雪の吹き溜まりがあるので、安定して歩けるようにワカンを付けて出発する。

ブナノ木峠分岐から傘峠に至る尾根に入って最初のピークを越えると、雪の無い季節であれば「ここが芦生か」と思うほど殺伐とした伐採地が広がる四ノ谷源流であるのだが、分厚い雪にすっかり覆われた今は、どこか北地の針葉樹林を思わせるような心ときめく景観に変わっていた。そしてその向こうには百里ケ岳と白く雪をたっぷり載せた湖北の山々、そして遠く微かな白山も。また少し西へ目を移せば、海岸線までは分別できずとも、ひときわ目立つ若狭富士、青葉山が望まれた。

あまり起伏の大きくない歩きやすい尾根を辿り、ツボ谷源頭の原生林の中を急登すれば傘峠山頂だ。午前11時10分着、北側が少し開けるがほとんどが樹林越しですっきりした展望は得られず、また風も冷たいので少し留まっただけですぐに引き返した。

帰路、先ほどの四ノ谷源頭で昼食を摂る。背に暖かい陽光を受けながら、湖北の白い山々を眺めていると、春山に居るのだとしみじみ感じると共に、白い稜線の続く越美国境への憧憬が沸々と湧き上ってくるのを感じた。

「今年も行きたい!」ゆっくりしたいが先は長い。再び元来たルートを辿り、ブナノ木峠12時40分着、山頂からの展望はよくない。山頂は休まず通り過ぎ、さらに南へ延びる尾根を下って行く。やがて林道に出合うが、削られた法面は地面が露出して下れず、雪の続くところを探して飛び降りるかのように林道へ下った。

小野子西谷と七瀬ヤケ谷との分水嶺につけられた林道は、吹き溜まりのために地形が歪み、その位置が分らないほど。続くP901mの北方ピークへの上りは傾斜がきつく、ワカンを付けていると登り辛いが、外すのも面倒なのでピッケルを支点にして登った。

P901m13時20分通過、ここから小野子谷出合へ至る長い尾根に入って行く。一旦下った鞍部は風もなく、小野子東谷源頭の緩やかで広々とした景観が嬉しく、ここで2度目の昼食を摂ることにした。

標高700m辺りまで下ってくると、風当りが強いからか尾根上の所々で地面が顔を覗かせている。さらに南側の斜面では日当たりがいいのだろう、褐色の地肌が連続して現れ、否が応でも冬の終わりを教えられた。「雪山とももうお別れなのか・・・・・・。」

雪融けが早いせいか、この辺り一帯には鹿の足跡が多数錯綜し、糞も随所に散乱していた。この尾根はミズナラのナラ枯れが芦生で最も深刻なところであり、その上このように春先から鹿の踏み付けや食害が重なれば、やがては岩の露出するような禿山になりはしないかと心配である。

さらに下ると尾根の雪は僅かとなり、ワカンを付けていると歩けなくなったのでこれを外すことにした。P672mを過ぎた最後の急斜面は、雪の残ったところを繋いで下ったが、この頃には雪もすっかり緩んでズボズボ足が潜り、楽しみにしていたグリセードどころか歩いて下るのさえ難儀なほど。

やっとのことで小野子谷、ちょうど小さな堰堤のあるところに下り着いた。14時35分着、水量多く登山靴では渡れそうになく、長靴に履き替えて流れを渡る。その先も雪がザクザクして足が潜るので、今度は長靴のままワカンを着けて歩いたが、それでも20cmほど沈んだ。

振り返ればここから小野子谷林道起点までの僅かの区間が、今日一日で一番疲れるところであったようだ。15時10分須後の駐車場に無事到着、上下のヤッケを脱いでもなお爽やかに感じるほど暖かかった。


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