「芦生の森から」05.11.05.


リンドウ

ウバユリの果実

朝霧に霞む針畑

シナノキの果実

ウラジロノキ

エゾユズリハ

ミズナラのドングリ

ダイモンジソウ

カエデの葉(上左からコミネカエデ・コハウチワカエデ・ウリハダカエデ・ウリカエデ、下左からテツカエデ・ハウチワカエデ・イタヤカエデ)

テンナンショウの果実

ヌメリスギタケ

大滝に懸かる虹

ブナの果実

狂い咲きしたナツエビネ

サワフタギの果実

クサギの果実

蛸足状のネジキ

シロモジ

快晴・桑原〜P941m〜岩谷出合付近〜大谷〜三ボケ〜保谷南尾根〜桑原

桑原午前7時出発。針畑川沿いの小盆地には浅い霧が漂い、朝日が薄っすらと差すと幻想的な光景が浮かび上がってくる。下ツボ林道を10分ほど歩くと三国岳登山口に到着。

ここにはヘラ状の果実を付けたシナノキが立っており、その特徴ある果実の形態は非常に印象的だ。背の低い潅木の覆いかぶさる中、朝露を払いながら登山道を登ると、やがて雑木林に入る。乾いた落ち葉をカサカサ踏みながら歩くことのなんと心地よいことか。ミズナラのドングリが落ちていたので、ここで50個ほど拾う。

さらに登り続けると味気のない人工林に変わり、歩みを速めて先を急いだ。左側はタバ谷、この谷の上流には20mほどの崖があり、その昔は口減らしのために老人を崖から突き落としたらしい。いわゆる姥捨て山であり、山里の生活は大変だったのであろう。

江丹国境尾根に登りつき、古屋からの登山道と合流すると、突然「ブーン」と風を切る音と共に頭上をアトリの一群が駆け抜けていった。先週、数百羽と思えるアトリの群れの真只中に留まっていたことを思えば、一瞬の通過はあまりにも呆気ない。大きな荷を背負った登山者にすれ違った。櫃倉〜杉尾峠〜岩谷と通って来られたとの事、こんな時間にここで人に会うのは珍しい。

P941mの北側尾根に入り、折角だからピークまで登ることにする。このピークの北面一帯は、ブナ、トチノキ、ミズナラの大木が並ぶ緩やかな広がりをもった山肌であり、芦生で一番気に入っている所の一つだ。山頂午前9時ちょうど着、ここからさらに西へ尾根を進む。

P892mとの中間辺りから北西に延びる尾根があり、これを択んで由良川へ下ることにする。この尾根の途中、樹の倒れた跡に先ほど拾ったドングリを植えた。特別難所らしいところもなく、岩谷の瀬音が近づくとほどなく由良川沿いの登山道に降り立つ。岩谷出合から少し下流に下った所だ。これからは登山道を忠実に辿る事にするが、正に「険路」と言える道である。日帰りの荷でさえ通過が大変なのであるから、大きな荷を背負っていたら神経をすり減らしてしまうに違いない。

今年はなかなか気温が下がらないのか、木の葉の色付きが今一つ冴えなようだ。お握りを一つ取り出して歩きながら朝食を摂る。ツボ谷出合を過ぎ、大谷出合の巻き道に差し掛かる所で渓流足袋に履き替え、さらに由良川を下って大谷出合11時40分着。今日は渓流足袋の中に、ホームセンターで買ったウエットスーツ用生地のソックスを履いていたので、冷たさが和らぎとても快適だ。

大谷に入るのは今年8回目、一ボケから二ボケにかけての広々とした谷間はいつ来ても素晴らしい。いつものカツラの大木にあいさつをする(翌日法然院で開かれている「中島由理」さんの個展に行ってお話を伺うと、このカツラをモデルに絵を描いておられる最中とか。それにしても大谷まで絵の取材に来られるとは恐れ入りました)。

三ボケの滝は水量が少なく迫力に欠けるが、反対にシャワーを浴びずとも登れるので助かる。そして最後の大滝、いつもは右側を巻いていたが、今日は左側にチャレンジ。見た目より容易く登れ、大滝の落口に直接出られるのでその上に続くナメ滝も登ることができた。これからは左側を巻くことにしよう。

ロノロノ谷出合13時ちょうど、昼食を摂りながらブナの実を拾うことにした。11月とは思えないような暖かさの中で、柔らかい秋の日差しを受けていると、動き始めるのが億劫になってしまう。今年はブナの実が大豊作である。それも中身の詰まった正真正銘の果実である。

昨秋の台風で多数のブナの大木が倒れた。それでなくても最暖地のブナとして、昨今の温暖化によって相当弱っていたのだろう。今まで中身のない果実ばかりを結んでいたのにこの突然の大豊作、やはりミズナラと同じく危機を悟って実をつけたのだろうか。15分ほどかければ200個ほどの果実が集められるというのも、その量の多さを物語っている。

大休止の後再び三ボケを溯る。滝場を過ぎた広い谷の中、今までよりも緑を濃く感じるのは、鹿が減って下草が増えたためか。その中にサワフタギやクサギが美しい果実を付けていた。木が倒れ、ぽっかりと穴が開いたように空の広がるその下に、先ほど拾ったブナの実を植える。

ちょっとした滝場を二ヶ所越えれば二俣、水がほとんど涸れてしまったのでここで長靴に履き替えた。右は三国岳、左はP941m、今日は左にルートを択ぶ。P941mの北側で今朝来た尾根に登り、三国岳登山道に14時45分合流。眼下に古屋辺りの小盆地が望めるが、遠くは霞み琵琶湖の湖岸線も判別できない。

岩谷峠に向かって急坂を下り、国境尾根と別れて保谷南尾根に入って行く。この尾根を通るのは今年5回目、回を重ねるほどに歩きやすいいい尾根だと思う。ところどころブッシュもあるが、全体からすれば2〜3%ほどだからほとんど無いに等しい。そして両側の大半が自然林なのも魅力の一つだ。

出発地が桑原なので、P683mから東に桑原方面へ向かう尾根に入る。P555m辺りの南面は伐採され、今朝方登った尾根の全貌も眺めることができる最後の憩いの場。このピークから桑原は東へ下るのだが、最後が急なので今日は北へ向かう尾根を進んだ。条件さえ良ければキノコが生えるだろうと思われる、コナラを主にした雑木林でとても気持ちがいい。

まっすぐ下って針畑川を渡り対岸の道路に登るつもりでいたが、右側の雑木林に惹かれるものがあり、思わずそちらへ下ってしまった。しかし結構急な下りであり期待したキノコも見つからず、わざわざ予定を変えるまでもなかったようだ。針畑川に下りついても道はなくしばらく河原を歩いたが、芦の茂みに進路を絶たれ対岸の道路に上がることにした。

車道を10分ほど歩けば出発地16時30分着。秋の陽は釣瓶落とし、帰りの準備をしている間にいつしか夕闇が迫っていた。


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