「芦生の森から」05.06.05.


ハクウンボク

アカシデ

ホウノキ

ミズキ



サワフタギ

コアジサイ

珍しい青緑のギンリョウソウ

奥ノ谷の滝

カジカ

ツベタ水谷の滝

中山谷山山頂付近

霧雨のち曇り・芦生〜奥ノ谷〜奥ノ谷山〜ツベタ水谷〜アシ谷〜中山谷山〜坂谷〜櫃倉谷〜須後

須後までの道中、車窓からもたくさんの花を見ることができた。トチノキやホウノキは遠くからでもそれと判る。タニウツギ、ウツギ、エゴノキ、ハクウンボク、ツルアジサイ、ミズキと今年は花が多い。

天気予報では昼から晴れてくるらしいが、須後では細かい雨が降っている。須後の駐車場に車を止め、積んできた自転車に乗って一つ下流の集落「芦生」(バス停名は「口芦生」となっている)まで下って道路脇に自転車を止める。

出発午前7時10分、車道を50mほど歩き、お寺(らしくはないが)の横から踏跡を辿って奥ノ谷へ入って行く。道路からでも見える岩壁と、混んだ等高線から険しい谷であると予想していたので、万一のために普段は持たない40mザイルも入れてきたが、それでも少し緊張してしまう。

谷沿いの踏跡はすぐに不明瞭となり、流れの左右いずれかを杉林の途絶えるまで進んでいくと、自然林に替わるところで突然滝が現れた。最初の斜滝を越えた所で渓流足袋に履き替え、その後連続する滝を越えて行く。

2m、10m(左を巻く)、1〜2mが5本ほど、10m、3m、10m、2m、3mと越えていくと岩壁に掛かる10mの滝。右側を木の根に掴まりながら越えると一旦滝場は終わる。その後は2m前後の小滝が10本ほど出てくるだけで(1箇所高巻きがある)緩やかな流れとなり、やがて同水量の二股。これを左に入り、時々出てくる小滝を5つほど越えると最後の滝場だ。水量は少なく迫力はないが滝が連続する。斜滝が5m、5m、10m、5mと続き、2段7m、2段7m、2段8mと続いて、20m斜滝で滝場が終了(全部登れるが一部ホールドが細かいところがある)。

その後は流れを最後まで詰めて、笹に掴まりながら急登すると稜線に出る。ここまでずっと自然林の中であり、なかなか楽しい谷であった。右に少し歩けば奥ノ谷山、山頂午前8時40分着。霧がかかってほとんど視界がきかない。

今度は山頂から北側に広がる手入れの悪い植林地をツベタ水谷に向かって下って行く。が、ずっと植林の中では山歩きの楽しみがないというものだ。やがて流れが現れ、両側から花を付けたタニウツギが覆いかぶさるところは、さながら花のトンネルのよう(実際にはそういう所は歩き辛いので、綺麗だと思う余裕はないが)。水量が増えてくると幾分歩きやすくなり、時々現れる小滝も簡単に下って行く。

カツラの大木が一本取り残されたように立っており、そのすぐ下右岸から入る谷が出合う所で荒れ果てた林道が現れた。これから滝場だというのに林道とは詐欺に遭ったようなものだが、せっかくだからこのまま谷を下り続けることにしよう。幸い林道は高く巻き、やがて隣の谷側へ乗り越しているらしく林道敷設による影響は少なかった。
ここまで下ってくると水量もあり、小さいながら滝や岩もなかなか堂々としている。途中二度細引き(20m)のお世話なったが、けっこう楽しみながら下ることが出来た。

(6月18日にここを遡行した。林道に出合うまで5m前後の滝が5個と2m前後の滝が20個ほど、そしてナメ滝が5個ほどあり、巨岩が乗った滝1個を除いて全部登れた。)
左岸から入る谷を合わせると橋が現れ林道が横切る。これから先には何もなさそうなので、長靴に履き替えて林道を歩くことにした。ここ2〜3年間ほど車が通ったような形跡がなく、クラマゴケが林道を埋め尽くしている。200mほど下ればアシ谷の林道との分岐、午前10時10分着。

今度はアシ谷を登るべく林道に入ったが、すぐに橋が落ち、その先もわずかで車道は終わっていた。地形図にある歩道はほとんど廃道化し、痕跡程度。ずっと人工林が続き、今日の天気のように気持が晴れない。

やがて長靴では越えにくそうな滝が現れたので、再び渓流足袋に履き替えることにし、ついでに少し早いが一度目の昼食を摂ることにした。流れの音に掻き消されてはいるものの、アカショウビンの声が幾度も聞こえてくる。

その後も小滝が次々と現れるが、簡単に越えられるものばかりで物足りないほど。二股(地形図の歩道が消えるところ)で自然林に替わり、やっと柔らかな景観に安らかさを感じることが出来るようになった。この谷の最後も急で、笹を掴んで這い上がると中山谷山のすぐ南方、わずか歩けば山頂である。午前11時45分着、ここも霧がかかって何も見えない。

休むことなく稜線を東に向かっていくと、前方から二人の登山者が。こんな所で、しかもこんな天候の中でと思いながらも、出会ってしばらく話しているうちに、このホームページの愛読者であることが分かった。今日も私の紀行文を参考に来られたとのことであり、実際に活用して戴いているとは本当に嬉しい限りである。

辞してさらに東へ、次のピークから北へ伸びる尾根を坂谷に向かって下って行く。最初は原生林の柔らかな尾根であったが、わずかで荒れた人工林に替わって興ざめしてしまった。こういうところは早く下ろう、どんどん下って坂谷12時20分着。標高600m付近の枝谷との出合、飯場跡らしく、錆びたトタン板や割れた食器類などが残されている。 

ここで2度目の昼食を摂り、坂谷を下って行く。坂谷はこれより下流一体が伐採されており、15年ほど前に櫃倉谷から入ったとき、その荒れた姿に愕然としたものであった。しかし年月を経た今日では、細いながらも自然林が広がっており、柔らかな山肌を取り戻しつつあるようだ。原生林に覆われた隣の権蔵谷とは比べるべくもないが、散発的に小滝が現れる程度の緩やかな流れは、あと10年あまりも経てば、きっと美しい流れになるだろう。

13時00分櫃倉谷に出合い、長靴に履き替える。この頃になり、ようやくわずかだが陽が射すようになってきた。横山峠を下ったところで二名の登山者に出会い(朝須後の駐車場で出会った方だった)、話しながら一緒に林道を下れば、いつの間にか須後、14時45分着。

原生林の中を歩く機会が少なかった今日は、何かしら満たされないものが残ってしまった。


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