「芦生の森から」05.05.04.


トキワイカリソウ

トクワカソウ

エンレイソウ

ハウチワカエデ

スゲ(オクカンスゲ?)

オオカメノキ

ブナ

ナナカマド

クマシデ

ホンシャクナゲ

ニリンソウ

ハルトラノオ

ホオノキ

イタヤカエデ

キンキマメザクラ

快晴広河原〜早稲谷(ワサ谷)〜小野村割岳〜天狗岳〜カヅラ谷出合〜小野村割岳〜広河原

広河原下之町に車を止め午前6時20分出発、ワサ谷林道に入っていく。出発してすぐにトキワイカリソウの花をたくさん見る。これだけまとまって見るのはあまりないので幸先がいいと期待感が高まってくる。

ゲートの鎖を跨ぎ越えて未舗装となった林道を奥に入っていくが、2kmほど行ったところで崩れた土砂が林道を埋め、車での通行は不可能となっていた。これで車に出会って不愉快な思いをすることもなく、安心して歩くことができるというものだ(林道は小野村割岳の直前まで延びているので、車で入ることができなくなれば草木の盗掘も少なくなることだろう)。

朝の山は野鳥の囀りでかまびすしいほど。オオルリ、センダイムシクイ、ミソザザイ、ヒガラ、ヤマガラなど。殊に肌寒いくらい凛とした冷気を震えさせて流れてくるオオルリの鳴声のなんと清々しいことか。

林道沿いでは、ミヤマキケマン、タチツボスミレ、ヤマルリソウ、ミヤマカタバミなど平凡な花しか見当たらず最初の期待はすっかり裏切られてしまった。林道は次第に傾斜を増しその上荒れて歩き辛くなる。谷を離れて尾根を登り始めると展望が開けてくるが、粗雑な作りの林道は殺伐とし、切り刻まれたむき出しの法面が痛々しい。林道終点午前7時45分、沢沿いの歩道を少し入って急傾斜の尾根道に入って行く。

トクワカソウの咲く杉林の道を登ればすぐに小野村割岳の山頂、午前8時00分着。長い殺風景な景観の中を歩いてきただけに、目の前に広がる芦生の森の柔らかさがいつもよりもひと際印象深い。それは、鮮やかな芽吹きの季節だからかも知れないが。山頂からは城丹国境尾根を天狗岳目指して辿っていく。

天狗岳までは幾つも起伏を越えていくのであるが、大きな起伏はなく薮もほとんどないので何度歩いても楽しいところである。ちょうど新緑の季節、柔らかな色彩をした芽吹きは美しく、その形態は感動的だ。遠くからはツツドリの声が聞こえ、頭上からはカラ類の囀りがうるさいほど降ってくる。天狗岳10時00分着、少し早いが昼食にする。

アカゲラかアオゲラだろう近くからドラミングの音が聞こえ、目を閉じながら乾いた冷ややかな風を体に感じているうちに、何時しかウトウトとしてしまったようだ。30分ほどの長い休憩の後、天狗岳西尾根を下って行く。この尾根も緩やかで楽しいところであり、今日は尾根の中央辺りにある平坦地を彷徨ってみた。

いつもは通過するだけであったが、尾根から離れて眺めれば期待に違わぬ素晴しい景観が開ける。ブナとミズナラと杉の大木が作る広々とした空間が心の波動に共鳴し、その場を離れ難くしてしまう。分岐で七瀬へ下る踏み跡を離れ、カヅラ谷出合に連なる尾根に入っていく。緩やかで広い尾根から急で痩せた尾根へと替わるとシャクナゲの花が現れ、見飽きるほど夥しい花の森はカヅラ谷出合まで続いた。

トロッコ道に出合い午前11時35分カヅラ谷作業所へ。この辺りは連休とあって多く人が訪れており、ちょっとした観光地のような光景だ。早々にこの場から立ち去りたくなって、わずか休んだだけで再び森の中に入ることにした。

出合から南へ急な尾根を登っていくが、木に掴まらなければ登るのが大変なほどの急斜面だ。一気には上り詰めることができず途中で一休み。由良川の対岸からはジュウイチの鳴声が聞こえてくる。刑部谷出合から上ってくる尾根に出ると幾分傾斜は緩くなるが、気が抜けるほどのことはなく、もう少しもう少しと思いながら結局911mのピークまでやって来てしまった。

12時50分着、佐々里峠へ向かうという登山者と少し話しをして、今日2度目の小野村割岳12時25分。山頂は通過して一旦ワサ谷の林道まで下り、100mほど戻って滝の懸かる沢に入って行く。滝を巻き上がると後は全くの緩やかな谷で、杉林の中をどんどん奥へ詰めてオクカンスゲ(と思われる)の広がる斜面を登ると、最後に951mのピーク付近に上りついた。

広い尾根を西へ少し進み、南に下ってワサ谷東尾根へ入っていく。最初は歩きやすい尾根道であったが、突然視界が大きく開け大造林地に出て来た。鹿除けのネットが張られているが、管理する人がいないのかあちこち倒れたまま放置され、鹿が自由に行き来できるようになっている。従ってヒノキの苗木もすっかり食べられて無残な姿だ。

この造林地は最初林道らしいものがあったが、すぐに終わり後は笹原に続く踏跡を追いかけていく。ところがこれも次第に不明瞭となってしまい、最後はとにかく歩き易いところを選んで歩くことになる。造林地が終わると胸までの深い笹薮に突入、このままヤブコギが続くのかと途方に暮れてしまったが、100mほど進むと笹が薄くなって明瞭な踏跡が現れ歩きやすくなった。造林地に出てからここまで700mほどだろうか、この間がなければ歩きやすくて楽しい尾根なのだが残念だ。

その後は気持ちのよい雑木林の尾根道となり、こんな道ばかりであれば何度でも訪れてみたくなるところである。737mのピークから西へ急斜面を下り、いったん平坦となるが再び急斜面(珍しくアスナロの人工林である)を下り続けると、最後にワサ谷に下り着く。対岸の林道に這い上ってそのまま下ると、やがて出発地の広河原下之町。16時ちょうど着。日中は初夏のように暑かったが、涼しい風が山里の春を吹き抜けていた。

追記:この日も1頭の鹿の死体を見たが、更に5月7日に7頭、5月15日に4頭の新たな死体に出会った。今年になってから16頭である。おそらく芦生周辺では200頭前後の鹿が餓死したものと思われる。


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