「芦生の森から・番外編」05.03.20〜21


笹ヶ峰稜線から笹ヶ峰

笹ヶ峰稜線から美濃俣丸

笹ヶ峰稜線から能郷白山

笹ヶ峰から美濃俣丸

笹ヶ峰から金草岳

雪洞から

美濃俣丸から笹ヶ峰方面

美濃俣丸から三周ヶ岳

三周ヶ岳への途中から美濃俣丸

三周ヶ岳への途中で

カイドウノ尾分岐から美濃俣丸

三周ヶ岳から白山方面

三周ヶ岳から三国岳方面

三周ヶ岳北方から美濃俣丸

三周ヶ岳から御岳方面

番外編  越美国境 笹ヶ峰〜美濃俣丸〜三周ケ岳・曇りのち雪

早朝に広野ダムサイトへ到着したが、例年開いている林道が雪で塞がったまま除雪がされていない。予定どおり行けるかと不安になったが、やむなくダムの左岸林道を歩くことにして、午前7時過ぎ出発。

気温が氷点下になっているので、固く凍った雪の上は土のように歩き易い。上流に出来た新しいダムサイトに午前7時50分着、そのまま先行者の踏跡を追って鈴谷の林道に入って行く。踏跡はS字カーブの林道をショートカットして続いており、これに従って着いて行くと、やがて林道から離れて912mのピークに続く尾根に取り付いていた。

地図で位置を確認しながら、素直にその踏跡を追って上って行くと、とうとう休憩している数人の先行者に追付いてしまった。コーヒーブレイクするという彼らと別れて先を進む。辺りは雑木林となっており、とても気持ちのいいところだ。

912mのピークに立つと、目の前に美濃俣丸から笹ヶ峰に続く稜線が迫り、否が応でも登高意欲が湧き上がってくる。軽く朝食を摂り、いくつかのアップダウンを繰り返しながら登って行くと、やがて1113mの小ピークへの急登と、それに続く山頂直下の急登が待ち構えている。

これを越えればいよいよ美濃俣丸、私を追ってきた先ほどのパーティーの1人と一緒になって山頂に飛び出した。午前10時45分、曇ってはいるが視界は良好で、奥美濃の山々から伊吹山まではっきりと見ることができる。山頂に30分ほど居て、荷物を置いて空身で笹ヶ峰に向かうことにした。

昨年登って以来、笹ヶ峰に至る稜線の素晴らしさの虜になっていたので、再び出会えるかと思うと心が弾む。ただ今回は荷が重く、山頂までにかなりのエネルギーを消費してしまってもう足がだるい。

稜線はところどころに吹き溜まりを作り、20cmほど沈むこともあるが、これをできるだけ避けるようにルートを択べば、カンジキが無くてもあまり沈むことはない。この辺りも今年は雪が多いのであろう、巨大な雪庇が美濃側に連なって張り出している。

笹ヶ峰山頂13時00分、ついでに北方の小ピークまで足を伸ばす。そのピークに立てば、谷を隔て連なる金草岳〜冠山〜能郷白山に続く稜線が指呼の距離に望まれる。立ち去りがたいが戻らなければならない。

振り返るとなんだか空の様子がおかしい。と、先程のパーティーの人が言っていた「今日は天気が悪くなる」という言葉を思い出した。急いで帰らなければと思うものの、足が重くて思うように動かない。

やがて三周ケ岳から上谷山方面が煙ってきた。雪が降ってきたのだ!ここまで雪雲がやってきたらどうしよう。全くの空身では万一のときに対応の仕様がないではないか。

穏やかではない気持ちを抱きながら、中ほどにある1288mのピーク辺りまで戻って来ると、急に空が明るくなり薄日さえ差してきた。と、固まった気持ちはすっかり緩み、雪の稜線歩きを楽しむ余裕さえでてくる。

美濃俣丸山頂14時45分着、山頂には三周ケ岳方面から来たというパーティーが。私の荷物が取り残されていたので、心配していただいたようだ。

話によればこれから天候が悪くなるとのこと、山頂付近でツエルトを張って泊まろうかと思っていたが、急遽変更して雪洞を掘ることにした。積雪量は数メートルもあろうか、何処でも掘ることができそうだ。

頂上の東側の適地を選び掘り始めるが、奥の方が堅くてなかなか掘り進めない。「スコップでこじて剥ぎ取る」と言えばぴったりか。何度も休みながらではあるが、1時間45分ほど要して何とかそれらしいものが出来上がった。ちょうど大きな塊の雪が降り始めてきたので、吹雪になるまでには何とか間に合ったようだ。

ザックを中に入れ、入口をブロックで塞ぐとやっと落ち着いて休むことができる。ウイスキーの『オンザスノー』を飲みながら夕食の用意。今回も力ラーメンである。

午後9時頃目覚めると、入口のブロックの隙間から雪が吹き込み、こんもりと小山を作っていた。外は吹雪なのだ!雪の吹き込んでくる穴を塞ぎ、横穴をピッケルで開けるがすぐに塞がってしまう。そこでスコップでブロックの一部を壊して大きな穴を開けたが、これもどんどん塞がってくる。

と、かつて乗鞍岳で過ごした悪夢のような一夜が髣髴して蘇ってきた。雪の少ない年で吹き溜まりに雪洞を掘ったため、一晩吹雪かれて入口が塞がり、朝まで何度も掘り直しているうちに、とうとう入口が3m近いトンネルになってしまったのであった。

ここは吹き溜まりというほどのことはなく、また傾斜もあるので、あの日のようなことにはなるまいと思いながらも不安は拭えず、これを消すため持ってきたウイスキー全部を飲み干し、酔いの勢いを借りて眠りに付いた。次に目覚めたときには吹雪は治まり、穴からはもう雪は吹き込んではいなかった。

◆◇◆

3月21日 快晴・午前5時30分起床、少し明るい。早速朝食の用意、パンとスープ、そしてポットに入れて行く紅茶を作る。入口を開けると外は風が強そうだ。

入口付近が少し赤くなってきたので慌てて外へ出て写真を撮る。陽の光が弱くて鮮やかな朝焼けとは言えないが、三周ケ岳のピークが少し赤くなった。

天候は完全に回復したが風が強く風速10mほどか、あちこちの稜線や頂から雪煙が舞い上がっている。雪洞に戻り出発の準備をしながら風の治まるのを待つ。パッキングが終わる頃、ちょうど風が鎮まってきた。午前7時過ぎ出発。

朝日に輝く三周ケ岳に向かって、新雪の国境稜線をたどる、その身震いしそうなほどの歓び。今ここに居るのは私だけであり、私一人だけがこの歓びを味わっているのだと思うと、言い知れぬ幸福感が湧き上がってくる。

昨夜の新雪があちこちに吹き溜まりを作っており、最初のコルでカンジキを着けた。いくつかのピークを越え、その一部は頂を巻き、午前9時10分カイドウノ尾分岐着。昨夜ここで幕営した者があったのであろう、新しい足跡がここからカイドウノ尾を下っていた。

ここに荷物を置いて空身で三周ケ岳に向かう。小さなアップダウンが連続するが思ったほど時間はかからない。1252mのピーク手前からトラバースして三周ケ岳南方のコルに出る。

もう少しで山頂というところで、前方から下ってくる2名の登山者に出会った。尋ねると、笹ヶ峰から不動山に至り、金丸谷に下って流れを渡渉し、三周ケ岳北尾根を登って来たとのこと。そのルートを思い描いて「凄いですね」と思わず叫んでしまった。

山頂午前10時20分着、これ以上の天候はないと思われるほど素晴らしい天候で、展望も素晴らしく、白山や能郷白山は勿論、御岳や北アルプスの一部も望むことができる。翻って南西側を眺めれば遠く伊吹や比良の稜線が、そして江若国境の山々は本当に間近だ。

しばらく山頂に留まり、二人の後を追うように往路をそのまま辿る。途中で二人を追い越し、荷物を置いていたカイドウノ尾分岐に午前11時30分帰着。荷を背負うと、しばらく空身だっただけに重さがこたえる。

朝のトレースを追うようにカイドウノ尾に入り、いくつかのピークを越えて下っていくと、次第に里山の雰囲気が漂ってくる。山を離れていくのだと意識した瞬間、微かな寂しさが胸を過った。

トレースに助けられ、判りにくい分岐も無事通過し、やがて黒谷山へ(この山頂手前の痩尾根の通過は、少し厄介だったが)。山頂からは眼下に広野ダムが望まれ、山旅も終わりに近づいたことを教えてくれる。

その先もトレースを信頼して後を追ったが、途中で誤っていることに気いて隣の尾根へトラバース。ルートを修正してさらに下り続けると、いよいよ雪が腐ってザクザクとなり、薮も現れて歩き辛くなる。

最後は杉林の中を一気に下って、昨日の朝通った林道に飛び出す。13時55分着、岩谷川に架かる橋からおよそ1km上流、予定通りの場所であった。

僅かの山旅ではあったが、下山後2日間ほどは雪の山を旅しているかの如き夢心地で、なかなか仕事が手につかなかった。


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