「芦生の森から」05.01.10


久多から三国岳

久多川の林道

白銀に輝く山

ツララ

天狗岳とブナノ木峠

三国岳と湖北の山々

雪を載せたアシウスギ

三ボケ支流の源頭

霧氷

三国岳山頂

三国岳から比良の山々

三国岳山頂直下

久良谷

カモシカ

2005年1月10日・晴れ・久多〜城丹国境〜三国岳〜久多

花折トンネルを抜けたところでタイヤチェーンを着ける。この辺りの積雪は50cmほどだが、葛川梅の木から久多川を溯るにつれ次第に積雪量が増え、久多辺りでは80cmぐらいにもなっている。除雪されている最後まで入り、身支度をして最初からカンジキを履く。

8時20分出発、カンジキを付けても40cmほど沈む。歩いているうちに、木の下それも杉の樹下が積雪量少なく歩きやすいことを発見し、林道の右・左と樹下を求めて移動しながら歩いた。

天気予報はあまり芳しくなかったが、青空が広がり朝日を浴びた山々は白銀に輝いて美しい。しかし気温は低く、ツララもあちこちに垂れ下がり、踏みしめる雪もふわふわしている。

途中で鹿に出会ったが、逃げるのも雪が深くて大変そうだ。跳んで逃げようとするのでかえって深く沈み、再び跳びあがるのに力が要って疲れるのであろう休み休み逃げて行く。見ていると可哀想だが正直言って可笑しい、そんなに急がなくてもこちらも歩くのが大変なのだから。

滝谷・岩屋谷出合9時10分着。岩屋谷林道を少し入って左側急斜面の杉林に取り付くが、この登りがあまりに急なので、四肢を使って這い上がることになる。杉林から自然林に変わると少し傾斜が緩くなり少しは歩きやすくなるが、替わりに雪が深くなって膝までのラッセルを余儀なくされとても辛い。

府立大学演習林の南縁歩道に合流すると視界が広がり、木立越しに三国岳〜経ケ岳方面の尾根や、先月登ったフカンド尾根が望まれて楽しくなってくる。しかし、相変わらず深いラッセルを続けていると、これからの予定を考えざるを得なくなってしまう。三国岳まで行けるだろうか?たとえ行けたとしてもどういうルートで下山すればよいのか?などと。

城丹国境尾根へ出る直前の上りが急で、ここでは膝まで使って2段階のラッセルとなった。国境尾根に上りついてやっと苦しいラッセルから開放される。

この辺りの滝谷側は伐採後間もないのであろう非常に視界が開け、雪原の向こうに天狗岳やブナノ木峠が望まれた。国境尾根を北上し936mピークに12時ちょうど着。

尾根上は風のためか、雪が少し締まっていて20cm程度しか沈まず、今までの2倍以上の速さで足が動く。この分だと三国岳までは行けそうだ。三ボケ支流の源頭は開放されたブナ林が広がっていて、つい誘われてしまいそうだが、さすがに今日は雪が深くて寄り道する気にはなれない。

久多からの登山道に合流する辺りから再び雪が深くなって、膝までのラッセルが始まった。既に十分すぎるほどのラッセルで疲れているところにこの試練。山頂はまだかまだかと思いながら一歩一歩足を上げる。三国岳13時30分、先週来たときよりも積雪量は30cmほど増えている。

今日は空気が澄んですばらしく展望が利く。比良山系は勿論、鈴鹿山脈〜霊仙〜伊吹(山頂は雲がかかっている)〜青い琵琶湖を隔てて湖北の山々と、芦生へ来て今までで最高の展望だ。少し昼食を摂ろうとしたが、疲れて食欲が湧かずわずかしか食べることができない。

少し留まっただけで、「経ケ岳へ続く尾根上の雪は締まっているだろうか?」と思いながら山頂を後にする。が、そんな願いをよそに、雪の量は一向に減ずることなく、尾根上も深いラッセルを続けなければならなかった。

ただ、下りはそれなりに楽で、白い稜線に第一歩を記しながら歩くことの爽快さは(経験しなければ解らないことであるが)、苦しい登りを経てもなお十分に報われる大きな喜びである。

下り終えて小さなピークが繰り返し現れるようになってくると、もう体力的な限界を感じ、885mのピーク北側から久良谷出合に続く尾根を下ることにした。尾根を離れるときは慎重にならざるを得ず、誤って途中で引き返すことなど想定できない。幸い視界が利いてほぼ確実だと判断できたので、安心して下ることにした。

下りは結構傾斜がきついが、雪が深いので思うようには足が出ない。しばらく下って谷底のようなところに出てきたときには、さすがに間違ったかと思って焦った。

尾根が左側(東側) の谷と同じ高さとなったためで、近いうちに右側(岩屋谷)に水の流れが変わるかもしれない。いわゆる「河川争奪」という現象がまさに起ころうとしているような所である。その後は小さなコブを越えて再び下り続け、最後の急斜面を一気に(とはいかないが)下ると久良谷出合だ。

15時10分、カンジキを外して岩屋谷の流れを渡り、ズボ足で林道へ上がろうとしたが、股まで沈んでとても歩くことができず、再びカンジキを付ける。これで無事帰り着いたようなものだと安心したが、沿道には覆いかぶさるような木立が少なく、深いラッセルからは全く開放されない。

途中、林道下の河川敷で木の芽を食べているカモシカに出会った。その距離10数m、なかなか私に気付かなかったが、気付いてからも悠然と立ち去るところは、鹿と違って堂々としたものだ。

やがて今朝のカンジキ跡にたどり着き、滝谷・岩屋谷出合に15時50分着。その後はカンジキ跡を忠実にたどればよいのであるが、すっかり疲れてしまってわずかの距離のなんと長く感じることか。途中2度目の昼食を摂ったが、少し食欲も出てきて今日一日で一番くつろいだ時であった。

前方に我が愛車を見出したときは、やっと帰りついたと本心からほっとしたものである、16時35分着。芦生も4年目の冬となったが、今までで一番雪が深かったような気がする。そして今までで一番疲れた日でもあった。


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