「芦生の森から」04.12.26


シデの冬芽

フカンド谷の林道

雪を被った杉林

ツルアジサイ

小野村割岳山頂

小野村割岳南東方面

経ヶ岳方面

フカンド山山頂

ヒバ

2004年12月26日・曇りのち雪・広河原能見町〜フカンド谷〜小野村割岳〜フカンド山〜久多峠(能見峠)

まさかこんなに雪が積もっているとは思わなかった。途中の花背峠辺りから路傍に雪の名残を認めていたが、能見川沿いの道に入って行くとどんどん雪の量が増えてくる。車を止めたフカンド谷林道入口では20cmほどの積雪。ここまで何とか夏タイヤで来られたが、帰りの久多峠は越えられるだろうか?

7時40分出発、これだけの積雪量を予想していなかったので、足元は長靴である。林道入口から誰も歩いていない雪の上を、一歩一歩たどることになる。(出発して間もなく橋が流されており、車での通行は不可能になっていた。)天気予報では冬型の気圧配置で、日本海側は終日雨の予想であったが、曇ってはいるものの時々薄日さえ差す。

林道終点8時35分、ここで谷は大きく二分し左俣のカヤンド谷に入って行くことにした。この辺りの積雪は30cmほどで歩道らしきものもありそうだが、ラッセルをするより流れの中を歩いたほうが楽だ。時々倒木が邪魔をして越えるのに難渋するが、幸い滝らしいものは無く、雪の中の沢歩きも乙なものである。水温はまだそれほど低くはなく、水に手をつけても身を切るような冷たさはない。

奥の二股で谷が細くなり、谷通しは難しそうなのでここから尾根へ上がることにした。辺りは杉の林であるが、もっこりと雪を載せた木々はさながらクリスマスツリーのよう。考えれば1日遅れのクリスマスだ。15分ほど登ると標高951mのピーク、9時55分着。この付近は人がよく通るのだろう、道標代わりのテープもしっかりと付けられている。北へ少し下ると城丹国境尾根、向こうは芦生の原生林だ。

国境尾根を西に向かい小野村割岳目指す。この辺りの積雪量は40cmほどだが、表面が硬くなって中が柔らかく足を載せる度にズボッと沈み、体力の消耗が著しい。山頂10時35分着。山頂の南東面は緩やかで広々とした杉の植林帯だが、雪に覆われてまるで北方の針葉樹林のように素晴らしい。この頃から少し雪がちらつくようになってきたが、風もなく吹雪になるような様子は今のところない。

山頂にわずかの間留まり、すぐに引き返す。帰路は踏み跡を忠実にたどればよいのでルートファインディングの必要もなく、また足がズボッと沈むこともないので半分ほどの時間で戻ることができた。標高951mのピーク北まで戻り、さらに国境尾根を天狗岳方面に向かう。

標高927mのピーク近くになって急に積雪量が増え、膝の下まで沈むようになってラッセルが辛くなってきた。ピーク11時50分、ここで少し昼食にするが、温かい飲み物を忘れ、冷たい食事だけじゃ寒くてゆっくり休んでいられない。早々に出発するものの雪が深くて思うように足が進まず、疲労感も出てくる。

ここから安曇川水系と桂川水系の分水嶺を久多峠に向かって歩く。視界が開けた東側には、経ヶ岳方面が間近に望まれたが、黒い雲が芦生側から覆ってきていずれは雪が降り出すに違いない。一旦下ったあと、標高897mのピークへの緩やかな上りがとても長く、深い雪と格闘しているとへとへとになってしまった。今までのラッセル疲れがどっとやってきて、しゃがみ込んで休むこともしばしば。

ピークに13時ちょうど、これを過ぎると大した登りがなくなるので助かる。南へ進むにつれ雪の量も少しづつ減ってきて歩き易くなり、フカンド山(深洞山)13時25分到着。

山頂からの稜線にはしっかりとしたテープが付けられており、軽率にも地図を確認せずにそのままテープを追ったので、誤って久多のほうへ少し下ってしまった。間違いに気付いて山頂まで引き返し、久多峠への尾根を捜すが、その頃より吹雪き始めて視界が悪くなっており、はっきりとは確認できない。とりあえずそれとおぼしき尾根を下るがすぐに誤っていることに気づき、トラバースして目的の尾根に乗る。

標高750m辺りまで下ってくると積雪量も格段に少なくなり、また雪も緩んで夏道のように歩き易くなってきた。なぜかこの尾根にはヒバ(アスナロ)が多く、きっと生息環境が合っているのだろうが、芦生周辺ではこれほど群生しているところを知らない。

尾根の久多側はずっと自然林であり、また能見側もほとんど自然林なので歩いていてもなかなか楽しいところだ。ただ、ヒバ、ソヨゴ、アセビなどの常緑の樹が多く、雪の季節でも青々として薄暗いほど。最後のピークで2度目の昼食を摂り、14時15分舗装道路が越える久多峠に飛び出した。

それにしても長い尾根だった。無積雪期ならともかくとして、積雪期にここを通るのはもうこりごり。道路を能見側へ下りフカンド谷林道入口へ、今までの雪がいつの間にか雨に変わっていた。


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