「芦生の森から」04.11.21


雲海

ハウチワカエデ

コハウチワカエデ

ウリカエデ

コアジサイ

ブナシメジ

ナメコ

ヒラタケ

ハチノスタケ

カワラタケ

炭焼き小屋の跡

美しいナメ

中ノツボ源流

中ノツボ最後の滝

2004年11月21日・晴れのち曇り・須後〜中山谷山〜坂谷〜権蔵谷〜中ノツボ谷源流〜横山峠〜須後

須後の駐車場を午前6時40分出発。少し寒いが歩いているうちに暖かくなるだろうと、多少薄着で歩き始めた。しかし櫃倉谷の林道をしばらく歩いても、暖かくなるどころかかえって寒くさえなってきたので、途中から合羽の上着を身に着ける。

少し霧がかかっていて天候は冴えないが、道中越えた佐々里峠は雲の上であったから、上は晴れているだろうと楽観的になれる。

櫃倉林道に入って15分ほど行くと、左側枝谷沿いに林道が分かれる。今日はこの林道に入ることにした。歩き始めてすぐのところに土砂崩れがあり、自動車での通行は困難となっていて、最近車が通ったような形跡はない。

上るほどに明るくなってきて霧が晴れ、やがて雲海の上に飛び出した。こういう光景に出会うのは実に久しぶりのことである。名残の紅葉を楽しみながらさらに上へと上っていく。

ハウチワカエデ、コハウチワカエデ、ウリカエデ、ヤマモミジなど赤く色づいているのはほとんどがカエデの仲間、黄色く色づくのはタカノツメ、ダンコウバイ、クロモジ、コアジサイなど。

やがて林道は終わり、そこからはヒノキの植林された尾根上に続く細々とした歩道をたどる。上り詰めたところが奥谷山から中山谷山へ連なる稜線上の766m標高点、『京都大学』なる境界標が立てられているところである。8時05分着、ここから稜線を中山谷山へ向かうが、落葉した自然林の尾根は歩いているととても気分がいい。

中山谷山8時20分、山頂からすぐに坂谷目がけて急斜面を下っていく。坂谷の下流一体は伐採されているが、この辺りは原生林が残っていて、芦生の去り行く秋を楽しむことが出来る。しかし、意外と両岸が迫っていて谷が狭く、小滝やナメが多く通過に手間取った。

その上古くなっているが食用になるキノコが残っていて、これを戴いているとなおさら時間がかかってしまう。

8mほどのナメ滝を下ると左岸より大きな支流が合流し、今度はこれを溯ることにする。この谷には滝らしいものはなく、また最後の詰めも楽で簡単に稜線に登りつくことができた。若丹国境尾根、向こうは若狭であるが、残念ながら少し霞んで若狭湾までは望めない。

国境尾根を東に進み、692m標高点の手前のコルを権蔵谷へ下っていく。この谷の上部は広くて緩やかであったが、下ってくると小滝が続きここも通過に手間取った。権蔵谷本流に出合い広々とした緩やかな谷間に飛び出すと、一気に開放されたような気分になる。

これから先には難所がなく距離があっても速い、気がつけばいつの間にか櫃倉谷本流だ。11時10分着、ここで1回目の昼食を摂る。この辺りから上流の櫃倉谷は大きく開け、ほとんどの高木が葉を落とした今頃はとても明るい。10分ほど上流へ歩くと右側より大きな支流が出合う。

出合いに炭焼き窯の跡があって人臭さも残っているが、石組みさえ苔むして今では自然に溶け込んでしまっているようだ。

この谷の下部にはおそらく粘板岩であろう岩盤を流れるナメが続き、それ自体はとても美しく優雅であるが、惜しむらくは木屑がナメを塞いで景観を壊していることだ。谷の最上部に付けられている林道のせいであるとしたら、まことに残念の極みである。

上流で谷が二分するので右に入り(左へ入ると最後に林道へ上りついてしまう)、谷を詰めて尾根に上がり、これを上り詰めると788mの標高点に達する。12時ちょうど到着、先の台風23号の影響で大きな木が幾本も倒れ、そのぽっかり空いた隙間からは杉尾峠方面が望まれた。

ここから北東に向かう尾根を下り、最初のコルを右に下るとわずかで中ノツボの源流だ。流れを下り始めるとちょっとした淵が幾つか現れ、長靴で通過するのに骨が折れる。さらに下ると左側よりほぼ同水量で合流する谷があり、今度はこの谷に入ることにしよう。

入り口付近は30年ほど前の伐採で、若木が生えるだけの林となって魅力はないが、奥に進むほどに原生的景観を呈し期待を持たせてくれる。広々とした谷の中を緩やかに水の流れる様は、野田畑辺りに少し似ているだろうか。このまま最後まで谷を詰めてみたいが、残念ながら遊んでいる時間があまり残されていない。

断念して途中で右から入る支流に入り、これを詰めると中ノツボ林道の二股に出て来た。上りついた反対側の谷が原生林のようなので、今度はこの谷を下ることにして入っていくと、ほんの50mほどで原生林は終わってしまった。

「まるで詐欺のようだ」と思いながらも、仕方なくどんどん下っていく。土砂に埋められているせいか伏流になっているところが多く、簡単に下ることができる。再び中ノツボ本流に出合うと、そこは本流最後の滝の落口であった。これから下流は険しくとても簡単には下れない。

出合の南側尾根を登り、さらにその南側の谷へ下って谷を詰め、尾根に上がって少し歩けば横山峠に続く尾根のピークにたどり着く。午後2時30分、ここで2度目の昼食を摂ることにした。

雲は多いが時々晴れ間も覗き、晩秋の日本海側の山としては申し分のない天候だ。ピークから横山峠目指して下るが、途中分岐の不明瞭なところが1箇所あるだけで、薮もなくそれほど傾斜のきついところもなく歩きやすいコースである。

この尾根が演習林との境界になっており、中ノツボ側の原生林が演習林だ。横山峠まで30分ほど、峠を下って櫃倉谷を渡り林道に上がると後はひたすら林道を歩くだけ。

色づく木々の名を数えながら、やがて出発地須後に午後4時ちょうど戻り着いた。紅葉の季節はほとんど終わろうとしているが、この辺りにはまだたくさんの人が訪れている。


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