「芦生の森から」04.10.11


巨大なムカゴ

櫃倉谷の滝の上から

ロクロ谷の滝

タヌキノチャブクロ

踏みそうになったマムシ

タイコ谷の滝

スッポンタケ

キエ谷

ナラタケ

ブナハリタケ

ガマズミ

2004年10月11日・雨が降ったり止んだり・須後〜ロクロ谷〜杉尾峠〜タイコ谷〜キエ谷〜須後

須後の駐車場を7時出発。雨が降っており最初からカッパを着ての出発となった。櫃倉谷の林道から見下ろす川の流れは、いつもの2倍以上ありそうだ。道中歩きながら花や果実を捜したが、ノコンギク、アキノキリンソウ程度の花と、ノブドウの果実しか発見できなかった。

今年の秋は熊がよく出没し、人間と接触したとの話が、頻繁に報じられている。ドングリのほか色々な果実の実りが悪く、餌を求めて里へ出ているようだが、実際山を歩くと果実が少ないのを実感する。熊にとっては本当に気の毒な話であり、人間との共存の道もあるはずなのだろうが、人間を襲った熊を殺戮する以外に対応がないのは、行政として全く能のない話である。

中ノツボ谷出合で長靴から渓流足袋に履きかえる。櫃倉本流は水量が多く長靴でも渡渉に苦労しそうな程で、ましてや登山靴など論外である。最近人が入ったような気配を感じないのは、そのせいかも知れない。坂谷出合8時25分。そこから少し上流へ行くと歩道が高く巻き始めるので、歩道と分れて川の中を歩く。

歩道が高巻いているのには理由があり、ここにちょっとした滝場があるのである。2mと8mの滝、水量が多いので豪快だ。8mの滝は右から巻き上がるが最初が少し悪い。その後しばらく平流となり、次いで2mの滝が3個と6mの滝が続く。これを越えれば歩道に出会うが、尚しばらくはきれいな流れが続くので、権蔵谷出合まで谷の中を歩くことにする。

つぎに左側右岸より入る谷がロクロ谷であり、出合に9時20分着、今度はこの谷に入って行く。穏やかな谷で、途中に8mほどの滝が2個あるだけだ。その名のとおり、昔は木地師の生活の舞台であったのだろうか、歩道の跡が残されている。奥の二俣を右に入りなおも溯ると、水が枯れる頃に峠が見えてくる。

峠に差しかかり向こうの空が見え出すと、何だか胸がわくわくしてくるものである。峠の向こうはどうなっているのだろうかと思って。この峠もそんな思いをさせてくれるが、実際には向こう側(若狭名田庄村)には、若い杉の植林地が広がっていてがっかりしてしまう。

9時55分峠に到着、これより若丹国境尾根を東へ進む。途中、昨年はなかった林道が若狭側から稜線まで達しており、崩された土砂がそのまま谷へ捨てられ、痛々しい傷跡が山腹を切り刻んでいる。「ああ、なんて酷いことを!!」

それにしてもこの若丹国境稜線のアップダウンの激しいこと、越えても越えても現われる。8個近くを乗り越えただろうか、やっと登山道に合流しようやく杉尾峠、10時35分着。ここで少し朝食を摂る。

雨は止んで視界が効くようになったが、若狭湾までは望むことはできない。峠から30mほどシンコボ側へ寄った小ピークが虫谷への下降点、道標がつけられているが、分岐があるのを知ったのは最近のことだ。下降路は、東側の自然林と西側の人工林の境界尾根上につけられており、最初は急で踏み跡程度であったが、やがて勾配が緩くなると歩道らしくなってくる。

が、安心したのはつかの間、置いた足のわずか20cm余りのところにとぐろを巻いたマムシが。薄い渓流足袋のままだから、慌てて足を引き上げた。それから20m程下ったであろうか、今度は子供のマムシがとぐろを巻いていた。連続して見つけるともう風景どころではなくなってしまう。棒切れを拾って足元前方を叩きながら、目は歩道にはり付けられたまま、とにかく少しでも早く下りつくことを願いつつ足を運んだ。

タイコ谷出合11時15分着、すぐに谷に下り流れの中に入る。これで大丈夫だろう。ここでUターンし、今度はこの谷を溯って再び若丹国境尾根を目指す。しばらく行くと岩場が現われ5mほどの滝が5個連続する。水量が多く豪快で、そのうえ少し技術のいるところもあって楽しめる。それを過ぎると平凡な流れとなるが、やがて谷が3つに分岐した所に出会い、それぞれに滝を懸けていた。

どれを登ろうかとしばらく思案したが、一番面白そうな真中の谷を択んだ。最初の10mの滝を右から巻いて登ると谷は二分するが、尚も滝が続く左の谷を採り、12mと20mと連続してシャワークライム。そしてその上の30mのナメ滝も越える。カッパを着ているので登れるが、そうでなければもうシャワークライムなんぞの季節ではない。それから20mの滝は高度感があって少し緊張した。

これらを越えるともう滝はなくなり詰めに入るのであるが、雨が続いたせいか何時までも水がなくならない。いい加減のところで谷を離れ、急な尾根を登るとやがて傾斜が緩くなり、今年1月に泊まった平坦地に登りついた、12時20分着。

少し休んだ後、クツベ谷乗越から若丹国境尾根をシンコボ方面に向い、最初のピークから反対側の岩谷へ下る。流れに出るまでは急だが、その後は小さな滝があるだけの緩やかな流れである。上谷12時55分着、野田畑側へ少し下って今度は南側のキエ谷に入る。

この谷も最初は緩やかで、滝らしいものはほとんどない。途中にあった倒木でナラタケを見付け、少し頂いて行く。最後に急斜面を這い上がって稜線に至り、これを南へ少し歩けば中山尾根(中山へ続く稜線)に出合う。中山尾根を西へ進み、ケヤキ坂分岐のピークに14時00分着。

少し遅いが昼食を摂り、長靴に履きかえる。帰りの所要時間を考えると、ゆっくり休んでもいられない。早々に出発して林道へ下り、杉尾峠側に少し戻った分岐から支線の中ノツボ谷林道に入る。

1Kmほど歩くと林道が二つに分かれるので左を択ぶと、すぐに林道は終わってしまった。しかし付近を捜してみると、微かな歩道がさらに奥へと続いている。歩道をしばらく歩くと、右側中ノツボ谷源流方面に緩やかな広がりをもった原生林が現われた。中ノツボ谷の源流は全て伐採されてしまったと思っていたので、こんな広い原生林が残っていることを知り、とても嬉しくなる。

時間は多少遅いが、せっかくだから少し立ち寄ることにしよう。三国岳辺りに似た雰囲気の原生林は、そこに居るだけで十分癒される所だ。森の中を巡り歩いている間に、キノコで真っ白になった倒木を見付け、そこに生えていたブナハリタケを少しだけ頂いた。

再び尾根に戻って先を進んだが、林道と歩道に安心して現在地の確認を怠っていたので、尾根の分岐を誤ってしまったようである。50mほど下っておかしいと気付き、戻って再び下り直す。この先の歩道は更に不明瞭となり、テープもまったく気まぐれとしか思えないほどまれに現われるだけ。

やがて人臭さを感じると、「カシノナガキクイムシ」によるナラ枯れ調査地点に出て来た。ミズナラにテープが巻きつけてあり、踏み跡もしっかりしている。これからは楽々と下れるかと思ったが、調査地へのルートはこの尾根には付けられていないらしい。下るほどに踏み跡は消え、やがてアセビの薮さえ現われてきた。

それほど苦労するほどの薮ではないとは言え、いつの間にかテープもなくなり、気が付けば純然たる獣道に替ってしまっている。更に下ると傾斜が強くなり、ツガとゴヨウマツが現われると、まるで亜高山帯の森のよう。瀬音が間近に聞こえ最後に杉林に飛び出すと、そこはもう内杉谷と櫃倉谷の出合だ。15時30分着、後は林道をたどるだけ。

行きには気が付かなかったが、ガマズミの実が赤く実っていた。少し口にしたがまだまだ酸っぱく、今度通るときの楽しみに残しておこう。16時ちょうど駐車場着、終日雨が降ったり止んだりしていたが、やっとここに至って晴れ間が現れてきた。


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