「芦生の森から」04.09.23


府立大学演習林入口

久良谷最大の滝

アシグロタケ

アキチョウジ

タマゴタケ

シイタケ

由良川付近の草鞍部

アキギリ

名称不明のきのこ

大谷出合付近の由良川

マイタケ

カエンタケ

大谷

無名谷の滝

2004年9月23日・曇り一時雨・久多〜久良谷〜経ケ岳〜三国岳〜涸谷〜大谷〜久多

6時20分、久多の岩屋谷入口を出発。随分涼しくなりTシャツ1枚だけでは寒いくらいである。林道を15分ほど歩き、三国岳登山口の少し手前、右側から流入する久良谷へ入って行く。二俣までは歩道跡のようなものがあり、長靴のままでも楽に歩くことができる。

途中で大きな牡鹿に出会ったが、これからの季節は発情期らしく気をつけなければならない。その鹿が駈け去った後、今度は褐色の小動物が視界をよぎった。去って行った方向を見ると、イノシシの子供「瓜坊」である。近くに親イノシシがいるかもと注意深く捜すと、さらに3頭の瓜坊がちょろちょろしていた。が、親イノシシはいないようである。

二俣で渓流足袋に履き替え、シャワークライムをしても大丈夫なように更に上下の合羽も身に着ける。7時ちょうど出発、早速流れの中に足を浸すが、少し冷たくなってきたようだ。しばらくは何の変哲もない谷であったが、次第に傾斜が強まり5mまでの小滝を数個越えると、眼前の視界を塞いで峻立する大岩壁が現れた。

門のように立つ岩壁の間を抜け、7mと12mほどの滝をそれぞれシャワークライムすると、頭上より降り注ぐかのような20m余りの滝の真下に出る。この滝には全く手も足も出ないので、右側から巻き上がるより仕方がないが、これが凄い。

一旦巨大な洞窟のようにえぐれた大岩壁の下に這い上がり、次いで木をつかんで落口に上がるのであるが、初めて登った時は本当に越えられるのだろうかとひどく不安になったものであった。その次の10mの滝は真ん中まで左側を登ったが、その上は自信がなかったので左へ逃げて木をつかんで登った。

これで滝場は終わるのであるが、わずかな距離とは言えこれほど荒々しい滝場は芦生周辺では出会ったことがない。その上の釜を持った2mほどの小さな滝を越えると二俣、7時40分着。

ここを歩道が横切っており、その昔には往来があったようである。二俣を右に採り、経ケ岳へダイレクトに上っている谷に入って、水の涸れる当りで長靴に履き替える。山頂まではわずかで、8時20分着。これより三国岳への長い稜線を行くことになる。

歩いていると遠くから「ドン、ドン」と遠雷のような音が聞こえてきた。雷鳴かと一瞬身構えたが、よく考えると饗庭野の自衛隊演習場にさほど遠くはないのである。つまり大砲の音だったのだ。それにしても静かな山歩きには、全く対極の音である。

三国岳山頂に立ち寄り(9時25分着)、再び稜線を北へ進んで岩谷峠方面と分かれて西へ延びる大きな枝尾根に入る。そしてその尾根を20分ほど歩き、今度は由良川方面の急斜面を涸谷に向かって下りることにした。谷には普通に流れがあって、なぜ「涸谷」なのか名前の由来がよく分からないが、ともかくこの谷には大きな滝がないので下るのも容易である。

由良川間近になって右側より流れ入る魅力的な谷があり、誘惑に負けて入って行った。少し上がるとすぐ隣の谷との鞍部に出るが、そこは広々としたとても気持ちのいい所だ。ただ、ここにも「カシノナガキクイムシ」に枯らされたミズナラの痛々しい姿があり、やがて芦生中のミズナラが全滅してしまうのではないかとの危惧を抱かずにはいられなかった。

鞍部を越えて隣の谷を下ると程なく由良川、出口付近にアキギリの群落があっが、花期は少し過ぎているようである。由良川着11時35分、今日は水量が少し多そうだ。由良川左岸の歩道をどんどん下り(といってもかなり高いところを通っているので、そこまではずっと上りである)、ツボ谷出合12時15分、ここで昼食を摂ることにした。休んでいると少し雨が降ってきたが、濡れる間なく止んでしまうのでありがたい。昼食後も歩道をどんどん下り、右岸に渡って大谷出合の巻き道で、歩道と別れ川を歩く。

大谷出合午後1時ちょうど、これより大谷に入る。この谷はどこから来るにせよアプローチが長いので入山者が少なく、なんとなく原始の香りが漂うのは気のせいか。一ボケまでは両岸迫って荒々しい感じがするが、それを過ぎるととたんに穏やかになる。何度か来てはいるが、いつも急いで通過してしまったので気付かなかったのだが、立ち止まって見渡すと実にいい。

広々とした谷底を川が緩やかに流れ、苔むす地上にはまっすぐに生い立つ幾本かのサワグルミ。そして周囲を睥睨して天に枝を伸ばし点在するカツラの巨木が数本。どれをとっても私の心にストレートに入ってくる。かの野田畑が俗っぽくなってしまった今、芦生で最も心癒される場と言ってもいいかも知れない。

谷を更に溯ると、再び両岸が迫り小滝と渕が現われ二ボケが出合う。今日はこの二ボケと三ボケの間にある無名の谷を登ることにした。谷に入ってすぐに2段20mほどの滝が現れ、「意外と手強いかも」と少し気を引き締める。下段は登れないが上段は何とか登れそうであったが、途中で詰まるのは懲り懲りなので大事をとって右から全て巻き上がった。

この滝を越えると後はナメ滝が続くだけでいつしか水も涸れてしまう。再び長靴に履き替え最後の詰めに入ったが、これが本当に急だ。稜線が見えているのになかなか近づかない。そして稜線直前は更に急傾斜となり、とうとう木に掴まらなければ登れないほど。

城丹国境尾根に午後2時20分やっと到着、一休みしなければ次の足が出ない。しばし休憩して国境尾根を少し南下し、936mのピークから府立大学演習林の南側境界尾根に付けられた歩道を下る。

今日こそは岩屋谷入口目指して下りるべく、最初から地形図と睨めっこして歩いたので、歩道を離れる箇所もよく判り、予定どおり車を止めて置いたところにピッタリと下り立った。午後3時20分着。ここへ下りると最後はいつものように水浴びをして締めくくる。水はもう冷たく長くは浸かっていられない。

今年は最近になくキノコが多い。ツキヨタケやブナハリタケといった常連さんのほかに、タマゴタケやカエンタケなども見ることができた。たくさんのキノコに出合う山歩きは本当に楽しい。


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