![]() イワナシ ![]() キケマン ![]() ミヤマカタバミ ![]() ショウジョウバカマ ![]() キブシ ![]() タムシバ ![]() チャルメルソウで覆われた小滝 ![]() カエルの卵 ![]() トクワカソウ ![]() サンインシロカネソウ ![]() オオイワカガミ |
2004年4月10日・快晴 里ではほとんど「葉ざくら」となっていたが、芦生の須後ではまだちらほら咲きである。駐車場を午前7時55分に出発し櫃倉谷へ入っていく。天気は最高であるがその分よく冷え込んで少し寒い。 道端に花を探して歩くと、次々と小さな花が現れてくる。タチツボスミレ、スミレサイシン、イワナシ、キケマン、ミヤマカタバミ、ハルタデ、ショウジョウバカマなど。 そして木本では、かわいい桜のキンキマメザクラ、黄色い房を垂れたようなキブシ、白くて大きなタムシバの花が。林道脇にチャルメルソウでびっしり覆われた小滝があり、ここで水を汲む。 内杉谷林道と分かれて櫃倉谷林道に入るとすぐ対岸に、下草の全くない円やかな尾根の下りているのを見出した。なかなか惹かれるものがあり、地図で確認すると、登りつめて稜線をたどればやがて若丹国境尾根に出られることが分かった。 そこで、ここにルートを採ることにして、川を渡って尾根に取り付く。意外に急で最初はジグザグ歩きで登ったが、やがて傾斜が緩やかに変わり歩きやすくなってくる。 明るい二次林にはタムシバの木が多く、満開の花を付けた木があちこちと点在している。遠くから見ればきっと白い山桜かと見紛うことであろう。 タムシバの花はコブシの花と非常に似ているが、コブシが花と同時に葉を付けるのに対し、タムシバは花が終わってから葉を付けるので、花期にはこれで区別するようだ。 緩やかになった尾根を登り続けると今まで無かった笹が現れ、時に腰辺りの高さで密生して行く手を妨げる。奥ノ谷山(標高811.0m)は主稜線からは少し離れているが、せっかくだから寄っていくことにしよう。 山頂へのルートは笹が濃く、意外と時間がかかってしまった。午前9時45分着、山頂からの展望は効かない。しかし、主稜線に戻った辺りの北西側は、杉の植林帯となって視界が開けており、八ケ峰方面がきれいに望まれた。 その後も笹薮が時々現れるが、鹿がよく通るのであろうケモノ道がしっかりとついており、その上道標代わりのテープも頻繁に出てくるので、あまり地図のお世話にならずに済む。 途中、造林地へ鹿が侵入するのを防ぐため網が張り巡らされてあったが、大きく倒れたところがあって「これでは意味が無いなあ」と思っていると、網に絡まったまま死んでいる鹿を見出す。鹿の死体には毎年出会うが、こんな状態で死んでいるのは初めてであり、その上腐敗して半ば骨を剥き出しにした姿は非常に凄惨な光景であった。 やがて笹がすっかり少なくなり、766mの標高点で「京都大学」の境界標を見出し、演習林に入ったことを知る。ただ、このあたりは荒れた植林帯で芦生のイメージからは程遠い。それでも坂谷本流の源流域に入ると、見事な原生林が残されており、今まで平凡だっただけに原生林のすばらしさを再認識する。 ここからわずかで中山谷山(標高791.8m)午前11時20分着、展望はよくない。これを少し下ると若丹国境尾根に出合い、東へ少し行ったタムシバの花の下で昼食とする。青い空を背景に真っ白なタムシバの花は清楚で美しい。 静けさの中でシジュウガラの囀りがあちこちから聞こえ、贅沢なロケーションでの食事となった。昼食後、さらに国境尾根を東へ進むと坂谷側は伐採後の薮となっており、反対の若狭側も植林帯で全く俗っぽい。 こんなところは早く通過しようとどんどん進むと、左側に原生林が現れてきた。待て!芦生は右側だぞ!地図を取出し、芦生側に派生した枝尾根に入ったことを知る。ここは迷いやすそうだ。 国境尾根に戻り権蔵谷の源頭を進むとやがて権蔵坂、12時55分着。木漏れ陽の峠は心地良い風が吹き抜けており、寝不足の体を急に睡魔が襲ってくる。 身を横たえることへの強い誘惑を禁じ得ず、枯葉の上に寝転んで頭上の木立を渡るコガラを眺めていると、やがて心地よい眠りがやって来た。1時間ほど眠ると体はすっかり緩んでしまい、とても国境尾根を進む気にはなれず、ためらいもなく権蔵谷を下ることに決める。 春とはいえ景色は冬枯れのまま、少し下ったところで1名の登山者に出会う。「こんなところで人に出会うとは考えられないことだ。」と思いつつ、それ故なおさら気になって声を掛け、芦生の話に興じて20分ほど話し込んでしまった。 櫃倉谷本流に出合うと、またいろいろな花が咲いている。イワウチワ(この辺りではトクワカソウという変種らしい)、ミヤマカタバミ、サンインシロカネソウ(途中で会った人に教えてもらったが、初めて見る花である)など。 さらに下った中ノツボからの峠では、早くも花を付けたオオイワカガミを数輪見つける(10日ぐらい後が見頃か)。林道に出てからも花を探したり写真を撮ったりしていたので、帰り着いたのは午後5時5分にもなっていた。 こんなにゆっくりした山旅は久しぶりのことである。 |