「芦生の森から・番外編」04.03.14


美濃俣丸山頂

美濃俣丸山頂から三周ケ岳

美濃俣丸山頂から三国岳

美濃俣丸山頂から笹ヶ峰方面

笹ヶ峰への途中から三周ヶ岳

笹ヶ峰への途中から上谷山

笹ヶ峰への途中から美濃俣丸

笹ヶ峰への途中から笹ヶ峰

笹ヶ峰への途中から美濃側

笹ヶ峰への途中から金草岳

笹ヶ峰

笹ヶ峰にて

2004年3月14日・快晴

午前3時半ごろ家を出発したが、一般道路ばかりを通って行った上おまけに道を間違えてしまったので、今庄町の最奥広野ダムサイトに着いたのは午前6時半近くにもなっていた。

ダム湖の奥、鈴谷出合は今新たなダムの工事中である。ここに車を止め身支度をして午前6時45分出発。雪は昨年より少ないようである。

鈴谷林道から新たに付けられた山へ上がっていく林道に入るが、林道からの取り付き点が判らず、同じく美濃俣丸へ登るという数人の後を追う。このところの暖かさのせいか、梢の先端でホオジロが早くも「一筆啓上仕り候」と囀っている。

途中で先行者を追い越してしまったので、やむなくどんどん上へ歩いていくと、前方にべったりと雪のついた急斜面が見えて来た。おそらくこれが正規のルートではないとは思いながらも、地図で見ればこれを登るとかなり時間が短縮できそうだ。

そこでここを登ることにし、林道を離れて砂防ダムの堰堤を渡り、その雪の急斜面に取り付く。気温が低いので雪面がよく締まっており、アイゼンまでは要らないがピッケルを使わないと危険だ。

急斜面を登り終えると緩やかな稜線となっており、後は快適に登れそうである。ここで帰りの下降点を誤らないため、ピッケルで雪面にたくさん穴をあけておいた。

稜線上もよく締まっていて沈むことはなく、夏のような速度で歩くことができる。標高950m辺りで傾斜が急になり、靴でキックしてもあまり雪面に食い込まないのでアイゼンを着ける。アイゼンの爪が硬い雪面によく効き実に快適、これを使うのは久しぶりのことである。

美濃俣丸山頂手前のピークを乗り越し最後の急な登りを越えると標高1253.8mの山頂である。今日は黄砂のせいであろう遠景は霞んでいるが、南は上谷山から三国岳そして三周ケ岳へと続く山並みが、北は笹ケ峰方面に延びる白い稜線が迫り、申し分のない眺めである。

時計を見れば午前9時ちょうど、3時間以上はかかるだろうと思っていたので自分でも驚いてしまった。「これだともしかしたら笹ケ峰まで行けるかもしれない。11時になるまで行けるところまで行こう。」と、軽くパンを食べ、アイゼンを外してすぐに出発する。

一旦下り、それから延々と雪の稜線歩きが始まる。美濃(岐阜県)側にはところどころ雪庇が出来、崩れれば雪崩落ちそうなところもある。幾つか小さいピークを越えた1288mのピークから眺める笹ケ峰方面は、とても1,200〜1,300mの山とは思えない大迫力で迎えてくれる。

積雪量も3mはあるであろう、これがこの迫力の源であり、その山並みを眼前にしながら雪の稜線を歩くことの喜び、正に至上の時、私は思わず歓喜の声を上げてしまった。

その後も何度かアップダウンを繰り返し、笹ケ峰山頂へ到着したのが11時ちょうど、計ったかのように予定ぎりぎりの到着である。山頂から振り返れば、白い稜線の向こうに美濃俣丸の山頂が小さく見え、北を眺めれば金草岳や冠岳などの越美国境の山々と、その向こうに霞む白山前衛の山々を望むことができた。

しかし帰りのことを考えると、ゆっくりはできない、昼食を少し摂って早々に山頂を後にする。雪が次第に緩み少しは沈むようにはなったが、それほど苦にするほどのことはない。

往路に写真を撮ったので帰路は黙々と歩くだけ、途中2名のパーティにすれ違っただけでほとんどたった一人の山旅である。美濃俣丸山頂は北側を巻き、12時35分下山路に合流してそのまま下山する。

その後も登ってきたコースをそのままにたどり、消えかかった我が足跡を見落とさないよう注意しながらどんどん下って行く。やがて下降点の印にあけておいたピッケルの穴を無事見つけ、急斜面を下って林道に戻りついた。

山の上はそれなりに寒かったが、ここまで降りて来るとすっかり暖かく、小さな流れの傍でゆっくりと食事をしながら休憩を摂る。20分も休んだであろう、再び林道をたどり出発地に戻りついたのが午後1時50分であった。雪のほとんど消えた里に下りてくると、先ほどまでの雪の稜線が本当に懐かしく感じる。

「来週も残雪の山に登るぞ。」


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