「芦生の森から」04.02.22


保谷林道

雪の解けた南斜面

江丹国境の芦生側

岩谷峠

古屋方面

三国岳近く

2004年2月22日・晴れのち曇り

数日前から風邪をひき、咳と鼻水に悩まされていたので、この日は本当にどうしようかと迷った。天気予報では昼過ぎから雨となっており、雨に打たれて風邪をこじらせたら大変だなあと思いつつ、気乗りがしないままとにかく出掛けることにする。

ここ数日来異常な暖かさが続き、花折峠を越えてもほとんど雪が残っていない。針畑川に入ると雪も次第に多くなり、川の水量が通常の倍以上もあるところを見ると、おそらく雪解け水で増水しているのであろう。

今日は桑原から三国岳へ登ろうと思っていたが、桑原に到着して地図を忘れたことに気づいた。何たる不覚、やむを得ない。こうなれば何度も登って勝手の分かった古屋から登る以外なさそうだ。

古屋午前7時出発、保谷林道には一週間前と思われるスキーのトレースがあり、輪かんじきを履いてその上をたどればあまり苦労せずに済む。倉ケ谷出合いの簡易水道施設から尾根に取り付き、割合急な登りを上がるのであるが、風邪で弱った体には少々応える。時々休みながらゆっくりと足を進め、江丹国境稜線には午前9時に到着した。

反対側は芦生の原生林、新しい雪がないので一面に枯枝や枯葉、樹皮屑などが散乱しており、まったく春の山そのものである。積雪量はそれでも80cm程度はあり、先月以来結構な降雪があったものと推測できる。稜線を南にたどり岩谷峠から更に南下すると、展望が開けて古屋方面が見渡せるところがあった。

見上げれば雲の流れは速く、上空を強い風が吹いていることを教えてくれる。きっと天気予報どおり午後から急速に天候が悪くなるに違いない。イワウチワがたくさん生えた痩せ気味の急な登りを乗り越えると、広々とした地形が広がる。大谷の三ボケ最源流にあたり、ブナとミズナラの大木が生い立つ緩やかな山頂部分である。この辺りは芦生でも最も積雪量が多いところと思われ、今は1m以上もありそうだ。

三国岳へのコースから離れた西側のピークに登り、そのまま南へ下ると三ボケの流れに出る。ここでスノーブリッジを慎重に渡り、今度は三国岳へダイレクトに上がって行く。ネマガリダケに覆われたこの辺り一帯は完全に雪に覆われ、どこでも楽に歩くことができる。

三国岳山頂10時40分、遠く比良の山並みも見渡すことができるが、その山頂付近は既に雲に覆われ、天候悪化の典型的兆候だ。雨の降り出す前に下山しなければと、小休止しただけで早々に山頂を後にする。下山ルートを考えるが、このまま保谷に下るのはなんとも能がない。ましてやあの雪の林道を再び歩くのかと思うとすっかり気が重くなる。

そこで保谷の南側尾根を針畑川出合付近までたどろうと考えたが、何しろ地図がないうえ未だに通ったこともない未知のルートである。記憶と目の前の地形だけを頼りに目的尾根への下り口を探すが、確信が抱けず何度か行きつ戻りつしながら、やっとそれと思われるところを下ることにした。しばらく下って誤っていないことを確認しひとまず安心。

この尾根は多少アップダウンもあるが、平坦で歩きやすいコースである。尾根上は鹿の獣道になっているようで、足跡や糞がよく目に付く。下るほどに雪の無くなったところが幾度も現れ、また総体的に積雪量も減ってきたので輪かんじきを外すことにし、ついでに昼食を摂る。暖かくて休んでいても寒くならないが、反面雪が緩んでザクザクになり登山靴の中まで濡れてしまった。

眼下に古屋の家が見え急な下りを一気に降りると、針畑川出合に懸かる橋の所、まったく予定通りの場所だ。林道をわずか歩いて車に戻りついたのは午後1時05分。雨はまだ降り出してはいないが、雪解け水で針畑川の流れはさらに増水して半ば濁流化していた。山中すっかり忘れていたが、喉の痛みも鼻水も治まり、気がつけば風邪は治ってしまっているようだ。今日も山に助けてもらった。


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