「芦生の森から」04.01.11〜12


野田畑谷

ツルアジサイ

オオイワカガミ

シンコボ

イグルーの作り方・図解その1

イグルーの作り方・図解その2

杉尾峠

杉尾峠から

モンドリ谷

ウサギの足跡

野田畑湿原

2004年1月11日・曇り時々雪

「今日は泊まりだ。」と午前9時にようやく家を出る。花折トンネルを抜けると雪道になっており、ほぼ1年ぶりでタイヤチェーンを着けた。雪道を走り出すと、車体が横を向いてしまった時の記憶が甦り、自然と運転は慎重になる。梅ノ木から針畑川に入り溯るほどに積雪量が目に見えて増え、生杉当りは30cmほどの積雪だ。

生杉集落を抜けるとすぐに除雪がストップしていた。歩く距離が増えるのは辛いが、芦生までのアプローチが長くなると入山者が確実に減るのでこれはあり難い。道路横の駐車スペースに車を止め出発の準備をする。冬の山は準備に手間取るため、歩き始めたのは午前11時にもなっていた。

スキーのトレースが1本あり先行者が一人いるようだ。雪が時々降っているがたいしたことはなく、昨夜からの新雪も10cmほど積もっているだけである。新雪の下はよく締まっていてズボ足でもあまり沈まない。

三国峠登山口でスキーのトレースと別れ、クチクボ峠へ向かう。杉林の中を歩道にとらわれず適当に歩いて行くと、やがて急な登りがありこれを越えると峠は近い。この急な登りは積雪量が増えると通過が困難になりそうだ。クチクボ峠に出ると若狭からの風が強く体に当る。峠12時00分着。

三国峠への国境稜線は風で雪が飛ばされ歩きやすいが、時々風雪が強まると本当の冬山のような厳しさを感じる。途中傾斜がゆるくなったところで輪かんじきを着け、三国峠12時30分着。

15kgほどの荷だが、ここまでは空荷のごとく快調にやってくることができた。ここから国境尾根をさらに西へ忠実にたどる。ピークを数個越えると野田畑峠、13時50分着。野田畑谷に入ると今までの風が嘘のように静まり、ここで泊まろうかと思うほどだ。軽くドーナツで昼食を済ませ、国境稜線を再び西へ向かう。

ここからシンコボ分岐までは尾根が痩せており、雪がつきにくいのかオオイワカガミの赤変した葉が所々雪の上に露出している。風雪に耐えている姿を見ていると、「春まで枯れずにあれ」と願わずにはいられない。

途中、倒木に絡みついていたツルアジサイの皮が見事に剥がされているのに出会った。シカの仕業だと思うが、こんなまずそうなものまで食べなければならない冬の厳しさを教えられる。シンコボ分岐15時ちょうど。

ボツボツ疲労感が出てきたので、シンコボは割愛して先を急ぐ。最初の大きなピークを越えた鞍部、若狭側に平坦地があり、風もないのでここで泊まることにした。

スコップで雪を掘ると積雪は40cmほどしかなく、イグルーは無理かとも思ったが、一応ブロックを切って並べてみることにする。下のほうはよく締まっていて、スコップでブロックが十分切れる。そこでどんどん積み上げていくと、1時間15分ほどで一人用イグルーが完成。1時間半はかかると思っていたが、意外と短い時間でできあがった。

夕食はカレーライス。焼酎のお湯割を少し飲むともうすることがなくなり、やむなく寝袋に入って寝ることにする。

2004年1月12日・晴れ

昨夜は雪の冷たさであまりよく眠れなかった上、ずっと横になっていたので腰が痛い。目覚めると午前6時30分、外はもう明るくなり始めていた。朝食は『力ラーメン』。出発の準備をしてイグルーから出ると7時15分、すっかり明るくなってしまっている。昨日と異なり天気はよさそうだ。国境稜線に戻り杉尾峠を目指す。4つほどピークを越えると杉尾峠、午前8時30分着。

上谷から誰も来ていないのであろう、古い足跡すらも残っていない。今日は若狭湾までは望めないが、視界が大きく開けとても気持ちがよい。峠から稜線を中山方面に向い、林道に飛び出したところを一旦モンドリ谷へ下って再び尾根を登ってケヤキ坂分岐午前10時10分着。

この登りはきつく、すっかり疲れて気力をなくし、ケヤキ坂へ行く予定を取りやめて中山方面へ進むことにした。無雪期であれば踏跡があって迷うことはないが、雪があるとルートを確認するため時々地図を出さなければならない。雲が多かった空も今ではすっかり晴れ渡り、木立越しに遠く近くの山並みが望まれる。

中山との中程、馬乗りになったようなミズナラがあるところから、北へ延びる枝尾根にルートを取り、何度かのアップダウンの後、かなり急な斜面を野田畑湿原目指して一気に下る。あまりに急なので、輪かんじきを着けたままグリセードができそうなほどだ。

湿原に下りると新しいスキーのトレースが1本付いており、今日やってきたらしい。杉尾峠からの道をたどって中山神社12時ちょうど。

暖かくなって雪が融け始め、輪かんじきの下にくっつくと重くて仕方がないので、ここで輪かんじきをはずす。踏跡もありまた雪の量も少ないので、ズボ足でもあまり沈まず苦労するまでもない。

地蔵峠からの林道は長く、ましてや今日は生杉まで歩かねばならない。そこで途中から旧道に下り谷沿いの道を歩くことにする。雪は締まってあまり沈まないが、間伐材が放棄されているところはさすがに歩き辛かった。三国峠登山口の少し下で道路に上がり、午後2時40分出発地に戻り着く。

雲ひとつないほど晴れ、冬とは思えないような暖かい日であった。


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