「芦生の森から」03.08.24.


ツチアケビの実

オオウラジロノキの実

エゾゼミ

去年熊に出会った尾根

植橋谷出合で水浴び

植橋谷の滝

鉱泉の湧出

ホトトギス

最後の滝

最後の滝の上

ナツエビネ

洞の中にいたガマガエル

タムシバの実

2003年8月24日 晴れのち曇り

広河原のワサ谷林道から小野村割岳へ入ろうとしたが、入口にゲートがあって入れず、次案の能見川フカンド谷林道に入ったが、ここは道の両側だけでなく真ん中までもススキに覆われ、断念して途中から引き返す。

そこでどこから演習林に入るか大いに迷った挙句、久多川支流の長治谷から入る事にした。この谷には林道が敷設されておりゲートもないが、三国岳方面からの下山を考え、入口付近に車を止めることにする。午前8時50分随分時間が経ってしまった。

林道を歩き始めてすぐ、路傍に赤い異形をしたものに出会う。ツチアケビの実だ。葉緑素をもたずにキノコのナラタケと共生するラン科の植物である。これで2度目の出会いであるから、きっとなかなかお目にかかれないのであろう。

林道を行くこと30分、谷が大きく5つに分岐し林道はここで終わる。これまでずっと植林された杉林の中であったが、見上げるとこれから先も杉の植林地帯になっているようだ。あまり期待は持てないが、とにかく渓流足袋に履き替え、稜線に一番近い真ん中の谷に入る事にしよう。

予想は的中、滝もない人工林の中の殺伐とした流れが涸れるまでずっと続いていたのであった。フカンド山から久多峠へ続く稜線に出ると、ケモノ道が付いていて赤いテープも残されている。演習林のほうへ少し向かうと、フカンド谷から登ってくる刈分け道が合流し、これが927mの独立標高点まで続いていた。

城丹国境尾根に10時20分着、朝食抜きなので空腹を覚え、少し早いが1回目の昼食にする。いつもの野菜カレー。しかし今日のご飯は冷蔵庫に入れてあったものをそのまま持ってきたのでまだ冷たく、その上ポロポロとくれば美味しいはずがない。それ以外の食料は車に忘れて来てしまい、このポロポロカレーしか食べるものはないから仕方がないが我慢しよう。

下のほうではミンミンゼミが鳴いていたが、この辺りはもっぱら「ギーーー」と、木が軋むような抑揚のない声しか聞こえてこない。おそらくエゾゼミであろう。

食事を済ませて国境尾根を天狗峠方面に30分ほど北上(この辺りは広い緩やかな尾根となっており、ミズナラを主にした下草のない原生林の中に上に、はっきりした歩道が残っていて、長い城丹国境尾根の中でも最も心地よい所である。)、昨年熊に出会った尾根に入っていく。1年経てば記憶も薄れて、あまり恐ろしいという思いはないが、それでも何かしら気持ちが良くないので、2度ほど「オーイ」と軽く叫んでみた。

この尾根は、最初は広く緩やかでなかなか雰囲気のいいところであるが、急に傾斜を強めてカヅラ谷に向かって落ちていく。どこが尾根だか分からないような広い急斜面が続き、地図と磁石で確認しながら下ったつもりであったが、どういう訳か大分左(カヅラ谷の上流側)へそれてしまった。

しかしそれが幸いして、谷に降り着く手前で作業道の跡に出会い、難なく河原へ降り立つことができた。その先は植橋谷出合までカヅラ谷に切れ落ちており、誤らずに降りてくると最後に苦労する(細引〔細いザイル〕を忘れてきたので)ところであった。怪我の功名(大層な言い方だが)とでも言うべきか。

10分ほど下ると植橋谷出合、午前11時55分、ここで水浴びをする。ずっと歩き続けてきて熱くなった体には、冷たいほどのこの水がかえって心地よい。

植橋谷に入ると、すぐに滝が現れ、2m〜5m程度の滝が15個ほど連続する。どの滝も簡単に登れ、そのいくつかはシャワークライムも楽しむ事ができる。今日は水が適度に冷たく、とても楽しい時を過すことができた。

最後の滝(これがこの谷で一番大きい)を越えると流れは穏やかになり、サワグルミとトチノキが生い立つ広い谷底へと変わる。水の絶えるまで谷を詰め、最後に急斜面を一登りすれば城丹国境尾根、天狗峠分岐まではさらに10分ほど、午後1時30分着。

昨日子供と由良川本流の川下りをした疲れが出て、天狗峠へは寄らずに2度目の昼食にする事にした。ご飯はもう冷たくはないが、ポロポロなのはそのままでやはり美味しくはない(一度暖めて持ってくれば良かったなあ)。

この辺りには杉の大木が多く、その1本の傍らで食事をしていたのであるが、その木には洞があり、中がどうなっているのかと覗いて思わずのけぞってしまった。と言うのも、樹の主でもあるかのような顔をして、ガマガエルがじっとうずくまってこちらを見ていたのである。ガマガエルには幾度も出会うが(先ほども)、こんなところで見るのは初めてであった。

食事を済ませ、城丹国境尾根を東へ、三国岳との中間にある京都府立大学演習林の境界尾根を下る。途中から岩屋谷・滝谷出合目掛けてダイレクトに下りようとしたのであったが、これも失敗してずい分岩屋谷側へそれてしまった。まだまだ修行が足りないようである。

出合いから15分ほど車道を歩くと出発地、午後4時着。ここで最後の水浴び。上流の砂防ダムのせいであろうが、カヅラ谷の清流と違って水は泥臭く、あの清冽な流れが恋しく思われた。


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