「芦生の森から」03.07.13.


オニノヤガラ

クヌギタケ

カツラの葉(手前が古い葉で奥が新しい葉。新しい葉は撥水成分があり、水玉が葉の上に転がるが、古い葉にはそれが見られない)

ノワガラミ

マスタケ(一文字違いでこんなに違う)

バイケイソウ

タケリタケ

山師の掘った穴?

2003年7月13日 雨

仕事の疲れが残って、なかなか寝床を離れられずにいた。

小雨が降っている。北へ向う程に雨は止み、空は明るくなってきた。もしかしたらという期待を胸にハンドルを取るが、出発が遅いと車も増えて到着も更に遅くなる。生杉の三国岳登山口を少し過ぎたところに車を止めて出発となったのは、10時40分であった

。生杉を流れる針畑川の上流、トイワ谷へ下る林道に入るが、しばらく行くとこの道は終わり、その後は地蔵峠へ向う旧道にルートを求める。しかしこの道は歩く者が僅かなのであろう、かすかにそれと判る程度。それも時々崩れており、流れの中にルートをとる事も頻繁で、とても一般的ではない。最近購入したハイキング地図にも、一般ルートとして紹介されているのは少し問題ではないかと思われる。

歩き始めは止んでいた雨が再び降り出し、カッパを身に着けることにする。しかし今日は気温があまり高くはなく、蒸し暑く感じないからあり難い。

ふと見ると、目の前にニョッキリと立つ高さ70cmほどの奇妙な花。帰って調べると「オニノヤガラ」という無葉ランとのことで、キノコのナラタケと共生しているらしい。初めて見る花であり、先月見たショウキランと同じく葉が無いから、花の季節でないとその存在を知る事ができない面白い植物である。

地上に一時期でも現れるから人間に名を付けられたのであろうが、きっと地下には全く知られていない生物が無数に存在する事であろう。そしてそれらの生物が相互に、または地上の生物と深く関係しあって、安定した自然を維持しているに違いない。数億年前から今日までの生命間における葛藤の結果到達した、究極の姿である(はずなのだが・・・)。この究極の世界に人間が学ぶべき事はあまりにも多すぎる。だが現代人はこれを真摯に学ぼうとしているだろうか?

オオルリの澄み切った囀りが渓間に響き渡る中を、急な登りを最後に地蔵峠にたどり着く。午前11時40分、ここまで約1時間、林道を歩くのと時間的にはあまり変わらなかった。それなら旧道を歩くほうがはるかに楽しく、これからはこのルートにしよう。

峠を越え芦生側へ入ってすぐ3名のハイカーに出会う。アカショウビンという野鳥に会いに来たそうであるが、雨の中物好きであるとしか言いようがない〈私も同類だが〉。

今日は地蔵峠から林道を進み、中山の手前から支線の「林道由良川線」に入っていく。ここ何年も車が通っていないのではないかとさえ思えるほどで、一面コケに覆われているところさえある。30分ほどで林道の終点となり、それから先には歩道すら付いていない。とにかく昼食にしよう。

これから先をどうするかと思案したが、一応稜線まで登る事にして午後1時15分出発。この辺りは一度切られたことがあるらしく、大きな木は残っていない。15分ほどで江丹国境尾根に登りつき、これを少し東へたどったところをホウ谷めがけて下りて行く。

この谷にも既に斧が入っており、何の変哲もない平凡な谷である。流れが大きくなったところで渓流足袋に履き替える。最近の雨で水は冷たい。由良川本流に出合うと、水量はいつもの3倍ぐらいはあるだろう、普段は簡単に越えられる淵も容易にはいかない。

足元に白いかたまりの花がポタポタ落ちているのに出会った。見上げるとナツツバキである。まだいくつも白い花を残していて、サルスベリに似た美しい樹皮と共にとても品のある樹だ。

夕方ではないのに辺りが少し暗くなってきたように感じ、大雨にあったら大変だとそろそろ戻る事にした。さてその戻り方であるが、長治谷作業場からずっと林道を歩くのはあまりにも能がない。いろいろ思案した結果、再び江丹国境尾根に這い上がり反対側に下る事にする。ホウ谷とスケン谷とのほぼ中間、由良川が大きく屈曲する地点から尾根に取り付く。

14時30分、最初はかなり急であったが次第に緩やかになり、最後は幾度かのアップダウンを経て、およそ40分で国境尾根に出る。これを少し西へ進み、先ほどホウ谷へ下った地点辺りから、反対の生杉側へ急な尾根を下っていく。この尾根は最後まで急であり、谷に下りつく少し手前で、奥行き4mほどの穴を見つけた。

かって山師が試掘したものであろう、このあたりであればマンガン鉱か?今の「山師」の語源となってはいるが、本来の山師はそれなりにたいへんであったに違いない。こんな山奥で、当たるか当たらないか分からないのに、こんな大きな穴を掘るのであるから。

やがて谷に下りつき、朝方の林道を引き返して午後4時ちょうど出発地へ戻りついた。帰路激しい雨に出会い、濁流と変わってしまった川を眺めて、早く下りて来てよかったと思った。


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