クマシデの実 ノリウツギ ヤマブキショウマ ブナノキ峠から テングタケの仲間 由良川を下る 大谷出合付近 サワグルミの実 ウバユリ 岩に張り付くサツキ カワリハツ |
2002年7月28日 晴れ 夜中に目を覚ますとその後眠れなくなり、午前1時過ぎに出掛ける。須後着午前3時、駐車場に車を止め、仮眠を摂る。 ヒグラシの声に起こされ、身支度をし、午前5時30分出発とする。半袖のTシャツでは少し肌寒い。足元は地下足袋、しばらく雨が降っていないから長靴まではいるまい。 櫃倉谷の林道を30分ほど歩き、櫃倉谷本谷と別れて内杉谷林道へ入ると、一抱え以上もあるメタセコイヤの樹が並んでいる。おそらく演習林の歴史と共にここに在るのであろう、日本では最大級の樹に違いない。20分ほど進むと林道が谷から離れ、山腹をどんどん登っていく。 この季節は花が少ない。沿道で一番たくさん出会うのはノリウツギの白い花、北海道では「サビタ」と言う。きっとアイヌ語であろうがこちらの方が響きよく好きである。その他は、道沿いの湿ったところにクサアジサイとヤマブキショウマが転々と咲いているぐらい。 道の両側は二次林のように見えるが、杉の天然更新のために広葉樹を刈り払った後の放置林のようだ。近くの梢で姿を見せて囀るのはカラの仲間(ヒガラとエナガは確認できた)。木のてっぺんでひときわ甲高く囀っているのはホオジロ、「一筆啓上仕り候」と聞きなしているらしいが、本当にそのように聞こえるから可笑しい。 展望が利き遠くまで眺められるようになると、間もなく峠にたどり着く。午前7時15分。峠の向こうは下谷、下れば中山を経て地蔵峠へ続いている。また杉尾峠方面と、七瀬谷源流方面への林道がここから分岐する。この峠から傘峠へ向かう歩道が始まるので、そちらへ入ることにした。 しばらく行くとブナノキ峠への歩道が分岐する。峠といっても標高939.1mの頂上で往復20分ほど、山頂からの展望はほとんど得られない。戻って傘峠へ向かう。 尾根の南側(由良川本流側)は原生林となっているが、北側は人の手がいろんな形で入っている。杉だけ残してあとは伐採された所(天然更新の作業完了地)では、林道が錯綜し、ここが芦生のど真ん中とはとても思えない。ここでコースを少し見失った。 再びコースに戻り樹林帯の中を幾度か起伏を越えると傘峠の頂上に着く。午前8時20分。標識がなければ通り過ぎてしまいそうなピークで、展望は全く利かない。ここで初めての休憩を摂り、軽く食事もする。樹林の中は雨が降らずともこの季節になるとキノコが生えている。夏のキノコであるテングタケの仲間やベニタケの仲間である。 山頂を東へさらに進むと、今年二月にやってきた小さなピークに出る。そのときは雪で覆われ見えなかったが、杉の大木の下に「保存木」と表示されていた。ここから歩道と別れ、岩谷出合へ下る尾根に入っていくことにする。途中2箇所注意しないといけない分岐点があるほか、藪も少なくところどころ青い布ギレも付けられていて困難はない。 由良川の流れが見えてくると間もなく由良川沿いの歩道、それからすぐに岩谷出合いの由良川に下りついた。午前9時20分。ここで川下りの身支度をする。Tシャツからサーフィン用スーツへ、地下足袋から渓流足袋へ、そしてザックの中身を二重のゴミ袋に包みいよいよ由良川下りの始まりである。 水は意外と冷たい(昨日行った鈴鹿の神崎川は、水温がいつもより高かったようなので、由良川はもっと温かいだろうと考えていた)。 一人であれば早いものだ。淵を泳ぎ、岩を伝って流れを下ればいつの間にかツボ谷出合の一の滝へ出てきてしまった。ここで今日始めて人に出会う。数人の川下りの人達である。しばらく話をし、彼らを追い越してさらに川を下る。 しばらくは単調となるが、大谷出合の前後は谷幅が狭まり大きな淵を連ねていて楽しい。里山クラブの吉岡さんに奨められて今回ゴーグルを持ってきたが、これは大正解。使って泳げば分かるこの楽しさ。 川沿いに見る花も今は少ない。ピンクのシモツケ、巨大なゆり・ウバユリ、岸壁に張り付くサツキ(これは庭や公園で見るのと違い実に上品だ)ぐらいだ。渓流沿いに見かける鳥は暗褐色のカワガラス。この鳥はあまり人を怖がらないのか、かなり近くで見ることができる。 しかし色も色だが声も声(ジョリジョリというような濁った声)のあまりさえない鳥だ。視界を青い物が横切ったので、その後を追うと、カワセミである。本当に鮮やかな色をしている。見るチャンスがなく今回で2度目、少し感激した。 再び川幅が広がると、間もなく七瀬谷出合に着く。午後0時20分。空腹を感じ、食事を摂っていると眠気が襲ってくる。陽の当たる砂地で寝転ぶと、瞬く間に眠りに落ち込んだ。本当に眠いときは少し眠ると「すっと」するものだが、この時もそうだ。わずか15分ほどでスッキリした。 目が醒めたところで再び出発。この辺りまで下ってくると水温もいくらか上がってくるのか、もう冷たくは感じなくなっている。七瀬からカヅラ谷出合までの間には淀みが連続しその度に泳いでいるとすっかり疲れてしまった。そこでカヅラ谷から陸にいったん上がり、軌道跡の歩道を歩くことにした。 しかし石や岩の上を歩き続けてきたので足の裏が痛く、また再び暑さを感じてきたので水の中が恋しくなってくる。眼下の流れを目で追いながら「ここは深そうな淵だ」「この淵は長くて泳ぎ甲斐がありそうだ」などと次回を想定しながら歩いているといつしか赤崎谷出合まで来てしまった。時計を見ると午後2時10分。これなら川を歩いても大丈夫と再び由良川の流れに足を浸す。「やっぱり水の中は気持ちがいい。」 しかしここまで下ってくると淀みは少なく、従って泳げるところも少なくなる。だから腰ぐらいの深さがあれば贅沢は言わない、喜んで流れに身を浮かべる。灰野まで来るともう終わりは近い。「ついでだから最後まで川を歩こう。」井栗邸の裏を過ぎれば演習林事務所はすぐそこ。由良川にかかる鉄橋のところで上陸、駐車場に戻りついたのは午後3時05分。 長時間川を歩いて体は水にふやけていたが、心は一夏分の遊びを味わい尽くしたかのように満足感で溢れていた。 追記 「須後から七瀬まで歩道を歩いて帰りは由良川を泳ぎながら下る。」というだけの行程も十分楽しめそう。往きに2時間半帰りはその倍を考えれば十分だろう。夏の芦生のお薦めコース。 |