番外編「上谷山(福井県)」02.3.17.


マンサク(花言葉は神妙)

ミズナラ

熊の足跡か?

スキーで自然林を登る

上谷山

国境尾根の西側に連なる山々

憧れの三国岳

三周ヶ岳

笹ヶ峰

2002年3月17日晴れ

午前4時過ぎに家を出て、福井県今庄町の日野川最奥の集落広野に着いたのは、午前6時過ぎ。身支度を済ませ、スキーをザックに着け出発したのは6時30分であった。昨年より1週間早く来たが、今年の異常ともいえる暖冬で周囲にはほとんど雪は見当たらない。寺院の裏から集合アンテナへ続く道を登る。

昨年は下からずっと雪に覆われていたものが、今年は雪のかけらも残っていない。そのためこの道の荒れ方がよく分かる。後に聞けば、今はケーブルテレビがあるからアンテナは不要となり、そのアンテナまでの道を手入れする者はおろか、通る人もいなくなったそうである。

スギの植林帯を強引に登ると雑木林となり、道らしいものが現れてくる。またその頃から残雪も現れだし登るほどにその量も増えてくる。2箇所あるアンテナの1本目を通過したあたりで、先行する7〜8名ほどの中高年パーティーを追い越す。この季節にこんな団体が登るとはこの山もかなり有名なのかもしれない。

この辺り注意すると、雪の中から飛び出した木の枝に、黄色いゴミのような花が着いているのを見付けることが出来る。マンサク(この辺りではマルバマンサク)の花である。「まず咲く」が語源とも言われ、雪に埋もれた中から咲き出したその姿は、正に感動的だ。

2本目のアンテナ(標高650m程)まで登って来ると、さすがに雪も一面に残り、積雪量も1m程はある。ここでスキーをザックから下ろしてシールを着けて歩くことにする。ミズナラを主にした自然林の中を緩やかに登っていくと、幾羽ものシジュウガラが騒がしいほど高らかに鳴き交わす声が聞こてくる。すぐ近くに姿も現わすので、まるでついて来るのかと思うほどである。もうすぐ恋の季節なのだ。

樹の種類が変わり、ブナの純林になると急な登りが現れる。これをスキーでジグザグに上がると手倉山(標高1037.1m)に着く。どこが頂上か分からないようなだだっ広いところだが、ここで初めて目的の上谷山が見えてくる。

そして東を見れば三国岳から笹ヶ峰に続く奥美濃の連山が屏風のように聳え立っている。美しい、なんと美しく神々しい山々か。前にも増して憧れを強めてしまった。小さな丘のような膨らみを越え、細くなった稜線をたどるとやがて福井と滋賀の県境尾根(江越国境尾根と言った方が響きがいい)に出てくる。

ここでスキーのシールを外し、山頂とのコルまで滑り降りた。コルから頂上への登りは急なためスキーを担いで上がることにする。上谷山山頂10時40分。標高1196.7m、高さこそないが、その展望たるや申し分ない。

国境尾根を西に目を向ければ、白い台地のように緩やかに波打ちながら遥か彼方まで続いている山々。東側に目を転ずれば三国岳が大きく目の前に横たわっている。昨年と同じ眺めだ。

ああ三国岳!昨年ここで初めて出会い、来年は登るぞと決意したが、願い叶わず今年も眺めるだけに終わった。それから北へ三周ヶ岳、美濃俣丸、笹ヶ峰。その後ろに能郷白山や部子山も見える。しかし遠くは霞み、白山や琵琶湖は見えない。

展望のいいしかし風の当たらない場所に座り込んで少し早い昼食。ここで泊まれたら、そしてそこに見える峰を伝って行けたらどんなに素晴らしいだろう。いつの日か夢を果たさん。1時間ほど留まり、先程追い越したパーティーがそろそろ登ってきたので、名残惜しいが下山することにする。

靴紐をきつく締め、スキーの金具を固定して、いざ滑降。すぐに始まる急斜面は実に快適、しかしその後は平坦地や登り返しがあって一気に下るというわけにはいかない。それでも手倉山を越えると下りだけとなり、樹林帯の中立ち木を避けながらの滑降は楽しい。

聞きなれない鳥の声に立ち止まり見上げると、樹を下に向かって垂直に下る小鳥が。ゴジュウカラだ。その特技を本で見覚えていたので名が判った。スキーでの滑降も2本目のアンテナまで。そこからは再びザックにスキーを着けて下ることになる。

登りは辛かったが、帰りは早い。寺院の境内まで一気に下り終えた。時に午後1時40分、山頂から約2時間の行程であった。


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